kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



いやな気分よ、さようなら

 wikipedia:うつ病を読んでいると、認知行動療法と同等の効果を上げる治療法として、読書療法があるという。

読書療法

プラセボ効果を研究するハル大学のアービング・カーシュ博士は、認知行動療法(CBT)を受けなくても、そのメリットの多くを得ることができる方法として読書療法を薦めており、臨床試験で良い結果が得られたものの中から2冊を紹介している。『うつのセルフ・コントロール』(熊谷久代訳、創元社、1993年)、『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(デビッド・D・バーンズ、星和書店、2004年)はいずれも認知行動テクニックに関する本である。『いやな気分よ、さようなら』の臨床試験では、短期的には、標準的なCBTを実際に受けた人のほうが改善の度合いが高かったが、3ヶ月後には同等になった。3年間の追跡調査から効果が持続的であることも示唆されている。

面白そうなので、「いやな気分よ、さようならー自分で学ぶ「抑うつ」克服法」を読んでみた。

 これは、認知行動テクニックに関する本である。認知行動テクニックについては、他の様々な本で紹介されており、私も知識として知っていた。これは、簡単に言えば、自分の中のネガティブな考えについて、歪みが無いかを検証する方法である。
 本書を読んで3つのことに驚いた。
 一つ目は、自分の中のネガティブな考えに気づくことが非常に難しいこと。なんとなく嫌な感情が湧きあがったとき、その感情に気づくのがまず難しい。そして、その感情が何故湧き起っているのか、そのもとになる「考え」(自動思考)に気づくことはかなり難しい。自分の感情・考えに鈍感なものだと、再認識する。自分の感情と、その背景にある考えに気づくためには、多少の練習が必要である。
 二つ目は、ネガティブな考えの検証は、非常に詳細に行うものだという点である。本書では、この検証について例を豊富に載せており、これが参考になる。一方で、他の本やWeb記事では検証の例に乏しく、いざ実行しようとしてもできない。例えば、Naverの「認知行動療法ってなに?」では以下の例が挙げられている。しかし、これの考えを検証しようとしても、どうしてよ

「口下手なので人から嫌われてしまう。話すのが辛い…」

 試しに、本書を参考にこれを検証してみよう。

  • 口下手とはなにか? あなたは口下手なのか? 検証ができる。同僚やクラスメイトの中で一番話し上手な人と自分を比べてはいないだろうか? 一番上手な人以外は、「口下手」と思っているのではないか? あなたは苦手な人とは話ができないかもしれないが、話ができる人(例えば兄弟姉妹)はいるのではないか? だとすれば、あなたは「口下手」ではないかもしれない。「口下手」を正確に定義し、その定義に当てはまる人間が世界に何人くらいいるかを考え、さらにその定義に従ってあなたが「口下手」かどうかを検証する。
  • 口下手なので人から嫌われる、とは本当だろうか?検証ができる。なぜ口下手だと人から嫌われるのだろうか?言葉少ないが信頼されている人はいるのではないか? すべての人が嫌うのだろうか? 言葉少ない人を好む人はいるのではなないだろうか? このように何故口下手だと嫌われるのか?誰から嫌われるのか?どれくらい嫌われるのか(人格を否定されるほど嫌われるのか?)?それは全員か?と検証する。
  • 人から嫌われたとして、それがどうなのか検証することができる。確かに嫌われるよりも好かれる方が心地よい。しかし、相手にも好みがある以上は、嫌われたり好かれたりするのは仕方ない。全員に好かれる人などいない。

 三つ目は、上のように検証すると、自動思考には確かに根拠がないことに気づくこと。こんなに根拠がない自動思考に基づいて、感情を決めているとすれば、自分の感情なんてあてにはならないことになる。

まとめ

 自分の自動思考に自分で気付くことは、実は非常に難しい。だからこそ、心理療法士のカウンセリングを受けることが必要だと言われている。しかし、きっかけがあれば、自分だけで気づくことができる。
 『いやな気分よ、さようならー自分で学ぶ「抑うつ」克服法』には、自動思考の検証事例が豊富に記載されている。この事例が、非常に役に立つ。事例を通して、自分の自動思考を客観的に眺めることができる。また、自動思考の検証は、非常に詳細に行うものである。この詳細さの感覚を、事例を通して身につけることができる。
 ネガティブな感情にとらわれたとき、例えば、上司や客先に嫌な報告をすることを何度も思い出してしまうときや、誰かに嫌なことを言われたことを何度も思い出してしまうとき、そんなことがあるならば、この本を読むと、「ははぁなるほどね、本に書いてあった通りのこういうことか」と、心が軽くなる。
 なんだか元気が出ないときに読むと良い本である。

おまけ

 この本と一緒に「反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」」を読むと、「心のクセ」がいかに手ごわいかが分かる。
 「反応しない練習」の中の「妄想」というキーワードに注目すると、これが「心のクセ」であることに気づく、私にとっては「妄想」の方がしっくりくるキーワードでした。

おまけ2

具体的な心のクセについて書く。
私は失敗するのが怖い。難しい仕事に取り組む時、決まってドキドキする。
この本を読んで、次のように自問自答してみた(実際に紙に書き下した。これ大切)。

  • 「私は失敗が怖いか?」 「怖い」
  • 「怖いというと、失敗するとどうおなると思っているのか? 仕事を失うのか?」「No 多分それは無い」
  • 「では、どうなるのか? 上司から嫌味を言われるのか?」「Yes, ブツブツ言われるかだろう」
  • 「ブツブツ言われると何か困るのか?」「気分が凹む」
  • 「気分が凹む以外になにかあるか」「負けた気になる」
  • 「誰に負けたことになるのか?」「分からない」
  • 「負けると何か困るのか?」「気分がヘコむ」

このように、失敗が怖いのは何が怖いかと書き下していくと、「気分が凹む」以外の理由が見つかりません。どうやら失敗を怖がるけれども、具体的にはなぜ失敗が怖いのか理由はないのです。つまり、失敗をイメージすると怖いに飛びつくのが、私の心のクセであることがわかりました。


おまけ3

 本書は、須藤元気さんがお勧めの本「四つの約束」と類似点が非常に多い。「四つの約束」でいう”飼いならし”によって、知らず知らずに身につけているのが”認知の歪”と言える。
 「四つの約束」では、”正しい言葉を使う”ことを勧めている。この正しい言葉とは、本書でいう”認知の歪”のない言葉である。例えば、”次の試合は勝たねばならない”というのは、歪んでいる。結果はコントロールできないため、”次の試合はがんばる”というのが正しい。
 また、「四つの約束」の”個人的なこととして考えないこと”というのは、例えば他者から批判されたとき、その批判が正しいと思いこみ、批判される自分は価値が無いのだと、考えることを止めよと言っている。また、他人と口論になったときなど、相手に理解してもらえなかったことが悔しく思うことがあるだろう。これは相手が理解しなかったことを自分と関連づけるなといっている。こう考えると、”個人的なこととして考えない”というのは、本書における他者の承認を求め、承認の有無で自分の価値を判断するクセを認知のゆがみとしているのと同じである。
 ”思い込みをしない”も、本書が自動思考をやめよと言っているのと同じである。
 ”ベストを尽くす”というのも、本書では自尊心を育むのは他人からの評価やこれまで積み上げた業績ではなく、今の行いであると言っているのと同じである。
 こういった類似点をみつけると、認知のゆがみとは”飼いならしのプロセス”の結果なんだと一層思う。
 認知のゆがみを直すためには、繰り返しこういった本を読みその考え方を自分の中に染み渡らせる必要がある。「疲れている人」は購入し、繰り返し読むことを勧める。

関連エントリ


〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法

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いやな気分よ、さようなら コンパクト版

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四つの約束

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