kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



シェアリングエコノミーの期待の終わり

 Uberなどのシェアリングエコノミーが、資本主義による格差をなくすと期待されています。ところが、どうもこの期待は裏切られそうだ、というお話です。

シェアリングエコノミーとは何か?

 Uberという配車サービスがあります。Uberのサービスにドライバーとして登録すると、あなたの空き時間を使って、お小遣いを稼ぐことができます。車で移動したい客を、Uberがみつけて、あなたに連絡します。そのとき、あなたの都合がよければ、自分の車で人を運んであげ、お金をUberから受け取る、というものです。
 このように、自分の所有する物(Uberの場合は車)を、他の誰かとシェア(共有)することで対価を得る。これがシェアリングエコノミーです。
Uberの他に、airbnb(部屋の共有)、notteco(車の相乗り),Yerdle(物の共有)など様々なサービスが立ち上がっています。
 シェアリングエコノミーをまとめると、以下のように言えます。

そもそも「シェアリングエコノミー」とは何でしょうか? 空き部屋や空き家など、目に見えるものから料理やDIYの代行など目に見えないものまで、「個人が保有している遊休資産の貸出を仲介するサービス」を指します。また、こうしたサービスがインターネットを介して行われることも大きな特徴です。株式会社DeNAの原田氏は「使われていない資産、リソース(中略)を有効活用することで新しい価値を生むもの」と定義しています。

(シェアリングエコノミーラボより)

シェアリングエコノミーにはどんなものがあるのか?

 個人が保有しているものを共有するものなら、なんでもシェアリングエコノミーの対象になります。

ガイアックスが考えるシェアリングエコノミーの4領域

モノのシェア(各種フリーマーケット・衣服などのファッション等)
場所のシェア(駐車場・会議室・民泊・ルームシェア等)
移動のシェア(カーシェアリング・ライドシェア等)
リソースのシェア(労働力・技術・お金等)
シェアリングエコノミー協会の理事である株式会社ガイアックスは、国内外における代表的なシェアリングサービスそれぞれ4つの領域に大きく分けて考えています。

(シェアリングエコノミーラボより)


(シェアリングエコノミーラボより)

シェアリングエコノミーの何が凄いのか?

 二つの視点で、シェアリングエコノミーの凄さが語られます。
 誰でも使っていない物や時間があります。そういったものを使って”あなたもお金儲けができる”という点が、皆に受けています。特別な人でなくても誰でも儲けられる、いわゆるマイクロ起業ができる、これがシェアリングエコノミーの凄さだと期待されています。これが一つ目の視点です。
 二つ目の視点は、すごく大きいものです。シェアリングエコノミーは、現在の経済システムである資本主義を変える、というものです。「資本主義によって生み出される格差をなくす。キーワードはシェアリングエコノミー。(Another Life)」などが、関連する記事です。トマ・ピケティの「21世紀の資本」で書かれているように、資本主義経済が貧富の格差を拡大しています。これが、シェアリングエコノミーによって解消されるのなら、素晴らしいことです。

ところで資本主義とは何か?

 資本主義とは、労働力の商品化です(「資本主義は、帝国主義を指向する」)。金を持っている人(資本家)が、起業家に金を出し、労働者を働かせて、利益を得る、これが資本主義です。一般の人に金を渡して、働いてもらう社会です。

資本主義的シェアリングエコノミーの可能性

 ところで、シェアリングエコノミーと資本主義は相容れないものでしょうか?
 シェアリングサービスの登場人物は、モノを貸す人と、借りる人、そして両者をマッチングするサービス提供者(例えばUber社のCEO)です。この関係において、資本主義的シェアリングサービスの可能性があります。それは、マッチングサービス提供者を資本家、貸し手を労働者とするものです。「ウーバーと「共有型経済」と低賃金(The Wall Street Journal)」は、”共有”という美しい言葉の裏に搾取が隠れていることを示唆しています。

 おおむね行儀のいい会社で戦いを挑もうと望むならば、「sharing economy(共有型経済)」は新たな封建主義だと宣言するがいい。さもなければ、それが仕事の将来形態になり、「農奴たち」はそれに慣れるしかなくなる、と主張するのだ。
(中略)
 批判的な向きからすると、労働力のコントロールの仕方において恐らく最悪の反則者はウーバーだ。ウーバーは、自社のドライバーが受諾しなければならない価格を設定し、2つのやり方でドライバーを一方的に搾取する慣行を広げてきた

 Uberという資本家が、貸し手という労働者を働かせている、そんな構図が透けて見えます。つまり、シェアリングエコノミーは、資本主義と組み合わさって、格差を増加させる可能性があります。

シェアリングエコノミーの期待の終わり

 シェアリングエコノミーは、個人同士が貸し手と借り手となってモノを共有することで、資本主義経済を変え格差を是正するのではと、期待されています。しかしながら、その期待とは違った方向に進んでいるように見えます。貸し手と借り手をマッチングさせるサービス提供者が資本家として、貸し手を働かせる方向に進んでいます。結局は、資本主義は強化されていくように見えます。
 社会の成熟に伴う指向の多様化、および製品からサービスへの流れ(いわゆる「モノからコトへ」)を、シェアリングエコノミーはうまく捉えているように見えます。それ故、シェアリングエコノミーが発展する可能性は大いにあります。しかし、シェアリングエコノミーが資本主義を変えるという期待は外れ、資本主義は継続しそうです。

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