日本には「けしからん罪」があると書いたのは、池上彰氏である(伝える力)。日本人は成功した人に対して、ずるいと感じがちである。これが「けしからん罪」である。この「けしからん罪」がスケープゴート(身代わり)と組み合わさり、思考停止になりやすいのが日本の特徴である。
wikipedia:スケープゴートとは、
不満や憎悪、責任を直接的原因となるもの及び人に向けるのではなく、他の対象に転嫁することで、それらの解消や収拾を図るといった場合のその不満、憎悪、責任を転嫁された対象を指す。
であり、簡単には、何かの身代わりのことである。
「けしからん罪」とスケープゴートのコンボは、ものすごく強力に世論を簡単に操作できる。
例えば、福島原発の事故における問題では、東京電力社員の給料の高さが「けしからん罪」となり、原発事故に対する批判が東京電力に向かった。そもそも国のエネルギー政策として二酸化炭素削減のため原発を推進したのは政府であることを思えば、東京電力は政府のスケープゴートになったと言える。
また、派遣切り問題に関しても同様の構図が見て取れる。そもそも、労働力の流動化(ある会社から別の会社への労働者の移動)を容易にするため、派遣という働き方を推進したのは政府である。その当初は“自分らしい働き方(ができる派遣はかっこいい)”と広告も多く打たれていた*1。時代が流れ不景気な世の中になり、派遣の雇用は激減した。そのとき、大企業に「けしからん罪」が適用され、派遣問題のスケープゴートになった。
「けしからん罪」とスケープゴートのコンボの強力な理由は、「けしからん罪」は大衆うけするためマスコミが大いに煽ることだ。マスコミは、問題の原因がスケープゴートにあるかのように決めつけ、視聴者がそれを信じ込む。こうして社会が思考停止に陥り、本当の原因を探すことをやめる。この思考停止が「けしからん罪」とスケープゴートのコンボの怖いところだ。
思考停止にならない方法は簡単である。「けしからん罪」とスケープゴートのコンボの存在を知っていれば、なにかあったときにこれは例のコンボだと気づくことがきでる。気づけさえすれば、スケープゴートの背後にある本当の原因をみつけることはたやすい。