仕事に必要なスキルや能力を身につけるために、仕事を通じて学ぶOJT(On the Job Training)が広く用いられている。学校での講義で学ぶことに慣れている学生の中にはOJTでの苦手な人がいるようで、会社に入って伸び悩む人の大半はOJTが苦手なようである。このOJTでの学び方にコツがあるのだが、案外語られていないのでまとめてみることにする。
まず認識しておくことは、OJTで学びの多い人と少ない人がいるということ、また試験があるわけではないのでOJTでの各自の学べた量が分かりづらいということである。他人と同じ作業をしても同じ量を学んだとは限らないのだ。
そもそも、なぜOJTが必要なのかと言えば、スキルや能力というのは突きつめれば if-thenルールなのだが、それがあまりに複雑なルールであるため文章の形にできないためである。いわゆる身体性を通じてのみ獲得できる暗黙知を得るにはOJT以外の方法がないのだ。もちろん初歩的なスキルは、例えば重要度に応じて仕事の順序を決めるとかTODOリストを定期的に見直すとか、本やネット記事で学ぶことができる。しかし、そんなものは身につけて当たり前のスキルであり、それだけでは全く足りない。
OJTでの学び量を上げるには、まず学習モデルを理解する必要がある。学習モデルとは、
- 実際に何かを行うことで、具体的な経験を得る
- 得られた経験を意識化する
- 意識化した経験をルール化する
- 得られたルールを積極的に試す
このモデルの各ステップにおいて、量と精度を上げていくことが大切である。すなわち、ステップ1で具体的な経験量を上げるには、なるべく多くのことを能動的に行うことが大切である。ステップ2では、自分の体験を振り返り、それぞれ良い点・悪い点、そうなった理由などを意識に浮かべ、ほかに選択肢はなかったかを心の中でシミュレーションする。このシミュレーションの精度が学びの量につながる。ステップ3では、個別の事項からより広い事項に適用できるよう自分なりに抽象化・一般化してルール化する。ステップ4ではステップ3で得たルールを実際に試し、その結果をステップ1にフィードバックする。このステップ1からステップ4を多く回すほど、多くの学びが得られる。
こうして学んだスキルや能力は、あなただけのものであり他社には真似できないものである。そうして、このようなスキルや能力があなたをオンリーワンな存在としていくのだ。