kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



「人を操る禁断の文章術」(DaiGo):相手の頭の中を読み取れ、感情を狙え

 

人を操る禁断の文章術

人を操る禁断の文章術

 

  「人を動かす」という言葉がある。これは正確では無い。そもそも言葉で「人を動かす」ことはできない、「人が動く」のだ。そのためには、相手の気持ちを変え、考えを変え、行動を変える必要がある。

  本書は、そのためのノウハウ本である。相手のどんな気持ちを狙って文章を書くべきか、キーフレーズを文章中のどこに書くべきかを教えている。

 

  重要なポイントをまとめます。

 

相手の頭の中を想像する

  「僕は、頭も良く無いし、運動もできないけど、君が好きだ付き合って欲しい」こんなこと言われたらどう感じるでしょう? レストランで「不味いし、高いけど、食べる?」って聞かれたようにあいては感じます。それなのにこう言ってしまうのは、自分のことしか考えておらず、相手の考え・気持ちを想像できていないからです。

 誰かをデートに誘いたい時、「デートしませんか?」と誘ってはいけません。相手の好みを想像して、もしダイエットに関心があるようなら「低カロリーなのにすごく美味しいイタリア料理店をみつけたんだけど、いかない?」と誘うのが正解です。

 

相手の感情の狙い所

   「人が動く」ために、相手の感情を変えなければいけません。そのため狙うべき感情が7つあります。(1)興味、(2)悩み、(3)損得、(4)認められたい、(5)あなただけ、(6)みんなやっている、(7)本音と建て前

  上のダイエットの例は、(1)の興味を狙ったものです。よく見かける広告「いままで痩せられなかった人もみるみる痩せる」というのは(2)の悩みを狙ったものです。「知らないと損する食べて痩せるダイエット」というのは(3)の損得を狙ったものとなります。「モテモテになれる愛されボディを作ろう」というのは(4)の認められたいです。「あなただけに教えるマル秘ダイエット」は(5)のあなただけ、「まだやってないの?みんなやっているこのダイエット」は(6)のみんなやっている、「いつも頑張っているあなた、たまにあげたい自分へのご褒美」というのは(7)の本音と建前。

  この中で(7)の本音と建て前が、一番大切。というのも、残りのものは他の類似本でも紹介されています。この(7)を紹介している点がさすがです。

  人間誰しも、本音と建前を使い分けています。そのためこれため幅広く使えます。コツは、相手の本音を認めてあげつつ、そうは言っても建て前を刺激することです。そもそもやりたいこと(本音)があり、それをやらない理由(建て前)がある状態って多いものです。遊びに行きたいのにアルバイトで行けない相手に、「アルバイト先ででは頼られる存在だね、すごいね」と建て前を認め、「頑張りすぎるとパンクしちゃうよ、たまには遊びに行ったら?」と建て前を刺激する。別の見方をすると、褒める+提案の形になっており、とても強力な手法です。

 

文章の書き方

  ここも本書独自のノウハウが書かれていました。簡単にまとめると

  1. まず、相手にして欲しいことを、追伸として書く。例えば、「追伸、新しいイタリア料理店をみつけたので、今度行きませんか?」
  2. 相手の感情を狙った文章を本文として書く。例えば、「美味しいものをよくご存知ですよね」など
  3. 文章の出だしの文章を、“明るく”書く。

 

これだけです。相手にやって欲しいことを追伸に書くのがポイントです。

文章というのは文末しか頭に残らないものです。そこで、追伸を最後につけるのです。

 

まとめ

 メンタリストとしてテレビで人を操ったDAIGOが、その人を操る術を記したのが本書です。

 人が自ら動くように、相手の感情を刺激するのがコツ。その狙い所となるポイントが記されている。さすがメンタリストだけあって、本音と建前を狙う、追伸を使うなど独自のノウハウが公開されています。

 

補足

  ハーバード大学卒の芸人パックンの話術の本では、相手を動かすためのコツを、エトス・パトス・ロゴスの3つの視点で解説している。このDAIGOの本は、パトス(つまり感情)について深く掘り下げている。

 

d.hatena.ne.jp

 

 

 

 

 

自主性の乏しさは罪である、自主性を求める社会

p-shirokuma.hatenadiary.com

 

 自主性のあることが尊ばれる風潮があるけれど、自主性がなくても別にいいじゃないかという記事。

 

 ま、本当のところ自主性がなくても別にいいだろうし、どんな性格であっても人に迷惑をかけるわけでもない。実際、女子は自主性がなくても非難されないし、むしろ自主性が無く男性に付き従うことが美徳とされている。

 このように考えると、自主性が必要だとプレッシャーをかけられるのは、男子が主だといえる。

 

 この自主性尊重の風潮はどこからきているのだろうか?

 ここには、二つの側面がある。一つは、会社の組織で求められる性質という側面。二つ目は、女子から求められる性質という側面。

 

(1)会社から求められる側面

 日本だけに限らず欧米先進国では大量生産といった従来型の仕事の仕方が行き詰まっている。アメリカ型の会社では、従業員一人一人に明確に決まった仕事が割り当てられており、その範囲内で仕事をすればよかった。今やそんな働き方は、レストランやスーパーマーケットのようなごく一部の簡単な職業にしか通用しない。

 会社を取り巻く外部環境の変化は速度を増し、あらかじめ決めたジョブディスクリプションは役に立たない。そのため、組織も階層構造をなるべく減らし、フラットな組織にして、リーダーのような役割を固定せず、メンバー一人一人が自律的に動く組織が良い組織と言われ始めている。 

ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

 

 

 また、こういった自律的に動く人間にはモチベーションが大事になる。他人から強制されて動くとき、人は決められたことしかしないため、本人の内なるモチベーション(内発的動機)で動く人間が求められる。そういったこともあって、モチベーションに関する本が流行ったりもしている。 

 

 このように、ビジネス環境が変わってきたため、自主性のある人間が会社では求められるようになっている。適材適所という視点で言えば、自主性のない人に適した椅子がどんどん減っている。

 

(2)女性から求められる側面

 「日本男子」。この言葉には強い意志と使命感を持った男子のイメージがある。もともと日本では男子というのは自主性があるものと決めつけられている。そして何かを成す男子が尊敬されている。

 このステレオタイプの価値観は今でも女子の間に根強く残っている。

 臨機応変に機転が利き、人が思いつかないような事を考えつく、そんな男子をみんな好きだ。のび太よりデキスギ君が女子は好きでしょ?

 

 女子が自主性のある男子が好き。だから、男子は自主性の強弱は、優劣につながるのだ。

 

まとめ

 シロクマさんのブログを読んで、自主性について考えた。

 本来、自主性なんか無くなって誰かに迷惑をかけるわけではないのだが、自主性が求められる理由がちゃんとある。

 一つ目は、ビジネス環境が変わって会社で自主性が強く求められること。二つ目は、女子が自主性を男子に求めること。

 こうやって自主性が求められるのだから、自主性のある男子はエライのだ。

 

 

 

 

 

 

ブロックチェインのPoWはノロマ、コンソーシアム型分散台帳はつまらない

 仮想通貨Bitcoinを支えるブロックチェイン(Block Chain)技術に大いに期待している。ブロックチェイン技術を使えば、知らない者同士が集まって信頼のおけるデータベースを実現できる。これは凄い。

 データベースの用途は広い。様々なアプリケーションが考えられる。仮想通貨の取引を記録したり、メールやTwitterのメッセージを記録したり、ICTアプリケーションのほとんどが記録なしには成り立たない。IOT(Internet of Things)でも様々なセンサーデータが記録される。

 君は、見ず知らずの人間を信用できるだろうか?

 普通は信用できない。そんな信用できないものを寄せ集めて信頼のできるデータベースができるなんて、不思議なことだ。

 仕組みはこうだ。学校の教室を思い浮かべて欲しい。生徒がたくさんいて、みんなが黒板の文字をノートに写している。ノートに写し終えたら、腕立て100回を行い、100回できたら「ハーイ出来ました」と手を上げる。一番にできた人はお小遣いを先生からもらえる。こうやって黒板に書かれた文字が、生徒のノートに記録されていく。

 ブロックチェインではこの腕立て100回をPoW(Proof of Work)と呼ぶ。これが何の意味があるかって? 腕立て100回っていう面倒臭いことをやらされるので、やる気のない生徒、興味本位でいたずらしてやろうって思っている生徒を遠ざけているんだ。

 腕立て100回が一番最初にできた生徒にはお小遣いをあげるので、やる気のある生徒は頑張ってノートに記録を写す作業をする。

 こんな風にブロックチェインは、見知らぬ者同士が集まって信頼のできるデータベースを作っている。技術というよりも、人間的な面倒臭さとお金に対する欲で実現されているんだ。

 技術っぽい説明が好きな人は、ネットにたくさんあるので検索して欲しい。例も貼っておく。でも、実態は人間臭い仕掛けが根底にあることは覚えておいて欲しい。

businessblockchain.org

 

 こんなPoWの欠点は、ずばり処理が遅いこと。いちいち腕立て100回をやっているので、遅いんだ。残念なことに、これを圧倒的に速くする方法は見つかっていない。

 しょうがないので、「見知らぬ者同士が集まって」という部分を妥協しようと考えたのがコンソーシアム型と呼ばれるやつだ。つまり仲良し同士が集まって信頼できるデータベースを作る、っていう作戦。Ethereum(イーサリアム)の使っているHyperledgerという技術が、これを使っている。

 処理速度は速いんだけど、なんだかつまらない技術だと思うんだ。だって、GoogleAmazon, facebookの使っている分散サーバと同じに見えるから。だったら別に新しいアプリケーションを分散台帳で作らなくてもいいんじゃないか? Hadoopみたいな昔の技術でいいんじゃないか?

 知らない者同士が集まって信頼のおけるデータベースを実現できて、処理が高速な技術が欲しい。これがあれば新しいアプリケーションのプラットフォームとして世界をワクワクさせるはずだ。

 

まとめ

 Bitocoinが使うブロックチェインは、知らない者同士が集まって信頼のおけるデータベースを作ることが素晴らしい。でも、処理速度が遅いので、みんなあきらめ始めているように思う。

 もし、処理が高速で、知らない者同士が集まって信頼のできるデータベースを作れれば、ワクワクするようなアプリケーションで世界が変わる筈だ。

 

 

「空の中」:間違いを犯した者は、それを正そうと行動する。その行動自体が間違いだとは知らないで。

 間違ったとき、君はどうするか? 間違っていたことに気づいたとき、君はその過去をどうするか?

 「空の中」は間違った者が、許されようと行動する。その行動が織りなす物語である。

 

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)

 

 

 「空の中」は、有川浩自衛隊三部作の「空」である。

 この中で巨大未知生物の出てくるが、これは話の中心ではない。ストーリ設定の舞台である。この舞台上で出演者は夫々の間違いとその後を生きる。

 

 白川真帆は、自分の間違いを母親に非難され、その許しを得るために巨大未知生物を滅ぼそうとする。母親の非難は母親の間違いであり、許しを過ちを求めること自身にもはや意味がない中で。

「母に言っても意味なんかないわ、喋らないんだもの!私が今までどれだけ謝ったと思っているの!?起こったままで固まって私を許そうとなんかしないのよ!仇を討つ以外どうしろって言うの!?」

「そらぁ、お母さんはよう許さんわ」

宮田は当たり前のように言った。

「お母さんが間違うちゅうがやき。間違うちゅうほうが間違うてないほうを許したりはできんろうがね」

 母に許して欲しかった真帆。真帆がすべきは間違った母を許すことであった。

 

 瞬は、父親を事故で失った。その後しばらくして、小さな未知生物フェイクを拾い育てる。ある日、巨大未知生物が父親の事故の原因であり、それとフェイクは同一種族であることを知る。父親を失った傷の癒えぬ瞬は、間違いと知りつつ八つ当たりでフェイクに仲間を襲うよう命令する。その間違いを正すために瞬は行動する。

「俺、フェイクに仲間を殺せって言ったんだ。佳江を助けろって、助けるために仲間を殺せって。間違っているのわかっててそう言ったんだ。八つ当たりでフェイクに仲間を殺させたんだ。フェイクは俺のために仲間を食べてるんだ。」

「あの人の言うことは間違ってるけど、間違った方でどんどん押し進んだら、一周して正解に着くかもしれないって」

 

 間違いを抱える瞬と真帆はともに行動する。彼らの行動は間違いを正すことはできるのか?

 瞬の祖父的な存在である宮じいは優しく厳しい。

 一度間違えたことを正解にすることはできるのかと聞かれて

 「そらぁ、無理よ」「いっぺん間違うたことは間違うたことよ。それは人間がごまかしても、世の中とか道理とかそういうもんが知っちょらぁ。それが間違いじゃとね。どれだけ上手にごまかしちょっても、後になったら間違うちゅうもんは間違うちゅうと、ちゃんと分ってしまうもんよね。」

 間違えた瞬は救われる道はないのだろうか?

「間違うたことを正しかったことにしようとしたち、いかんわえ。神様じゃないがやき、あったことをなかったことにはできん」「間違うたことは間違うたと認めるしかないがよね。辛うても、ああ、自分は間違うたにゃあと思うわんとしょうがないがよ。」「間違うことをごまかしたらいかんがよね。次は間違われんと思いながら生きていくしかないがよ。」

 

まとめ

 「空の中」は、間違った者が許されようと行動し、それらが織りなす物語である。間違いを正そうとして、間違いを重ねる。宮じいは言う

「ごまかそうとすればするほど後の揺り戻しはひどうなるわね」

彼らの行動は揺り戻しを大きくしていく。

 

 最終章「最後に救われるものは誰か」で、誰が救われるかはお楽しみ。

 

就職面接の場でコミュニケーション能力をアピールするのは、最後の武器

sharescafe.net

 

 就職面接の練習で、学生がコミュニケーション能力の高さをアピールしてくる。それって、面接官への「挑戦状」だと諫めている記事です。

 まぁ、面接の場で「わたし、コミュ力高めなんですぅ」と言われても、今そんなこと言う奴は場をわきまえないコミュ障だ!と面接官は言いたくなるでしょうけどね。コミュ力が高いか低いかはその場で会話している面接官が決めることだから。

 

 さて、「なぜ、学生はコミュニケーション能力を就職面接の場でアピールするのか?」その理由に私は闇を感じます。

 そもそもコミュニケーション能力なんぞ少しあればいいのです。10段階評価で3~6くらいあればいいのです。それ以上のコミュニケーション能力があっても仕事の役には立ちません。

 それなのになぜコミュニケーション能力をアピールするのか?それは、話すべき内容が学生に無いからだと感じます。話す内容があれば、たどたどしくても話せばよいのです。

 

 

 

効率的に仕事をする人に武勇伝なし

 いつも飄々と世の中を渡っていく蒲原喜助*1。彼の言葉

喜助「言ったでしょ”役に立つかもしれない”と思ったんス。だから”備えた”。千の備えで一使えれば上等。可能性のあるものは全て残らず備えておく、それがアタシのやり方です。」
アスキン「…ムチャクチャだな…」
喜助「戦いですよ 負けたら死ぬんス。死なない為に死ぬほど準備することなんてみんなやってる事でしょう」

(漫画Bleach 666話より)
カッコいい。

BLEACH 58 (ジャンプコミックス)

BLEACH 58 (ジャンプコミックス)

 
 あなたの職場にいつも火消に忙しそうな人っていませんか?トラブル対応に駆け回って、問題を解決していく人。あの人は、すごい修羅場をくぐったんだよといった、武勇伝のある人。
 そういう人は働き方の効率が悪い。
 本当に優秀な人は、トラブルを起こしません。未然に防ぐのです。仕事を進めるうえでリスクの予測を行い、リスクを防ぐ手立てを事前に打っています。例えば、作業を人に頼んだら、定期的に進み具合の確認を入れます。人に頼みごとをする際には事前に打診をして心の準備をしてもらいます。
 いわゆるFMEAを行いましょう。

楽して仕事をするためのコツ! WBSを作ろう

 WBS(Work Breakdown Structure)は財産だ。社会人になってWBSを使わずに仕事をする人は、もったいない残念な人だ。
 あなたは、締め切り間際に残業していることが多くはないだろうか? 明日提出の資料にダメ出しされて、終電までパワーポイントと格闘していることはないだろうか? WBSを使えばそういったことはなくなる。
 仕事の90%はルーチンワーク、つまりいつもやっていることの繰り返しだ。10%が新しいやったことのない作業だ。これは、デザイナーや研究職のようなクリエイティブと言われる職種でも同じだ。どんなにクリエイティブな仕事であっても対価(つまりお金)を受け取るからには一定期間内に成果物を出す必要がある。初めての作業が多いとこれができない。つまり、仕事として行うからには、ルーチンワークにしていく必要があるのだ。
 このルーチンワークを効率的に行うツールがWBSだ。仕事の90%はWBSでグッと効率化できる。

WBSは財産

 WBSとは、ソフトウエア開発プロジェクトのプロジェクト管理で使われる手法です。作業を全て洗い出し、作業スケジュールを組みます。詳しくは、以下を見て欲しい。

 
 あまり知られていないことだが、ソフトウエア開発以外でもWBSは非常に役に立つ。WBSでは、タスクの洗い出しとその整理がポイントだ。これは仕事一般にも言えることだ。
 例えば、企画書などの資料作りをするとき、パワーポイントを立ち上げて書き始めるのは非効率だ。まずはタスクの洗い出しから行うのが正解。大きなタスクは、(1)企画書の目的の明確化、(2)資料収集、(3)企画案の検討、(4)清書だ。この中で重たい作業は(3)の企画案の検討であろう。これを分解すると、(3-1)What(何をするのか)の明確化、(3-2)Why(何故するのか)の明確化、(3-3)How(どう実行するのか)の明確化である。また(4)清書を分解すると、(4-1)パワーポイントのテンプレート作成、(4-2)写真・グラフなど素材の準備、(4-3)資料執筆、(4-4)上司の確認、である。
 
 一度作ったWBSは保存しておこう。あなたが同じ部署で仕事を続ける限り、同じ仕事をする可能性は極めて高い。
 今あなたが企画書を作ったのであれば、半年後にはまた別の企画書を作るだろう。そのとき、保存しておいたWBSを参考にするといい。タスクの具体的な内容は異なっていても、WBSというタスクの構造は同じである筈だ。前回は詳細化の不十分だった部分が、今回はもっと詳細化できるだろう。前回は作業時間を読み間違えた部分を、今回は正確に予想できるだろう。そうして前回よりも質の高いWBSを今回は作ることができる。
 こうしてWBSの質が上がると、作業の効率は劇的に上がる。個々の細かい作業での失敗や、後戻りがなくなるためだ。

WBSの書き方

 WBSを作るときは、(1)タスクの洗い出しと、(2)スケジュールの作成を、分けて行うのがコツだ。ガンツチャートをいきなり書き始める人がいるが、それは効率が悪い。
 タスクの洗い出しには、マインドマップを使うのがお勧め。使用するツールは、XMindなどフリーソフトがたくさんあるのでお好みのものを使うと良い。私は、WORDのアウトラインモードで済ますことも多い。
 タスクの洗い出しのコツは、二つの視点を意識することだ。一つ目は、トップダウン vs ボトムアップの視点。二つ目は、成果物 vs 作業手順(プロセス)の視点だ。
 抜けモレなくタスクを洗い出すために、タスクの粒度・グルーピングを意識して木構造に整理するのがコツだ。その際にトップダウンボトムアップの両方の視点でタスクを洗い出す。
 まずは思いつくままにタスクを列挙する。タスクの粒度は気にせず、大きいタスクも小さいタスクも気にせずまず列挙する。これを大きなタスク(企画案の検討、清書など)と、小さなタスク(Whatの明確化、Whyの明確化、Howの明確化など)に分ける。そしてこれらの依存関係を木構造に整理する。さらに、大きなタスクを眺めて他の大きなタスクが抜けていないか確認する。次に、大きなタスクを小さなタスクに分解する(トップダウン)。今度は、小さなタスクをグルーピングして上位のグループにまとめていき、大きなタスクを作っていく(ボトムアップ)。このようにトップダウンボトムアップを繰り返すことでタスクの抜けモレを防ぐことができる。
 WBSあるあるだが、タスクの木構造を作るときに上手く整理できないときがある。それは、成果物と手順が混在してしまうためだ。「○○を作る」などの成果物の視点でタスクを洗い出しているときと、「○○を上司に確認してもらう」・「○○の発注を行う」などの一つの成果物を作るための手順が混在するのだ。一つの成果物は、それを構成する複数の副成果物と、成果物を完成させるための複数の手順から成る。副成果物が多い場合には成果物の観点で分解したくなるし、手順が複雑な成果物の場合は手順の観点で分解したくなる。これらが混在することもあると割り切るようにしている。成果物Aは副成果物の視点で分解し、成果物Bは手順の視点で分解することを許容している。ただし、どちらの視点で分解しているかは明確にしておく。視点を明確にすることで、それらが混在しても混乱することを防ぐことができる。
 作ったタスクの木構造は、必ず保存しておく。WBSは宝だ、その価値の全てはタスクの木構造にある。来年同じような仕事をするときに見返すのは、このタスクの木構造である。
 
 次に、洗い出したタスクをもとにスケジュールを作成する。このとき大切なのは見栄えである。見づらいスケジュール表は確認に手間がかかる。一目見ただけで直感的に分かるように書こう。使用するツールはエクセルがお勧め、良いテンプレートがあるので以下を参考にしてほしい。

WBSのコツ

 WBSを作るのは実は難しい。タスクの洗い出しには抜けモレは出てくるのが普通だし、木構造も整理されていない部分が残るものだ。初めてWBSを作る場合には、完璧なものを作ることをあきらめるのがコツだ。
 どうせまた似たような仕事をするのだから、WBSを使い回すときに改善していけば良い。一回で完璧なWBSを作るのではなく、使い回すうちに完成度を高めていくのだ。
 また、WBSはタスク洗い出しとスケジュール作成に分かれるが、タスクの洗い出しに時間をかけるのがコツだ。スケジュール見積もりに時間をかける効果は低い。スケジュールはどうせ外部要因でズレていく、再利用性も低い。

まとめ

 どんな仕事であってもWBSを作ることで、劇的に効率アップする。
 一度作ったWBSは財産である。仕事というのは90%のルーチンワークと10%の創造的な作業でてきている。WBSで90%のルーチンワークを楽々とこなすことができるのだ。

  • WBSを作る際の、タスクの木構造は宝、必ず保存しよう
  • いきなり完璧なWBSを目指さない、WBSを使いまわしながら完成度を高めていこう

スケジュール表(工程表)を書くなら、このソフト

 スケジュール表を書く良いソフトをみつけた。

スケジュール表を書くメリット

 二人以上で仕事をするときや、一人であっても初めての仕事をするときは、スケジュール表(工程表)を書くようにしている。スケジュール表を書くご利益は3つある。

  • スケジュール表を書く過程でタスクの分解(いわゆるWBS:Work Breakdown Structure)を行うため、今後の作業の見通しがつく(イメージトレーニングをするのに似ている)。
  • 仕事を始めた後、スケジュールよりも早く仕事が進んでいれば、定時に家に帰ることができる。
  • 複数人で作業していて他の誰かが困っているときに、その人を手伝うべきか自分の仕事を先に進めるべきか分かる(困っている人の作業が全体のボトルネックでなければ、手伝わなくても構わない)。

おすすめのスケジュール表ソフト

 これまでは「開発マイルストン」というエクセルベースのソフトを使っていた。このソフトはとても高機能で本格的。マイクロソフトProjectを思い浮かべてもらえばいい。大きな仕事をするときにはとても重宝している。
 一方、小さな仕事のときはもっとシンプルなソフトでスケジュール表を書きたいと思っていた。久しぶりにネットを検索したら、マイクロソフトのOfficeスタイルカタログのエクセルテンプレート「プロジェクトスケジュール」をみつけた。これが丁度良い感じのシンプルさだ。

プロジェクトスケジュールの使い方:応用編

 このプロジェクトスケジュールの基本的な使い方は、次の動画を見て欲しい。

 
 応用編として、(1)休日の追加の方法、(2)期間の延長の方法を記しておく。

休日の追加

 プロジェクトスケジュールを開くと「プロジェクト名」という名前のシートが一枚だけある。実は「祝日」という隠しシートがあり、これに記述を追加することで休日を追加することができる。土日以外に会社固有の休みがあるときに便利だ。
 隠しシートの開き方は、ホームタブ>セル>書式>非表示・再表示>シートの再表示だ。詳しくは、マイクロソフトのサポートページ「ワークシートまたはブックの表示と非表示を切り替える」を見て欲しい。

期間の延長

 プロジェクトスケジュールでは3か月以上のスケジュールを描けない。しかし、期間3か月で描いたスケジュールを、別のシートにコピペし、列を選択した後フィルハンドルで伸ばしていけばいくらでも期間を延長できる。
 プロジェクトスケジュールでは休日を灰色に塗ってくれるのだが、フィルハンドルで伸ばした部分はうまく塗ってくれない。これは、条件付き書式の設定がずれるためだ。条件付き書式>ルールの管理>ルールの編集 で適切に設定すれば完璧。

まとめ

 マイクロソフトのOfficeスタイルカタログのエクセルテンプレート「プロジェクトスケジュール」がシンプルで使い勝手が良い。
 新たに休日を追加したり、期間を延ばすことも簡単。


 

高学歴芸人 オリラジあっちゃんのトークを、ハーバード流に分析してみた

 3月19日のTV番組アメトークは「勉強大好き芸人」。出演は、高学歴芸人あっちゃん(中田敦彦:慶応大学卒、オリエンタルラジオ)。

昔話 桃太郎の感想文がすごい

 昔話 桃太郎を使った感想文の書き方が絶妙。以下はあっちゃんの感想文。まずはじっくり読んで欲しい。

この世界には2種類の人間しかいない。
空気の読める人間と、読めない人間だ。
 
そして時として、空気の読めない人間が想像もつかない成功を収めることがある。
 
桃太郎は犬、猿、キジを仲間にした。
空気を読まない大胆な選択だ。
 
なぜ、動物と行くのか。
きっと、村の人からは理解されず馬鹿にされたと思う。
 
ところが、彼らは最高のチームになり、
鬼を退治し、財宝を村に持ち帰った。
 
私はこの本を読んで、仲間を集めた。
周囲に人からは笑われた。
なぜ、ダンサーを仲間にするのか。
なぜ、ネタ番組で歌うのか。
 
しかしついに我々は鬼ヶ島にたどり着いたのだ。
そう、紅白歌合戦である。
 
そのステージに立った時、まぶしいライトの向こうに彼の姿が見えた気がした。
桃太郎という名のパーフェクトヒューマンの姿が。

 上手い! 最高に上手い!

ハーバード流テクニックであっちゃんの文章を分析

 この感想文がどうしてこんなに面白いのか。知りたいと思いませんか?
 そこで、この文章で使われているテクニックを、ハーバード大学卒業のパックンの本
ツカむ! 話術 (角川oneテーマ21)」で紹介されているテクニックをもとに分析しよう。

題材選びに見るコモンプレイス活用

 アメトークというTV番組において、あっちゃんが話している相手はもちろんTV視聴者である。不特定多数の視聴者から共感を得るため、誰でも知っているお話である桃太郎を使うというテクニック”コモンプレイス”が使われている。
 視聴者が共通して認識している話を題材にしたことで、面白い話に仕上がっている。

ロゴスのテクニック 簡潔に言い切る

 「この世界には2種類の人間しかいない。」、「桃太郎は犬、猿、キジを仲間にした。」、「彼らは最高のチームになり」など、全てを簡潔に言い切っている。簡潔に言い切ることで、インパクトを出すロゴスのテクニックが使われている。

ロゴスのテクニック 反復を使う

 「理解されず」・「馬鹿にされた」、「なぜ、動物と行くのか」・「なぜ、ダンサーを仲間にするのか」・「なぜ、ネタ番組で歌うのか」など、似た言葉を繰り返している。反復を使うことで文章にリズムが生まれ、インパクトを生んでいる。

ロゴスのテクニック 常識、固定観念をひっくり返す

 「なぜ、動物と行くのか」では、昔話 桃太郎では犬・猿・キジが擬人化されているという常識をひっくり返している。また、「彼らは最高のチームになり」など、昔話では暗黙に使われない”チーム”という言葉を敢えて使うことで、固定観念をひっくり返している。これにより面白さが増している。

ロゴスのテクニック 対比を使う

 桃太郎とあっちゃん自身を対比させてストーリを作っている。桃太郎が成功したことと、あっちゃんが紅白歌合戦に出たという成功が対比され、面白さを出している。

ロゴスのテクニック 比喩を使う

 「しかしついに我々は鬼ヶ島にたどり着いたのだ。そう、紅白歌合戦である。」は、鬼ヶ島を紅白歌合戦の比喩として使っている。物語の山場であることを、鬼ヶ島と表現することで、強いイメージを聞き手に伝えている。

ロゴスのテクニック ダジャレを使う

 「桃太郎という名のパーフェクトヒューマンの姿が」は、ヒーロ桃太郎を完璧だという意味と、あっちゃんの歌「パーフェクトヒューマン」をかけて表現している。

エトスのテクニック 自分の成功をさりげなく自慢

 全体を通して、あっちゃんが紅白に出場した歌手であることを自慢しています。それを嫌味にならないように、「空気を読めない」「周囲の人から笑われた」など自分を落とす言葉を多用しています。
 誰しも成功者の話を聞いてみたいと思うもの。上の文章で、そういや あっちゃんって紅白に出たんだよなと視聴者は思い出します。そんな成功したあっちゃんだと伝えていることで、視聴者にその話を聞きたいと一層思わせている。

まとめ

 慶応大学卒の高学歴芸人あっちゃんの感想文に使われているテクニックを、ハーバード大学卒のパックン流に分析した。
 あっちゃんの感想文はたった326文字だけど、様々なテクニックが使われていることが分かる。賢いな、改めて思う。勉強大好きは本当なんだろう。
 勉強大好きのあっちゃんが本を出す。その名も「大合格」。興味がある。

「ツカむ!話術」で初対面の人と盛り上がる、成功する会話のコツ

 初対面の人と話すのが苦手。会話が途切れがち、沈黙が続いて気まずい。知らない人との会話で失敗しないか心配になる。そんな人って、日本人には多いですよね。
 一方、アメリカ人は話すことが得意。知らない人ともすぐに打ち解けお喋りし盛り上がります。以前、私がアメリカの空港で一人座っているときも、近くのアメリカ人が話しかけてきました。
アメリカ人:Where are you from?(どこから来たの?)
私    : I’m from Japan.(日本からだよ)
アメリカ人:Great! I love Japanese food. Sushi, Sukiyaki,,,(いいね。日本の食べ物って好きだよ)
私    :Do you like Okonomiyaki?(お好み焼きは好き?)
アメリカ人:I’ve never have it. What is it?(食べたことないな。どんなの?)
・・・
こうして文字に書き出すと他愛もない会話ですが、結構盛り上がったんですよ。アメリカ人って話が上手だなって思ったものです。
 超難関大学であるハーバード大学を卒業したお笑い芸人パックンの本、「ツカむ!話術」に初対面の人と話すコツが書かれていました。このハーバード流話術を、ここでご紹介します。この記事を読んでいるあなたはどんな人でしょうか?人と話すのが苦手な人ですか? でも大丈夫。初対面の人と話すにはコツがあるのです。コツを意識して話すだけで、話上手になりコミュニケーション能力が上がっていきます。
 

初対面の人と話すのは何故難しいのか?

 そもそも、なぜ初対面の人と話すのは難しいのでしょうか? それは、あなたが日本人だからです。
 アメリカ人は、子供の頃から話す練習をして育ちます。

 話す力というのは、生まれつきのものじゃないんです。
 アメリカでは小さいときから、人の話を聞いてそれにさっと反応することや、自分自身の考えをはっきりいうことを、徹底的に教え込まれます。だから、アメリカ人が話し上手、コミュニケーション上手に見えるとしたら、それは性格というより、教育と文化の中で話術トレーニングをみっちり積んでいるから。

 
 これを読んでいるあなたは、自分のことを内気な性格だと考えていませんか? コミュニケーション能力はトレーニングすることで向上するスキル。性格とは関係ありません。コミュニケーションがうまくいかないことを、あなたの性格のせいだと考えるのは間違いです。

 日本の方たちは、うまく話せないことを自分の性格的なものと捉えすぎる傾向があります。だけど、トレーニングしてないのに、苦手だとか下手だとか決めつけるのはおかしいんです。

(太字は私。)
 
 つまり殆どの日本人は初対面の人と話すのが下手なのです。トレーニング不足なのです。
 

初対面の人と話す3つのコツ

 初対面の人と話すトレーニングと言っても、ただ場数をこなせば良いというものではありません。まず、初対面の人と話すコツ、定番といったものを頭に入れておく必要が有ります。
 初対面の人と話すコツは、(1)エトスを上げること、(2)コモンプレイスを獲得すること、(3)質問を準備することの3点です。
 

一つ目のコツ:エトスを上げる

 エトスとは、人格的なものに働きかける要素です。キャラと言い換えても良いでしょう。この人が言っているから聞く気になる、そんな要素です。あなたが話しても聞いてもらえないことを、別の誰かが話すと大いに盛り上がったなんて経験はありませんか?エトスの差が出るのです。
 エトスを上げる一つの方法は、会話をするときの姿勢です。相手の方をきっちり向いて話をしましょう。また、ゆったりリラックスして話しをしましょう。さらに大切なのは笑顔。相手に笑顔を向けてください。

 ゆったりとくつろいで、リラックスした雰囲気を出したり、少し前のめりで、相手の目をずっとみつめることで熱い興味を示したりと、聞く姿勢も色々あります。

 
 リラックスした雰囲気を出すコツは、リラックスしているフリをすることです。初対面の人と話をするのは緊張するものですが、少し意識してリラックスしたフリをしてください。最初はフリだったのが、次第にリラックスできるようになりますよ。
 

二つ目のコツ:コモンプレイスを獲得する

 コモンプレイスとは、みんなが共有している認識に関する言葉や言い方のことです。
 例えば、理科系の学生だったら下のような共通認識を持っているでしょう。

  • 教室に女子が少ない
  • 理屈っぽいと言われる
  • 文系科目が苦手

話し相手が理科系の学生だとしたら、「日本史とか文科系の科目って得意ですか?」と聞いてみると良いでしょう。

 コミュニケーション現場ではたとえもともと仲間じゃなくても、コモンプレイスという、相手にとって共通認識を示す言葉や表現を使えば、同じ効果を得られます。ここで退治なのは、あなた自身ではなく、相手が持っている「常識」とそれを表すコモンプレイス。

 
 心理学でいう「ミラーリング」を知っていますか? 話し相手の動作を真似するテクニックです。例えば、相手が椅子に深く腰掛けたらあなたも椅子に深く腰掛け、相手が身を乗り出してきたらあなたも身を乗り出す、という風に相手の動作を真似します。相手が笑ったらあなたも笑う。さらに、相手がよく使うジェスチャーがあればあなたもそのジェスチャーを使います。
 動作だけでなく言葉のミラーリングもあります。相手がよく使うフレーズをあなたも使うのです。例えば、相手が「ガチで」とよく言うならあなたも「ガチで」という言葉を使いましょう。「まったくもって困っています」と相手が言ったら、「まったくもって困るなんて、大変ですね」と言い返しましょう。
 

三つ目のコツ:質問を用意する

 初対面の人と話すとき、共通の話題は有りません。相手のコモンプレイスも分かりません。あなたはどんな会話をしていますか? 正解は誰にでも通用する質問をする、です。
 まずは天気の話をしましょう。「今日は寒いですけど、薄着ですね。大丈夫ですか?」「今日は花粉が多いですけど、花粉は大丈夫ですか?」など当たり前の質問で大丈夫です。
 他にもいくつかあります。

  • 交通機関の話:「今朝(最近)電車が混んでいますね。あなたの通勤はどうですか?」
  • 相手の体験を聞く:「入社した頃って、仕事の仕方が分からず戸惑いませんでしたか?」
  • 目の前にあるものを話題にする:「そのスマホってどれくらい使っているのですか?」

 
 あなたの質問に相手が何か答えたら、その答えに対して質問をしましょう。例えば、「最近電車混んでませんか?」と質問して、相手が「いや〜、本当に混んでるね」と答えたら、「大変ですね。つり革も持てないくらいの混み方ですか?」とか「混んでない車両とか調べてます?」など質問をします。このように質問を繰り返し、相手のコモンプレイスを探ります。
 Yes/Noで答えられる質問(クローズドクエスチョン)はなるべく避けましょう。「そのスマホは気に入っているのですか?」と訊くのではなく「なぜそのスマホを選んだのですか?」と訊く方が会話が膨らみます。一般的に、「なぜ◯◯なのですか?」「どのように◯◯するのですか?」と訊く方が盛り上がります。
 「なぜ◯◯?」の形は、相手を非難しているように聞こえることがあります。「なぜそうしたのですか?」「なぜ朝ごはんを食べないのですか?」など非難しているような表現に成ってしまうときは、言い換えをしましょう。この辺のテクニックは、デザイン思考の「顧客インサイト」を得るためのテクニックと同じです。
「なぜそうしたのですか?」→「そうするようになったきっかけは、なにかあるのですか?」
「なぜ朝ごはんを食べないのですか?」→「いつから朝ごはんを食べなくなったのですか?」
 

それでも盛り上がらないとき

 あなたが色々工夫して話をしても、相手によっては盛り上がらないことがあります。そんなときは、相手が悪かったと思い、あきらめましょう。相手も話術の下手な日本人です。盛り上がらないことも当然あります。

そこまでして盛り上がらなかったら、その人は放っておけばいい。パーティ会場は良い実験の場であり、実践を積むことができます。

 

最後に

 知らない人と話すのは緊張するし疲れます。その分、新しい知識や考え方を得るチャンスです。初対面の人と話すことで、話術を磨くこともできます。まずは、誰にでも通用する質問を準備するところからトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか?

 知らない人と話をすると、思考回路が増えます。違う価値観に出会って、新しいものが見えてくることだってあるでしょう。シャイだから、面倒だから、無理だからといって話しかけないのは、自分の世界を広げるチャンスをみすみす逃しています。

 

おまけ

 初対面の人と話すとき、相手もあなたに質問をしてくるでしょう。そのとき、あなたはYes/Noで答えてしまうのではなく、会話が膨らむような返答をしましょう。「ツカむ!話術」には、ディテールを話す、ストーリを語る、といったテクニックが記されています。これらのテクニックも使えば、初対面の人とも大いに盛り上がって、会話を成功させることができます。

イノベーション戦略の衝撃!

 イノベーション戦略による成功者が次々と現れている。
 すいません、釣りです。
 
 常々、「イノベーション」という言葉って、思考停止ワードだなぁっと思っています。
 もともとは、「イノベーション」=”すごい”顧客価値創出 ぐらいの意味だったと思う。それが、段々「イノベーションに注力する」など、「イノベーション」=なんかすごいこと くらいの意味になってきて、ついには「イノベーションを通じて成長分野に資源をシフト」とか「日本もイノベーションの社会実装を急げ」とか、意味の分からない文章があふれています。イノベーションって社会実装できるものなのでしょうか?

「今は平時ではなく異常時であり転換期。従来の経営戦略では通用しない。だからこそ経営戦略としてイノベーションが必要」(アサヒグループホールディングス社長・泉谷直木)

(「大企業のトップが激論、日本型イノベーションを興すために」(Exciteニュース))
このあたりになると、”なんかすごい戦略が必要”くらいの意味でしょうか。

 「イノベーション」という言葉は便利です。「経営によるイノベーション」、「技術によるイノベーション」、「投資によるイノベーション」など 後ろにイノベーションをつけるとなんとなくカッコよくなります。「地域イノベーション」とか「医療イノベーション」とかもありでしょう。なんだったら「子育てイノベーション」、「介護イノベーション」、「教育イノベーション」もありでしょう。意味が分からないけれどカッコよくなります。「個人のイノベーションを組織イノベーションにつなげ、社会にイノベーションを起こす」なんていうなんとなくかっこいい文章も書けます。
 「イノベーション」という言葉を使うと、なんとなくカッコよくなるので、書く方も読むほうも思考停止になるんですよね。
 
 一方、「戦略」という言葉も「イノベーション」と同じなんだと最近思い始めました。なんだかカッコよくて、それでいて中身がない。「戦略的パートナシップ」、「戦略的投資」、などなど、「戦略」を前につければなんだかカッコよくなります。「戦略的恋愛」、「戦略的学習」、「戦略的会話」、なんだってありです。
 
 この二つの言葉「イノベーション」と「戦略」を両方使えば、もう最強です。「科学技術イノベーション総合戦略」、「産官学による連携を通じて、革新的なイノベーションの持続的な創出を戦略的に推進するための方策に関する企画・立案」など、かっこいい文章ができあがります。
 こんな本もありました。

ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言 (Harvard Business School Press)

ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言 (Harvard Business School Press)

 ところで「戦略」ってどいういう意味なんでしょう? なんだか「戦略」=なんかすごい計画 くらいの意味で使われている気がします。これも、カッコよすぎて思考停止になりそうです。

成功体験は披露され、失敗体験は秘密にされる、そして世界は不安定になる

 成功体験ってみんな好きですよね。
 話す方も、聞く方も、両方これが好き。だから、成功体験って世の中に拡散されてシェアされていく。
 一方、失敗体験って殆どシェアされない。聞く方は失敗体験も好きなのですが、話す方が話したがらない。
 
 「佐賀県の教育情報システム「SEI-NET」と校内LANへの不正アクセス事案についてまとめてみた」(piyolog)
 
 17歳の少年が、佐賀県の教育情報システム(SEI-NET)に不正に侵入して個人情報を持ち出した事件がありました。上は、この事件についてまとめたものです。これによると、少年が不正侵入した手口について、秘せられています。

(SEI-NETを構築した)凸版印刷は取材に対して犯罪を助長することになるとして詳細な原因は明らかにしていない。

(上記エントリより。ただし、カッコは私が付与)
 
「犯罪を助長することになる」から原因は明らかにしない、という理屈はいただけない。やはり、ま、失敗の詳細なんてものは語りたくはないと感じます。
 
 「佐賀不正アクセス . 高校生15人が情報共有か」(毎日新聞
 
 上は、少年がその手口を、他の少年と共有していたと報じています。
 不正アクセスに成功した少年にとっては、これは成功体験。当然、誰かに話したいのです。そして、それを聞きたい人間もいます。そして、成功体験は、世間に拡散し共有されていく。
 
 このようにして、最先端の不正アクセス技術は、成功者とその模倣予備軍の間では拡散し共有されるが、それを防ぐための糧である失敗体験は、不正アクセスを防ぎたい人の間では共有されない。
 
 こう思うと、世の中は不正アクセスの攻撃者に有利なようにできている気分になります。
 困ったものです。同種の構造は他にもありそうな気がします。

コミュニティを演じ分ける

 「角川インターネット講座5 ネットコミュニティの設計と力」を読んでいると、そもそもコミュニティとはなんだろう?と考えさせられます。

 SNSをはじめとするとコミュニティサービスの動静には私も注意を払っている者の1人です。しかし、コミュニティサービスの前にコミュニティとはなんでしょう? 本書の「第4章猿楽から考える人間のコミュニティの未来」を読んでいると、ここに立ち返って考えたことのないことに気づきます。
 コミュニティに参加する。これは人間にとって当たり前過ぎる話です。そのため、サルのコミュニティとの比較によって人間の特殊性を説明しています。

(人間とサルと決定的に異なる点は)生きるために複数の集団を出入りするという点である。

私たちは、家族と言う集団を形成しています。それ以外に、学校や会社の集団にも出入りしています。複数の集団に出入りするのは当たり前のことですが、サルにはそれが無いと言うのです。
 

 人間以外の霊長類の場合、いったん群れを離れてしまうと、その群れには戻れなくなってしまう。戻ろうとすると、元の仲間から攻撃を受け、追い出されてしまうのだ。

女子高生の友達グループは排他的で、他のグループの子と仲良くするとグループからはじき出される、ことがありそうです。しかし、学校の友達グループに参加したからと言って、家族からはじき出されるわけではありません。
 

人間は類人猿には決してできなかった、集団ごとに自分を違う形で表現し、違う役割を演じるということができるようになったのである。

家族の中ではわがままを言っても、学校の友達グループでは気配りのできる人間を演じる。そんな集団ごとに違う役割を演じることは誰もが普通に行っています。ところが、サルは、一つのグループにしか所属しないため、役割を演じ分けることが無いのです。
 
 さて、一人の人間が複数の集団に属するとき、異なる集団の構成員が重複している場合も考えられます。これを極端に言えば、構成員は同じであるのに集団(すなわちコミュニティ)が異なり、果たす役割も異なる場合があると言えないでしょうか。
 例えば、昔行われていた飲みにケーション。会社のメンバーと、昼間は一緒に働いて、夜は一緒に飲みに行く。夜の目的がコミュニケーションであるとすると、昼の集団と夜の集団はコミュニティとして別であった可能性があります。上司は、昼間は仕事を遂行する上で監視者としての役割を果たし、夜は場を盛り上げるエンターテーナーとしての役割を果たす。構成員は同じであるけれども、コミュニティが異なっていたのではないでしょうか。
 もし、飲みに行っても、上司が昼間と同じ顔をしているとするならば、それは同じコミュニティであるかもしれません。
 
 集団のメンバーが同じかどうかにかかわらず、コミュニティの性格を考え、そこで果たす役割を意識すると、社会生活がもっとうまくいくかもしれません。

教育が原因なら、学べば良い

日米仏の思考表現スタイルを比較する - ベネッセ教育総合研究所

 「思考表現スタイル」≒「コミュニケーションの基本となる型」とし、これが日米仏で異なる。その違いを生んでいるのは各国の初等教育の違いである。上の記事はこんなことが書かれている。

 ここでは、日米仏で違いがあるから日本は米仏に比べ劣っているとか、日本の教育をどう変えるべきかなどと私は言うつもりはありません。ただ、上の記事を読みながら考えたことを書いていきます。
 上の記事が書いていることを乱暴にまとめると、

  • 日本の子供は時系列で話を追い、それに対して米国の子供は結論とその理由から物事を表現する。
  • 日本の国語教育は「読む」ことが中心、米国の国語教育は「書く」ことが中心。
  • 日本の歴史教育は、時系列に出来事を追う。米国の歴史教育は出来事が起こった原因を追う。

こうやって見ると、日米の教育はずいぶん異なることが分かります。

 私の仕事生活を振り返ると、若手の日本人のビジネス報告は、判断を読み手に任せるような所があると思います。例えば、何かトラブルがあった時に「これが起きて、それでAさんがこうして、Bさんがああして、こうなりました。以上です」というレポートを目にします。つまり、時系列に説明が続き、一通り出来事を述べて終わり、というパターンです。
 「で?!」これが、こういうレポートを読んだ上司の反応でしょう。レポートの書き手にすれば、しっかり報告したつもりでしょうけど、うまく伝わっていません。なんだかもったいないと思う事例です。
 こういう行き違いの起こる原因は学校教育にあるんだと、上の記事を読んで思いました。
 原因が教育にあるならば、お勉強すれば良いわけです。お勉強の手順は、まず型の認識、そして練習です。
 汎用的に使える型として次のものはどうでしょう。

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 [タイトル(例えば、今月の進捗の報告)]
 [結論(例えば、進捗は順調です。あるいは、一部遅れがあります。)]
 [理由(例えば、今月の予定・目標は○○、それに対して実績は△△。予定を達成した。)]
 [今後の予定(例えば、本件は順調なので、来週休みます。)]
 [まとめ(上の理由の文章量が多い場合に書く。上の結論を繰り返すだけでOK)]

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簡単でしょ。