「タイムシフティング」という本を読んだ。この内容を一言で言えば、副題のとおり「人生が楽しくなる時間活用術」である。世の中に多く存在する時間の効率利用術ではないことに注意が必要である。
著者の問題意識は、効率的に時間を使うために心を砕いていると、その瞬間々々を楽しめなくなることがあるというところにある。そのため、時間を使う速度を意識して変えることを勧めている(これをタイムシフトと呼んでいる)。
例えば、ご飯を食べながら次の企画のことを考えたりあるいは昨日上司に叱られたことを反芻するのではなく、いまの食事を楽しむという考え方である。これを著者は「今を生きる」と表現している。
自分のことをふり返ると、同時に複数のことをこなせることを自慢したりするところがある。複数の作業を同時に行うことは、効率の点では優れているがその時間を楽しめているかというと甚だ疑問である。一方、もっと仕事で成果をあげなければ生活が破綻してしまうと考える人は、「死の間際で、もっと会社で時間を過ごせばよかったのに、と思うやつはいない」という言葉は一考に価する。
また、「死の病にかかった人こそが、今を生きようとする」という言葉も味わい深い。
タイムシフティング―人生が楽しくなる時間活用術 (日経ビジネス人文庫)
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