世界的な自動車メーカ本田技研工業の創始者である本田宗一郎は、小学校しか出ていない。技術者としてだけでなく経営者としても卓越している。そんな本田総一郎が好き放題書いているのが「俺の考え」である。
これを読むと、一本筋の通った人なんだと感じる。
ブームというのはすでに需要があるところに、誰かが作る。そういう意味だと思う。私たちが合やる仕事はそこに需要があるから作るのではない。
私たちが需要を作り出したのである。これが企業というものでなくてはならんと思う。
そこで経営者に一番大事なことは、もちろん企業を大事にしなければいけないけれども、それ以上に大事なことは、そこに働きに来る人たちは、それぞれ自分の生活をエンジョイするための一つの手段としてきているのだ、という意識に徹することである。滅私奉公のようなつもりで来ているのと、自分の生活をエンジョイするために真剣に働く人とは違うと思う。
(中略)
要するに会社のためにということじゃなくって、個人の我々がよりよい生活をするために働きに来る場所が一つの企業としてあるべきだ。
現在は技術革新の時代だとかで、技術が最高のもののように言われているが、私たちの会社が一番大事にしているのは技術ではない。技術よりもまず第一に大事にしなければンらないのは、人間の思想だと思う。金とか技術とかいう物は、あくまでも人間に奉仕する一つの手段なのである。
(中略)
あくまでも人間様が買ってくれる品物を作り出すこと、より人間に奉仕する品物をいかにつくるかが我々の課題であるべきだ。
竹にはフシがある。そのフシがあるからこそ、丈は雪にも負けない強さを持つのだ。同じように、企業にもフシがある。儲かっているときは、スムーズに伸びていくが、儲からん時が一つのフシになる。このフシの時期が大切なのだ。私はフシのない企業は、どうも不安で見ていられないような気がする。
ベンチャ企業が最初はグングン儲かっていっても結局長続きしないのは、フシを作れないからかもしれない。