「伝え方が9割」(佐々木圭一)は、相手のことを想像する力を育む本である。
誰かにお願いをするとき、次の3つのステップで考えるというのは常識。
ステップ1 自分の頭の中をそのままコトバにしない
ステップ2 相手の頭の中を想像する
ステップ3 相手のメリットと一致するお願いをつくる
そんな常識的なことが中々できない。それは、ステップ2の相手の頭の中を想像することが非常に難しいため、ステップ3の相手のメリットと一致するお願いを作れないからだ。この本が他の説得術の本と比べ優れているのは、この相手の頭の中を想像する手法を解説していることだ。
相手の頭の中を想像せよ、と言われてもどうしていいのか分からないだろう。そこで、次の切り口から相手の頭の中を想像することを教えている。
- 切り口1「相手の好きなこと」
- 切り口2「嫌いなこと回避」
- 切り口3「選択の自由」(2つ以上の相手の好きなことを並べることで、相手が選べるようにする。選択の自由があること自体が、相手にとってのメリット)
- 切り口4「認められたい欲」(「残業お願いできる?」→あなたのメリットでしかない。「きみの企画書が刺さるんだよ。お願いできない?」→認めているコトバから始まっていることで、面倒くさいこともやってみようとする気持ちが生まれる。)
- 切り口5「あなた限定」(「自治会のミーティングに来てください」→あなたのメリットでしかない。「他の人が来なくても、斉藤さんだけは来てほしいんです」→その人の名前を使い「私こそが必要と思ってくれている」と思わせ、心を満たすことで相手のメリットに変える。)
- 切り口6「チームワーク化」 (お願いを相手任せにするのではなく、「いっしょにやりましょう」とあなたと相手をチームワーク化する)
- 切り口7「感謝」(「領収書をおとしてください」→あなたのメリットでしかない。「いつもありがとうございます。領収書お願いできますか」→感謝から入る)
強い言葉を作る方法も教えている。
- サプライズ → そうだ京都に行こう
- ギャップ → 事件は会議室で起きているんじゃない。私の勝利ではない。
- 体の反応 → のどがカラカラ
- リピート → さいたさいた
- クライマックス → これだけは言いたかった。
これらの一つ一つはどこかで見たことがあるものだが、これをチェックリストとしてリスト化している人が何人いるだろうか。このリストを記していることが本書の優れている点である。