kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



マストドンの可能性とは? 「公共の場」ではなくお子様立ち入り禁止

 マストドンことMastodonが急速に注目を集めている。
ポストTwitter? 急速に流行中「マストドン」とは】(ITメディア)
 
 ここでは、マストドンの今後についてその可能性を論じてみたい。

マストドンとは?

 ユーザから見ればTwitter(SNS)のようなもの。
 ただし、Twitterと違いサイト(サーバーの管理主体、インスタンス)が1つではなくて、複数に分かれている。

 Mastodonは、ドイツに住むEugen Rochkoさん(24)が作ったTwitterライクなSNSTwitterとの大きな違いは、サイトが1つではなく複数に分散していることだ。
 Mastodonを構築するためのソフトがオープンソースで公開されており、誰でも独自のMastodonインスタンス(サーバ)を作ることができ、インスタンス同士は「連邦」としてゆるくつながる。既に多数のインスタンスが立ち上がっており、4月13日時点で500以上もあるようだ。
 Rochkoさんは「Mastodonは分散化したプラットフォームであり、コミュニケーションが単一の企業に独占されるリスクを避けられる」と説明。Twitterの弱点をカバーする“ポストTwitterを意識して制作したようだ。

(上記ITメディア記事、太字は私)
 
 大切な点は2点だ。

 
以後、順に見ていこう。

自分だけのコミュニティサービスを立ち上げ

 LinuxApacheRuby等、オープンソースで公開されているソフトで世界のインターネットサービスはできている。マストドンもオープンソフトでソフトが公開されている。
 これは、(1)誰でもマストドンを動かしたサーバーを立ち上げることができることと、(2)誰でもマストドンのソフトを改変していくことができることを意味する。これにより、誰もが新しいコミュニティサービスを立ち上げることができ、必要があればサービスの機能を追加していくことができる。
 LinuxApacheが出始めた頃を見返して欲しい。腕に覚えのある連中はPCにLinuxをインストールし、Apacheを入れて、自分だけのWebサーバーを立ち上げたものだった。Webコンテンツは、HTMLコードをベタ書きして作成した。そのうちPerlで書いたCGIを使って掲示板を開発する者も出始め、Webサーバーの高機能化が進んだ。
 マストドンも、やる気になれば自分だけのコミュニティサービスを作ることができる。これって楽しいことだと思わないか? 「アーキテクチャの生態系」(濱野 智史著)にあるように、コミュニティの性格は設計できるのだ。常連にとって居心地の良いコミュニティ、あるいは新参者が自由に発言できるコミュニティなど、どう設計するかはあなた次第だ。

検閲からの自由

 上の記事で言う「マストドンTwitterの弱点をカバーしている」とはどういうことだろうか?
 Twitterfacebookでは検閲が行われている。不適切なツイートや表現は削除されることがある。最悪アカウントを凍結されることがあるのだ。Twitter社やfacebook社には、運営ポリシーがあり、そのポリシーに合わないツイートを削除する権利を彼らは持っている。しかし、そのポリシーは何度も変更されており、ユーザーにとっては突然検閲にあったような不快感を受ける。
 一方、マストドンではサイト(サーバーの管理主体)を自分で立ち上げることができるため、自由にポリシーを設定することができるというわけだ(もちろん法律の範囲内での自由だ)。
 
 ネット上にはマストドンこそ検閲されやすいという意見がある。マストドンはサーバーの管理者が法人ではなく個人だから、検閲やり放題という意見だ。しかし検閲を考えるとき、法人 vs 個人という図式で考えるのではなく、なぜ検閲が行われるのかという本質を考えることが大切だ。
 検閲が行われるのは、その場(例えばTwitterという場)が「公共の場」だからである。公共の場でワイセツな画像を見せればとがめられるのは当然だ。人の悪口を言っても叱られるし、フェイクニュースを流せば検閲されるのは当たり前だ。
ソーシャルメディアは公共の場。肝に命じている「100人の前で同じことを言えるか?」という意識】(Webマスターの手帳)
 
 昔のTwitterはコミュニティが小さくて「公共の場」ではなかった。それがユーザが増え、不特定多数が利用するようになり、「公共の場」になってしまった。Twitter社は「公共の場」であることを選んだ。Twitterという「公共の場」を利用するユーザは、ポリシーに反すれば検閲される。
 逆に言えば、「公共の場」ではないならば検閲されないということだ。
 例えばPixivは危ない画像をやりとりしている。
Pixivのマストドン「Pawoo」、立ち上げて一日ちょっとで電子的に国交を断絶される伝説 】(togetter)

マストドンの可能性

 マストドンの可能性は、「公共の場」ではなく同好の士だけの限定コミュニティの立ち上げにある。
 Twitterのグラドル自画撮り部をご存知だろうか?「公共の場」であるから適度な投稿が行われているが、これが仮に限定コミュニティになれば尖ったコミュニティになると思う。
 【公式 グラドル自画撮り部】(Twitter)

 尖ったコミュニティになれば成る程、連邦から国交断絶される可能性は高まる。コミュニティの独立である。独立したコミュニティが複数あれば、それらで連合国を作ることも可能である。例えば、AKB48マストドン限定コミュニティと、SKE48のそれができたとして、これらが連合を組むというのも楽しそうだ。
 コミュニティサービスはユーザー数が多いほど盛り上がる。しかし、ユーザー数を増やしすぎて「公共の場」になってしまっては元も子もない。独自性を失わずにユーザー数を増やすためには、どのコミュニティと組むかは考えどころであり、楽しそうだ。

 また、マストドンを使えば、有料コミュニティサービスでさえ立ち上げることができる。そのコミュニティでやり取りされる情報に価値があり、ユーザー同士にWinWinの関係を構築する場、例えれば一流クラブのような場もあり得よう。
 

まとめ

 マストドンは、Twitter代替のコミュニティサービスのためのソフトである。
 しかし、Twitterのような「公共の場」としてのコミュニティサービスよりも、限定コミュニティサービスのためのプラットフォームとなり得る点にこそ、マストドンの可能性があると私は考える。
 昔LinuxでWebサーバを立ち上げた人と同じく、ただ楽しいからという理由で、今多くの人がマストドンのサイトを立ち上げている。それがそのうち上位レイヤのサービス設計に目が向くときが来るだろう。そうして、尖った限定コミュニティサービスが育ち始める。

おまけ

 マストドンがすごく成功して、そのPaaSがでてくるとどんな世界が開けるか? そんな可能性も考えている。