kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



禅の平常心と差別化戦略あるいはライバルの効用

 「平常心是道」という禅の言葉がある。サッカー日本代表の岡田前監督が書いた本のタイトルにも登場したことから、ご存知の方も多いのではないだろうか。禅では「平常心」を「びょうじょうしん」と読むようで、「平常心」を一般とは異なった意味で用いている。

 禅でいう「平常心」は、動揺することの無いどっしりと落ち着いた精神状態を言うのではなく、動揺したり喜怒哀楽のある自分の心のあるがままを意味する。そして、「平常心是道」とは、このゆれ動く自分の心のあるがままを受け入れることが道に通じるという意味である。逆に言えば、もっと胆力をつけたいとか競争相手に負けたくないといった、今の自分を否定する考え方をいさめているのである。

 ところで、ビジネスの世界には差別化戦略と呼ばれる基本的な戦略がある。これは、競争相手を定義しその競争相手との違いを常に意識することで他社にない価値をユーザに提供せよというものである。このように差別化戦略の考え方は「平常心」とは大きく異なっている。また、スポーツの世界でもライバルを想定してモチベーションをアップさせる手法がよく採られるが、これも「平常心」とは大きく異なっているように見える。

 しかしながら、そのスポーツの世界のプロフェッショナルである岡田監督が「平常心是道」という言葉を大切にしていることは、とても面白い。満足の基礎を他者と自己の比較ではなく自身に求めつつ、目標達成のためのツールとしてライバルと自分の差異を分析するという、二枚腰の精神構造が必要なのだと感じる。