kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



スキルとアートとビジネス

 「ストーリーとしての競争戦略」を今読んでいる。数あるビジネス書とは異なる切り口で考察がされており、この切り口の違いを楽しむことが大切に思う。
 ビジネス書は、著者が米国人であるものや、米国の考え方を日本人が書き直したものが多い。SWOT分析などのフレームワークを用いた分析手法がその典型である。米国流の考え方は、当然その文化に強く影響を受けている。その特徴は、(1)機能分割型であること、(2)Skill型であることの2点である。
 米国の会社は、営業・企画・開発・生産などのように組織が機能に分かれている。そして、働く人々もその組織の機能を強く意識している。例えば、開発部の人間は、企画部の作成した企画を実現するのが仕事だと考えており、そこに顧客の想定は無い。あくまで企画部のリクエスト通りのものをどう具体化するかを追求するのが開発部の仕事だ。このように利益を上げるという会社の機能を、ブレークダウンして営業・企画・開発・生産と小さな機能に分割し、小機能のそれぞれに役割を与える。
 この考え方の長所は、分かりやすさである。シンプルであるため、誰にでも分かる。様々な価値観をもった多様な人種の米国では、これくらいのシンプルさが必要なのだろう。また、働く人々に要求するのはアート技能ではなく、スキル技能である。アート技能は経営者(CEO)が一手に担い、その下で従業員がスキルを提供するという形式である。ここで、スキルとは教科書と練習で大抵の人が習得できる技能のことである。例えば、市場調査結果を分析する、仕様通りのソフトウエアを開発する、こういったものはスキルである。一方、アートとは、習得方法のない技能のことであり、例えば、トップ営業マンと平凡な営業マンの違いはアート技能に起因する。
 米国のビジネス書は、スキルを身につける方法を書いている。ところが、日本人はアート技能を重要と考えるので、ビジネス書を読んでもアートが身に付かないことに不安になり、何冊もビジネス書を買ってしまう人がでてくるように思う。
 本を読むときには、その本の背景にある社会哲学にも踏み込んで考えるのも大切である。