有川浩の「シアター」には二種類の人間が登場する。情熱を持った人と、常識を持った人だ。
劇団シアターフラッグのメンバーは情熱を持って芝居を作り上げていく、「作れる」人たちだ。その主催者の春川巧は甘えん坊で実務能力はゼロ。劇団メンバーも芝居への情熱はあるが、劇団の儲けには関心もなければスキルもない。
赤字が積み重なり存続の危機に直面したシアターフラッグ。巧が頼ったのは兄の春川司だった。
春川司は会社員の常識の人。経済活動として劇団を見て“金は正義だ!”と言い放つ。儲けるのは会社員としての常識である。
成田千歳はプロの声優。オドオドした性格の子供だった彼女は、周りの大人の求めるものを察っするのが上手く、大人が勧めるままに声優活動を続けプロになった。やりたくて声優を始めたわけではないことに、成田千歳は後ろめたく思っていた。
劇団シアターフラッグに入団した成田千歳は、その性格から劇団メンバーに対して心理的な距離をとっていた。彼女が距離を縮めたのは、劇団の外部の人間である春川司だった。
彼女が司との距離を縮めるきっかけとなるシーンが、この小説の見どころだ。「大人って汚い、、、」彼女が司に放った言葉が、始めて彼女が本心をみせたシーンだ。
成田千歳の気持ちは司への恋心に発展するのか?成田千歳を含めて劇団員と距離をとって付き合う司は、成田千歳に特段好意を持たない。この二人はどうなっていくのか?有川浩らしい軽妙な文体でお話は進む。
- 作者: 有川浩,大矢正和
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/12/16
- メディア: 文庫
- 購入: 15人 クリック: 274回
- この商品を含むブログ (273件) を見る