kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



有川浩の「シアター」:情熱の劇団と距離を取る二人の淡いロマンス

  有川浩の「シアター」には二種類の人間が登場する。情熱を持った人と、常識を持った人だ。

  劇団シアターフラッグのメンバーは情熱を持って芝居を作り上げていく、「作れる」人たちだ。その主催者の春川巧は甘えん坊で実務能力はゼロ。劇団メンバーも芝居への情熱はあるが、劇団の儲けには関心もなければスキルもない。

  赤字が積み重なり存続の危機に直面したシアターフラッグ。巧が頼ったのは兄の春川司だった。

  春川司は会社員の常識の人。経済活動として劇団を見て“金は正義だ!”と言い放つ。儲けるのは会社員としての常識である。

  成田千歳はプロの声優。オドオドした性格の子供だった彼女は、周りの大人の求めるものを察っするのが上手く、大人が勧めるままに声優活動を続けプロになった。やりたくて声優を始めたわけではないことに、成田千歳は後ろめたく思っていた。

  劇団シアターフラッグに入団した成田千歳は、その性格から劇団メンバーに対して心理的な距離をとっていた。彼女が距離を縮めたのは、劇団の外部の人間である春川司だった。

  彼女が司との距離を縮めるきっかけとなるシーンが、この小説の見どころだ。「大人って汚い、、、」彼女が司に放った言葉が、始めて彼女が本心をみせたシーンだ。

  成田千歳の気持ちは司への恋心に発展するのか?成田千歳を含めて劇団員と距離をとって付き合う司は、成田千歳に特段好意を持たない。この二人はどうなっていくのか?有川浩らしい軽妙な文体でお話は進む。

 

 

シアター! (メディアワークス文庫)

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