夏目漱石「こころ」を久しぶりに読んだ。
とても良い。昔読んだときは良さが分からなかったのが、不思議だ。
何よりも文章が美しい。”一人で一人をみつめた”という表現が好きだ。小説の中に美しい表現がちりばめられている。すごいことだ。
「こころ」は先生が主人公の話だ。前半は「私」という第三者の視点で「先生」を描いて行く、すなわち、「先生」の外から見た様子を描いている。同時に「私」の学生生活の様子や、帰省した際の田舎の様子を描いて後半に備えている。後半は、「先生」の手紙を読むという形式を取ることにより、一人称で「先生」が描かれて行く。そして一人称で描かれるストーリの中では、「先生」の学生時代や帰省した時の田舎の話が繰り広げられる。
プロットは至極単純である。信頼していた叔父に裏切られた「先生」は他人を信じられないものという考えに取り付かれる。その一方で、自分だけは誠実なまともな人間だと考える。それなのに、「先生」も友人を裏切ることになり、何よりも自分自身が信用に足らないことを思い知らされ絶望する。
この単純なプロットを素晴らしい構成と美しい文章が飾っている。
名作だと思う。
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