「ゲームとしての交渉」(草野耕一著)は、交渉の戦略を類型化している。交渉本には、相手の目を見て話せとか、相手の論理の切り崩し方といった、「戦術」に属するテクニックを述べたものが多い。一方、そもそも交渉とは相手とのパワーバランスの関係で取り得る戦略が異なるものであるが、これについて記したものを本書以外に私は知らない。
通常の交渉は、お互いの利益を最大化するよう「協調的な交渉」が行われるが、相手とのパワーバランス次第では、「強者必勝型交渉」(弱者が強者の要求をすべて飲んだ場合よりも、交渉を決裂させた方が強者の利益が高くなる場合)、「ブラックメール型交渉」(交渉が決裂した場合に、一方の被害が極端に大きい場合)、「チキンゲーム型交渉」(両者にとって交渉が決裂した場合に利得が最低となり、その利得がお互い同じくらいの場合)に累計される。
この本を読んでの気づきは、交渉事に於いて交渉決裂した場合の利得が、交渉戦略に大きく影響するということである。本書では、各型において両者の取り得る戦略をさらに場合分けし整理している。
この本を参考に国際ニュースをみると、各国の交渉戦略を理解しやすくなる。また、ビジネスの場で自分が交渉を行う際の戦略立案に大いに役立つ。
- 作者: 草野耕一
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1994/07/01
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