kotaの雑記帳

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映画「バッドジーニアス」が最高に面白い

 映画「バッドジーニアス」が最高に面白かった。

maxam.jp

 

 日本では一部の映画館でしか上映されていないが、観客の評判は高い。上映スクリーン数の少なさは、タイ映画という知名度の低さのせいかそれとも広告費が少ないせいかは不明だが、それと映画の内容は無関係。のんが声優をつとめた「この世界の片隅に」もそうだった、上映スクリーン数は少ないが映画の質は高かった。

 

 「バッドジーニアス」のストーリーは、成績優秀な高校生リンが定期試験のカンニングビジネスを同級生に向けて始める。次第に彼女のカンニングビジネスはエスカレートし、全米大学受験用の共通テストSITC(架空の試験)を舞台に200万バーツ(約700万円)の荒稼ぎを狙うようになる。

 

 この映画の見所は、主人公リンの心の揺れの描写だ。リンの父親は真面目で地味な教師、裕福ではないがリンと父親は仲良く生活している。リンは父親の性格を受け継ぎ真面目で地味。そんなリンがカンニングビジネスを始めたのは、高校の校長も賄賂を受け取っていることを知ったのがきっかけ。裕福でない自分たちは真面目なだけでは報われないとカンニングビジネスを始める。

 リンの心は、金を持っているやつらは不正をしており自分も不正をしないと貧困から抜け出せないという社会に対する復讐心と、自分が悪いことをしているという父親への後ろめたさとの間で揺れる。

 映画冒頭のシーンでダサい主人公がストーリーの進行とともに綺麗になっていくのは映画のお約束で、この映画でもダサいリンがどんどん綺麗にかっこよくなっていくが、ハリウッド映画のように綺麗になり過ぎない。これもこの映画のよいところだ(主人公リンを演じたChutimon Chuengcharoensukyingはモデルなのでその気になれば非常に綺麗なのだが)。あくまで真面目で地味に育った女の子として描かれている。

 

 この映画の演出で特徴的なのは、カンニングビジネスがばれて取調べを受けるシーンが冒頭から何度も挿入されていることだ。これにより観客はカンニングがばれることを予想するわけだが、途中でこれを否定するシーンが入る。リンは、最後の大きなカンニングビジネスを実行する前に、万が一カンニングがばれた場合に備え、取り調べの受け答えの練習を仲間にさせる。映画冒頭からの取調べシーンはこの練習だった、リンのカンニングビジネスはばれなかったのだと、観客は思うことになる。しかし映画のラストで、リンが取調べを受けるシーンが描かれ、仲間たちも取調べを受けるであろうことが示唆される。こうして、冒頭から挿入される取調べシーンは練習なのか本物なのか再び観客は迷うことになる(映画ラストの取調べシーンだけが明るい白いトーンで描かれていることも謎だ)。

 

 

 この映画のストーリーはとても面白いが、3つほど分かりづらい点がある。

 一つ目は、転校のためにリンと校長が話をするシーンで、リンは学費・食費・交通費を学校が支給することを校長に認めさせる。このシーンによってリンの家が裕福ではないこと、リンが仮定の経済状態を気にしていることを描いているわけだが、強引過ぎる気がする。

 二つ目は、リンは学内試験でのカンニングが学校にバレて罰をうける。罰に懲りたはずのリンが、再度カンニングビジネスに挑む理由が、十分に描かれていない。もう少し丁寧に描いて欲しい。

 三つ目は、カンニングの手法が稚拙なこと。リンは右手の指の動きで周囲にテストの答えを伝える。このやり方ではリンの席の後ろにしか答えは伝わらない。しかし映画の設定では20名以上にカンニングさせており、無理がある。

 もう一度観ると、これらの点も分かるのかもしれない。 

 

 さて、この映画はタイ映画である。この映画を見ていると、タイの社会も格差社会なのかと感じる。富めるものがいっそう富み、貧しいものは努力しても報われない。成績優秀であっても貧しいリンが報われるには不正を行うしかない。タイ社会に対する揶揄がこの映画にはこめられているのかもしれない。

そもそも犯罪者が主人公の映画が成立するのは、悪者から盗む場合だけだ。ずるい主人公に観客は共感しない。リンはずるい犯罪者として描かれているにもかかわらず、リンに共感できるのは彼女が真面目で誠実な性根をの少女として描かれているためである。

 

まとめ

 タイ映画の「バッドジーニアス」が最高に面白い。主人公リンの心の揺れに注目してみて欲しい。

 

 
 
 
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