ジブリ映画「風立ちぬ」ですっかり有名になった作家堀辰雄。映画「風立ちぬ」は、堀辰雄の小説「風立ちぬ」を下敷きに実在の人物堀越二郎の人生を描いている。この映画の中でヒロインの名前は菜穂子であるが、小説「風立ちぬ」のヒロインは節子である。菜穂子という名前は、堀辰雄の別の小説「菜穂子」から来ていることは、容易に想像がつく。
小説「菜穂子」では、主人公菜穂子は母から逃げて結婚し、結婚先の家庭から逃げてサナトリウムに入る。彼女は、何から逃げているのか。「避難所」というキーワードが頻出する。菜穂子の夫である圭介は、菜穂子のもたらす不安定さに気付くが、母との日常に逃避して行く。菜穂子の幼なじみ明は、本当に成すべきことを探して当てのない旅をするが、これも現実からの逃避と捉えることができよう。
小説「菜穂子」のなかで、人々がなにかから逃避しようとしつつ、危うい安定に安住する。ジブリがなぜ、「菜穂子」という名前を映画のヒロインに与えたのか、不可解である。
- 作者: 堀辰雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/01/16
- メディア: 文庫
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