「失敗の本質」の内容を一言で言えば、“成功は失敗のもと”である。これは、成功の要因分析が難しいことが原因である。何故成功の要因分析が難しいのか考えてみる。
元プロ野球監督Wikipedia:野村克也氏が、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」と言いましたが、これは負け試合には必ず原因があるが、勝ち試合には特に原因がない時がある、ということである。相手が勝手に崩れて試合に勝った時など、その勝ちの要因分析をしても意味のある結果は出てきません。このように成功の要因分析を行っても意味のある結果を出るとは限らないことが、成功の要因分析を難しくしている。
次に、組織の問題を考える。チームのプロジェクトが成功したとき、そのプロジェクトを成功させるために様々な取り組みがなされることが一般的である。勝てば官軍という言葉があるとおり、成功プロジェクトにおいてはプロジェクトリーダが正当化されるため、プロジェクトの取り組みの良し悪しが批判的に分析されることがない。ある取り組みが悪手であったとしても、たまたまうまくいった場合にはその取り組みは正当化され、それに含まれる潜在的な危険が認識されることはない。そして、そのプロジェクトリーダが次のプロジェクトに取り組んだ際には、(かつては成功した)潜在的に危険な取り組み・戦略を取ることになり、かつての成功実績のため他者から批判的なアドバイスを受けることはない。
最後に、書店でみかける「成功者だけがやっている○○」のような第3者による成功者分析では、分析対象が成功者だけであるという時点で標本が偏っている。偏った標本を分析しても意味のないことは明らかである。
まとめ
PDCAサイクルを回すというのは、よりよいプロセスを作る基本である。しかしながら成功した場合にはC(Check)のフェーズで意味のある分析を行うことは難しく、PDCAサイクルがうまく機能しない可能性が大きい。
日本がかつては“ものづくり”で世界に君臨したが、いまもその“ものづくり”が通用するのか、成功は失敗のもとになっていないか、考えてみたい。
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