kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



朝日新聞デジタルの先

朝日新聞社が有料ニュースサイト朝日新聞デジタルを開始した。
http://digital.asahi.com/

紙の朝日新聞をWebでも見られるようにしたもので、無料ニュースサイトがたくさんある中で、有料会員を集められるか興味のあるところである。朝日新聞社側は、記者がニュースに軽重をつけていることと、視聴端末(PC or スマートフォン or ,,,)毎に最適化した画面ディスプレイを提供することが朝日新聞デジタルの強みだと主張している。この強みが3800円/月の価格に釣り合うかどうか、ユーザの反応待ちという状態である。

さて、朝日新聞のような一般紙が電子新聞を有料で出す理由は、紙の新聞の収入が減り続けているためである。では、電子新聞の有料化が実現すれば新聞社は生き残るかといえば、どうもそうもいかない気がする。

新聞が作られる工程を乱暴に整理すると、取材・原稿作成・レイアウト作り・印刷・配達となる。インターネットで配信する場合、印刷・配達の部分は価値を持たなくなっている。レイアウト作りは、デザインだけではなく記事の軽重の判断を伴う作業であるが、記事の軽重をつける作業は、Facebookの「いいね」ボタンの成功で分かるように、記者にやらすよりもユーザにやらせた方がうまくいく作業である。また、取材に関しては、新聞社の記者が独自に取材したというよりも、警察や政府や企業の発表を聞きに行っているだけでなので、誰にでも手に入る情報を使っている。では、原稿作成に3800円/月の価値があるかと言えば、例えば、社説程度の文章であればネットでいくらでも無料にある。

このように、有料電子新聞が商売として成立するのは大変難しいと思う。でもそれだけではない、上のような分析をすると、取材の部分に新聞の価値があることに気付く。他の誰も知らない情報をいち早く得ることこそが、無料ニュースサイトとの差別化になり得る。一方、他の新聞社も同じ事を考えるとすれば、取材をするエージェントが立ち上がり、各新聞社に売ることが予想できる。つまり、垂直統合から水平分業への業態変化が起こるのだ。水平分業されたとき、取材という小さな仕事に朝日新聞・読売新聞・毎日新聞の3つも必要だろうか?きっとM&Aによる統合が起こるに違いない。例えば朝日新聞社を吸収合併するのは読売新聞ではなくYahoo/Softbankかもしれない。新聞の電子化というのは、オールドメディア vs ニューメディアの戦いにおけるオールドメディアの変化なのだから。

追記

2011年7月1日

朝日新聞有料電子版が残念なたったひとつの理由」というブログ記事がありました。著者の意見は私と同じで、情報の内容で差別化できていないので、朝日新聞デジタルの先行きは暗いというものです。