kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



読書

「舟を編む」(三浦しをん):言葉というツールで世間を渡るための辞書は舟である

舟を編む (光文社文庫) 作者:三浦 しをん 光文社 Amazon 三浦しをんの「舟を編む」を読んだ感想を記す。 この小説は、映画やアニメにもなったので知っている人は多いだろう。作者の三浦しをんは、その道のプロの日常をモチーフに小説をよく書いている。「神…

「自分だけの答え」がみつかる 13歳からのアート思考:現代アートとは何かがよく分かる本

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 作者:末永 幸歩 ダイヤモンド社 Amazon 著者の言いたいことは、次の一文に集約されている。 「自分の興味・好奇心・疑問」を皮切りに、「自分のものの見方」で世界を見つめ、好奇心に従って探求を進める…

「ネットカルマ」(佐々木閑):全てを記憶するネットの功罪

ネットカルマ 邪悪なバーチャル世界からの脱出 (角川新書) 作者:佐々木 閑 KADOKAWA Amazon 仏教学者の佐々木閑さんの著書。 仏教の概念であるカルマ(業)とは、人の行動や思考は常に記録されいつかその報いをうけるというもの。自業自得や因果応報などと関…

小説「風が強く吹いている」(三浦しおん)の感想(レビュー):勝利だけでなく目指すものがある

風が強く吹いている (新潮文庫) 作者:しをん, 三浦 新潮社 Amazon 三浦しおんの小説「風が強く吹いている」を読んだ。その感想を書く。 著者の三浦しおんは、一般には知られていない専門家の生活を丁寧に描く作家だ。例えば、植物学の研究者の日常を丹念に描…

漫画「あせとせっけん」:設定が面白い! 絵が素敵!なコミック

漫画の「あせとせっけん」が抜群に面白かった。内容は、下の二人の恋愛物語である。 鼻の利き、匂いをかぎ分けることに秀でている香太郎 汗っかきで、自分の体臭にコンプレックスのある麻子 主人公 香太郎は麻子の体臭をいい匂いだと思うが、麻子はそれが信…

「ラブコメ今昔」(有川浩)の感想:自衛隊員の恋愛は、激甘で時に苦い。

有川浩の「ラブコメ今昔」を読みました。その感想・レビューを記します。 有川浩と言えば、自衛隊への愛が溢れている作家で有名です。「空飛ぶ広報室」「海の底」「空の中」など自衛隊の出てくる小説多数。中でも「クジラの彼」は、自衛隊員を主人公にした恋…

「まほろ駅前狂想曲」(三浦しおん)の感想:自分は幸せになっても良いんだと前向きになった多田を応援したくなる

「まほろ駅前狂想曲」は、三浦しおんによるまほろ駅前シリーズの三作目であり最終作です。ちなみに、第一作の「まほろ駅前多田便利軒」は、直木賞受賞作品。 あらすじ まほろ市は、東京都の南西部に位置し人口30万人の大規模ベットタウン。そこで便利屋を営…

「重力ピエロ」(伊坂幸太郎)の感想:登場人物の性格で紡がれるストーリーが上手い

伊坂幸太郎の小説を10冊ほどまとめて読みました。順次感想を書いていっています。ここでは、「重力ピエロ」の感想を記します。 「重力ピエロ」は2003年に書かれた本で、 第129回直木賞候補、第57回日本推理作家協会賞、2004年版このミステリーがすごい!第3位…

「オーデュボンの祈り」(伊坂幸太郎):何でも知っているカカシは、ハッピーエンドを迎えたか?

伊坂幸太郎の小説を十冊ほどまとめて読みました。順次、感想を書いていっています。ここでは、「オーデュボンの祈り」の感想を記します。 本作は、伊坂幸太郎のデュー作で、これは第5回新潮ミステリークラブ賞を受賞しています。デビュー作だけあって、スト…

「陽気なギャングが地球を回す」(伊坂幸太郎)の感想:ちょっとズレた特殊能力な銀行強盗

伊坂幸太郎の本をまとめて10冊ほど読みました。順次、感想を書いていっています。 ここでは、「陽気なギャングが地球を回す」について感想を書きます。これは、4人の銀行強盗グループ(ギャング)が、トラブルに巻き込まれてそれを解決するまでの物語です。 …

「モダンタイムス」(伊坂幸太郎)の感想:ヤバいヤバい、検索したら襲われる

人は知らないことに出会うと、まず検索する。でも、あるキーワードはヤバい。そのキーワードで検索すると、襲われてします。

「魔王」(伊坂幸太郎)の感想:流されるな、考えろ考えろ。

不思議な力を持つ安藤兄弟。日本をまとめ上げようとする政治家と対決していく。考えろ、考えろと兄は繰り返し、政治家はそれは検索であって思索ではないと言う。

「終末のフール」(伊坂幸太郎)の感想:目的を持った行いは脆い

小惑星が地球に衝突し地球が滅びるまであと3年、異常事態の中の日常を描いた8篇の短編集。重くなりがちなテーマを伊坂幸太郎は軽やかに描く。あと3年と余命が決まったとき何をして時間を過ごせばよいのか?

「バイバイ、ブラックバード」(伊坂幸太郎)の感想:5人の女と付き合う男は、謎の大女と別れを告げるため恋人を巡る

5人の女性と同時に交際する主人公 星野一彦は、別れを告げるため恋人のもとを巡る。「ウソでしょう?」と言う恋人に「あのさ、おまえにも同情はするんだよ」と大女の繭美は返す。星野は<あのバス>に乗ってどこに向かうのか?

「ホワイトラビット」(伊坂幸太郎)の感想:籠城事件を鮮やかに解決するトリックに驚く

兎田孝則の新妻が誘拐された。取り返すため拳銃を握り、立てこもり人質事件を起こす。周囲を警察に包囲され身動きができない。タイムリミットが近づく中で、兎田は新妻を取り返せるか。

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」の感想:帰るべき故郷は大学時代、結末までの語り方が心地よい

伊坂幸太郎の小説を10冊ほどまとめて読みました。ここでは、「ゴールデンスランバー」の感想を書きます。 私にとって小説を何度も読むのが苦ではないのは、その結末に興味が無いから。ゴールデンスランバーは5回読みました。 プロット(あらすじ)は、首相殺…

「ガソリン生活」(伊坂幸太郎)の感想:車同士のおしゃべりが楽しく、車の視点でストーリが進む、人間社会の事件のお話

ガソリン生活 (朝日文庫) 作者:伊坂幸太郎 発売日: 2016/03/07 メディア: 文庫 概説 伊坂幸太郎の小説「ガソリン生活」は、車同士が会話するというファンタジーと、女優の事故死や犯罪集団に巻き込まれる家族の人間社会のサスペンスが融合した小説です。 本…

「死神の精度」(伊坂幸太郎)の感想:サラリーマンのような超越者である死神の会話が楽しい

死神の精度 (文春文庫) 作者:伊坂 幸太郎 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 伊坂幸太郎の小説「死神の精度」は、千葉と名乗るとぼけた死神が人間と関わる六篇の短編からなる。 この小説は、2004年に日本推理作家協会賞を受賞、2006年には本屋大賞第3位…

「まほろ駅前多田便利軒」(三浦しをん)の感想:便利屋には怪しげな人が集まってくる

「まほろ駅前多田便利軒」の感想。便利屋多田啓介と変人行天春彦。二人が厄介ごとに巻き込まれながら、多田啓介の心の鬱屈が明らかになる。

「神去なあなあ日常」(三浦しをん):都会っ子が林業にハマる話

神去なあなあ日常 作者:三浦しをん 発売日: 2014/01/24 メディア: Kindle版 小説「神去なあなあ日常」(三浦しをん)は、例えて言うなら、突然、異世界に放り込まれた少年が、そこで出会った仲間たちに助けられて冒険を繰り広げる物語だ。 この異世界の設定…

「光の帝国」(恩田陸):個々の短編が合わさって大きな物語をつくっている。

光の帝国 常野物語 (集英社文庫) 作者:恩田陸 発売日: 2017/04/28 メディア: Kindle版 膨大な物事を記憶する力、遠くの出来事を見る力、聴く力などの不思議な能力を持った一族を描いた短編集。 この一族は、穏やかで知的で権力志向を持たないという設定であ…

「夜のピクニック」(恩田陸):歩行祭という舞台設定が秀逸な本

小説”蜜蜂と遠雷”(恩田陸)は直木賞をとり映画化もされたことで知られている。私も、”蜜蜂と遠雷”を読んで大変面白く思った。そこで、次に恩田陸の"夜のピクニック"も読んだので、その感想を記します。 ”夜のピクニック”は、吉川英治文学新人賞や本屋大賞をと…

「死」とは何か:米国エール大学の「死」の講義

米国エール大学では「死」についての講義があり、その内容をまとめたものが本書。この本を読んだメモを記します。 最初に、感想をまとめます。人は、普段、死ぬことを忘れて生活しており、死ぬ間際に慌てます。大病をして死を間近に感じた後は人生観が変わる…

繰り返し読みをした「蜜蜂と遠雷」

恩田陸の小説「蜜蜂と遠雷」を読み返しました。読み返すと、1度目には気づかなかった部分が分かって面白い。今回は、1度目には気付かなかった部分を中心に記して行きます。 この小説は、四人のピアニスト(栄伝亜夜、風間塵、高島明石、マサル)を登場人物に…

「君たちはどう生きるか」:流行ったのが信じられない。倫理の本

君たちはどう生きるか (岩波文庫) 作者:吉野 源三郎 発売日: 1982/11/16 メディア: 文庫 「君たちはどう生きるか」 この本は、倫理の本だ。 漫画版が流行ったようで、書店に並ぶ様子をよく見かけた。 まさか倫理の本だとは思ってもみなかった。倫理の本が一…

病牀六尺(正岡子規):さすが、文章が美しい

病牀六尺 (岩波文庫) 作者:正岡 子規 発売日: 1984/07/16 メディア: 文庫 明治時代の俳人 正岡子規は34歳という若さで病死した。その晩年に病の床で書き続けた随筆集が、この病牀六尺。その文章は、悲観な色に染まることなく多様なことが綴られている。 この…

「がんと闘った科学者の記録」(戸塚洋二)の感想

がんと闘った科学者の記録 (文春文庫) 作者:戸塚 洋二 発売日: 2011/06/10 メディア: 文庫 本書の著者は、ノーベル賞を確実取ると思われていた物理学者が最後の11か月のブログから抜粋したもの。ブログだけあって、飾らない生々しい文章です。 この本を読む…

大乗仏教(佐々木閑)

大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか (NHK出版新書) 作者:佐々木 閑 発売日: 2019/01/28 メディア: Kindle版 面白かった。 仏教に関する話は、スピリチュアルなファンタジーな話が多いのだけど、著者の佐々木閑さんは仏学者だけあって学問的な検討結…

平常心のレッスン(小池龍之介):心が乱れる原因を知り、自由になる練習

この本は、ポジティブシンキングを嘘っぽいと思う人に勧めたい本だ。 ポジティブシンキングとは、例えば、、砂漠で迷子になり歩いているとして、持っている水筒には水が半分残っているときに、“「水が半分しか残っていない」と思うのではなく、「水が半分も…

「読まずに死ねない哲学名著50冊」は、流れで哲学を知る本

久しぶりにこの本を読み返した。時間をかけてじっくりと。 この本は、表紙とタイトルで損をしていると思う。見かけの印象以上に良い本だ。 読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書) 作者:平原 卓 発売日: 2016/03/06 メディア: 新書 女子高生風の…