有川浩さんの「海の底」の感想です。
最後のページ。このセリフに、物語の全てが連なっている。
「初めまして、本日ご案内いたします夏木大和二尉です。よろしくお願いします」
人が「初めまして」というとき、それが初対面であろうとなかろうと「よろしくお願い」したいときに言うものだ。
特に初対面でない相手に向かって言われるとき、それはこ「れまでのことは無かったことにしたい」という気持ちが込められている。
お互いの行き違いの過去を「無かったことに」できたとき、彼女はほっとしたように笑った。その笑顔を見て夏木は思う。
頼むからそんなふうに笑うな。言い訳が全部ひっぺがされてもう逃げ場がない。
普通に綺麗だとか思っちゃうだろうが。
「海の底」にはそんな言い訳が綴られている。