kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



GR Digitalは玄人の道具

リコーからGR Digitalの第4世代機であるGR Digital IVが10月中旬に発売される。私は、先日行われたGR Digital IV先行体験イベントでじっくりこれを試すことができましたGR Digital IIIは完成度の高いカメラだと思っていましたが、GR Digital IVは奇をてらうことない正常進化で完成度をさらに一段あげていました。せっかくGR Digital IVを触ったので、思うことを書いてみようと思います。

GR Digital IVは高価です。価格コムでの最安値は現在71000円です。EOS Kiss X5ダブルズームキットが68000円、Nikon 1 J1ズームレンズキットが62800ですから、カメラの数値スペックで見ると、べらぼうに高いと言ってよいと思います。一方で、モノの価値は数値スペックではない部分に宿る場合があります*1。例えば、コップは100円均一に行けば100円で手に入れることができます。しかし、バカラのコップのように10000円以上するものも存在します。たかがコップ、されどコップです。バカラの美しさに9900円以上の価値を見出す人もいるという事実を忘れてはいけません。

GR Digital IVは良いカメラです。しかし、この良さを伝えるのが難しいカメラでもあります。それは、数値スペック以外のところに良さがあるためです。他のカメラと比べて、画素数が多いわけでもないし、高感度特性が良いわけでもありません。顔認識機能やアートフィルタのような流行りの機能もありません。GR Digitalが追い求めているのは、(携帯性という制約条件の下での)写りの良さです。撮り手の操作に応え、撮り手の意図を反映した写真を高品質に撮る道具をGR Digitalは目指しています。

写りの品質を追求するGR Digitalは、とても売りにくい商品です。新商品の商品企画に参加したことのある方は分かると思いますが、新商品では分かりやすい新機能を有することが重要視されます。そうでないと、店で売り子が客に説明できず、売れないのです。また、雑誌やWebのライターが記事を書きやすいように、新機能を用意するものです。画素数を上げていた時代は簡単でした。ライターは「画素数がアップ、高精細な写り」と書いておけばよいのですから。例えば、IXY 51Sの記事を見ると、「世界最薄」というのが分かりやすい新機能として用意されていることが分かります。ライタは、カメラのことが全く分からなくても、この記事を書けます。
http://camera.itmedia.co.jp/dc/articles/1109/16/news063.html

12倍ズーム「世界最薄」&タッチパネル、ブレ補正も強力な「IXY 51S」
キヤノンより12倍ズームを搭載した「クラス最薄」のズームデジカメ「IXY 51S」が発売される。タッチパネルで操作性を高めたほか、6つのブレ補正機能をカメラが判断・使い分ける「マルチシーンIS」も搭載する。

 これに対してGR Digital IVの進化はすごく地味だ。AFが速くなった、液晶が綺麗になった、画質が良くなった、という感じで地味この上ない。ある程度以上のスキルのある撮り手が触るとGR Digital IVの進化は分かるのだが、それを分かるように記事が書けるスキルのあるライターは殆んどいないと想像する。リコーさんは困ってるだろうなっと思う。ユーザに良さを伝えることのできるライターが殆んどいないのだから。

 リコーがGR Digitalの良さを伝えるための活動の一つは、GRブログを運営です。ブログを通じて社員がエバンジェリストとして活動している様子は、これまた地道です。しかし私の見るところ、GRブログが一番有力な広告チャネルになっていると思います。このチャネルを維持にGR Digitalファームアップ投入は役立っているんだと感じます。

まとめ

 物の価値は数値スペックでは決められない。でも、数値スペックで表せない価値は、ユーザにアピールしずらい。その価値を表現できるライターはごく僅かしかいない。(メーカの言うとおりに記事を書くライターがほとんどである。)
 GR Digital に興味のある人は、まずは触って、自分の頭でその価値を判断しよう。メディアに評価されることを目指したカメラではないからね。

*1:デジタル物は格別に数値スペック偏重で評価されています。