「嫌われる勇気」でアドラー心理学を広めた岸見一郎さんの著書。
「嫌われる勇気」では、アドラーが何を言いたいのかいまひとつ分かった気になれなかったため、本書を読んだ。本書の主張の柱は二つ。
他人にコントロールされない、他人をコントロールできない
ストレスの9割は対人関係から生じる。その対人関係からのストレスをなくす心構えが、他人にコントロールされないよう注意する、他人をコントロールできないことを自覚する、ということ。
そもそも、人は他人からの承認を求める。「すごいね」、「えらいね」、「そうだね」といった言葉を欲しがる。逆に「お断りします」、「いやです」など拒絶の言葉を嫌う。しかし、実際のところ、他人から承認されたからといって自分の価値が上がるわけではない。他人から拒絶されたからといって、自分の価値が下がるわけではない。(このあたりの議論は、「いやな気分よ、さようなら」に詳しい)
他人からよく思われたい。そんな気持ちは誰しもある。それについて本書は、こう述べている。
他人からの評価を気にするということは、他人が自分に持つイメージに自分を合わせようとしている。
これは他人に自分をコントロールさせるということだ。他人にコントロールされる、例えば他人の期待に応えるというのは、実に大変なことでストレスが大きい。
また、他人を自分がコントロールすることも実はできない。他人に何かを頼んでも、それに従ってもらえるかは、相手の自由であり、自分にはコントロールできない。もちろん、頼み方を工夫することで成功率を上げることはできる。例えば、営業テクニックのフットインザドアやフェイスインザドアは、成功率を上げることはできるかもしれないが、結果をコントロールすることはできない。つまり、拒絶されることを恐れるのは意味がないということだ。(これについても「いやな気分よ、さようなら」に詳しい)
このように、独立した人間同士がそれぞれに自由に生きるという基本に立ち返れば、他人にコントロールされることも、他人をコントロールできることも、望ましいものではない。しかし、人は無意識に他人からの承認を求め、拒絶を嫌うため、ストレスを抱える。これを防ぐために、他人からコントロールされないよう注意する、他人をコントロールできないことを自覚する(言い換えれば「嫌われる勇気を持つ」ということ)、という2点を意識することが大切だ。
陰徳を積む
他人からの承認なしに、人間はどう生きるか? その答えとして、社会に貢献することだと、本書は主張している。人は、社会への所属意識をなしには、生きていくことはできない。所属意識を持つためには、自分は社会に貢献しているという自覚が必要である。
既に述べたように、他人からの承認を求めることはストレスを生む。承認を求めずに社会に貢献するということは、つまり陰徳を積むということだと思う。他人に黙って良いことをする。そういうことだ。Webで“陰徳を積む”と検索すると、大層な記事がみつかる。そんな大したことではなく。小さな良いことをする、ただし黙って行う。それだけのことだ。
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