内定切りが昨年問題となった。JALは内定を切らなかったから倒産したと言えないだろうか?倒産する会社に就職するよりもなるべく早い段階で次の就職するチャンスを与えた方が学生にとって誠意のある態度ではないだろうか。また、派遣切りの問題に関しても、大企業は潰れないという意識が国民全体にあるのではないだろうか?うちの会社は潰れないという安心感から従業員が緩む状態を大企業病と呼ぶ。
さて先日、大学および国の研究機関の方々とお話しする機会があった。そのとき、科学立国病にかかっているのではないかと感じた。つまり、彼らは科学立国日本をまだ信じているということである。
東京大学の小川先生の論文を引用するまでもなく、現在の日本産業における競争力の低下は周知であり、特にエレクトロニクス分野では外国勢に勝てなくなっている。科学立国日本は、1980年代をピークに凋落を続けているのだ。
http://www.isipc.org/documents/sympo20090527/doc02_ogawa.pdf
民主党によるスーパーコンピュータの事業仕分けの際に、大学関係者が科学立国崩壊を招くと言って、スーパーコンピュータへの予算削減に反対した。これは日本が科学立国として競争力を今も有していると誤解から発せられているように思う。これは、誤解に基づく科学立国病である。
http://osaka.yomiuri.co.jp/science/news/20091125-OYO8T00359.htm
マイクロコンピュータの普及に伴い技術の主役がアナログからデジタルに移行したことと、オープンソースの普及が高度なアプリケーションの実現を容易にしたことがあいまって、開発した機能が新しいこととそれが競争力を有することが一致しない*1。
ここ数年、アカデミアは、いわゆるユビキタス技術の開発に注力してきた。これらの開発した技術は、容易に外国勢が真似できるという点で競争力がない。競争力のない技術開発に集中したことに今の日本産業界の凋落があるように思う。
まずは、「既に日本は科学立国ではない」という認識を持つことが必要だと思う。そして、研究者は、論文を書けばよいという低い意識ではなく、各自の研究成果が競争力を有するかという点で評価して見ることが必要に思う。なぜなら、国家予算を割り当てるべき研究とは、競争力の源泉足りえる分野であるべきだからである。
技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由
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*1:エレクトロニクス分野で日本は競争力を失ったとは言え、まだ材料や部品の分野では競争力を有している。