kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



「コーランを知っていますか」でコーランを知る

 イスラムと聞いてどう思うだろうか? 怖いイメージ? アルカイダタリバンイスラム国とテロ活動をするイメージ以外は、よく知らないというのが実際のところではないだろうか。
 イスラムの国といえば、サウジアラビアなどの産油国が多く、日本経済との関わり合いも強い。また、イスラム教徒は、世界で16億人いると言われている*1。これはキリスト教に次いで世界で2番目に多い宗教だ。世界的に影響力のあるイスラム教について知るには、Wikipediaは少々堅苦しい。もっと気楽に読めるものと探していたら、本書をみつけた。「コーランを知っていますか?」(阿刀田高)は、エンターテナーによるコーランの解説書だ。とにかく楽しくコーランの中身がわかる。

実はキリスト教と仲良し、ユダヤ教とも仲良し

 キリスト教の聖書と言えば、旧約聖書新約聖書の二つがあるのはよく知られている。ユダヤ教とは旧約聖書を信じている宗教である。イエスキリストの出現により神と再び約束を交わしたと考えているのがキリスト教。その約束が記されているのが新約聖書である。
 神様が、さらに預言者を遣わして、民衆を救おうとしたと考えるのが、イスラム教である。その預言者を通じて神が発したお告げを記したのがコーランである。

”アラーは言った。「アーダムよ、あなたとあなたの妻とはこの園に住み、
どこでも望むところで、思う存分食べなさい。
だが、この木に近付いてはならない。不義を働くものとなるであろうから」
 ところが悪魔は、二人を躓かせ、彼らが置かれていた幸福な場所から離れさせた。
アラーは、「あなたがたは落ちて行け。あなたがたは、互いに敵である。
地上には、あなたがたのために住まいと、仮初めの生活の設計があろう」と言った。
(中略)”

とあって、キリスト教に関心の薄い人でも、 
ーー これ、聞いたことあるな。そうアダムとイブ。蛇にそそのかされてりんごのみを食べて、そのあとイチジクの葉っぱであそこを隠したりするんだーー
と気づくにちがいない。

 こんな風に、キリスト教で語られている話が、コーランの中で出てくる。
 

 またアラーがあなたがたのために海を分けて、あなたがたを救い、
あなたがたが見ている前で、フィルアウンの一族を溺れさせた時のことを思い起こせ。
 また、アラーが四十夜にわたり、ムーサート約束を結んだ時のこと。
(中略)
 
 フィルアウンがエジプトのファらを、ムーサーがモーゼと分かれば、これも思い浮かぶことがあるはずだ。
 (中略)一読して「旧約聖書でしょ」と、出店まで指摘する人も多いだろう。

 こんな風に、旧約聖書で出てくる話も、コーランの中で出てくる。
 こうやってみていくと、アラーは、ずっと人類を見ていて モーゼやキリストといった預言者を遣わし、とうとう真打としてムハンマドを遣わしたという流れが、腑に落ちる。

イスラム教は、細かいとこまで決まっている

 日本人の宗教の意識ってはっきりしないようだけど、仏教徒だと、盆に先祖の供養をすることくらいが宗教で決まっていることというイメージだろう。はっきりいって大した決まりがないというのが宗教のイメージではないだろうか。
 一方、イスラム教というは、かなり細かいところまで決まっている。

 コーランの記述は、なにに似ているのだろうか。歴史ではない。伝記でもない。もちろん論文ではない。テーマを掲げ、推論をして結論を導く、という叙述ではない。
 あえて言えば ……率直な感想を述べれば、
ーー親父の説教に似ているなぁーー

<婦人>の章からもう少し、気がかりな部分を引用して示せば、
 
”妻に不貞の疑いが生じた場合は、4人の証人を建てなさい。4人が不貞を証言したならば、彼女を家の中に監禁し、死が彼女を連れ去るか、あるいはアラーがなにか特別な道を彼女に与えるか、そのときまでそのままにしておくがよい。”

このように、証人の人数まで4人とコーランで定められている。細かいのである。
 

”利子を貪るものは審判の日に悪魔に打たれ、ろくな立ちあがり方もできない。彼らは「商売で利益を上げるのも利子を取るのとおんなしこと」とうそぶくが、それはちがう。アラーは商売は許すけれど、利子を取ることは禁じている。”

つまり、金貸し業はイスラム教では禁止されているのだ。これについて著者の阿刀田高のコメントが面白い。

 金貸し業は利子を取ることで成立する。これが大原則だ。そして貧富の差というものは、根源的にここから発生する。お金がお金を生むシステム。あればあるほど増えていく。(中略)
 マホメットの周辺では貧富の差が顕著であったろう。ユダヤ人社会の富がアラブの貧しい人々を圧迫する。その根底に金利を保証するシステムがあった。

格差社会というのは、お金持ちがよりお金持ちになる社会で、その根本は金貸しによる利子である。だから、利子を取ることをアラーは禁止したという解説がされており、面白い。

まとめ

 本書を読むと、イスラム教のことを楽しくわかることができる。
 イスラム教について興味はあるけど、小難しい本は読む気がしないという人は、読んでみてはどうだろうか。

コーランを知っていますか (新潮文庫)

コーランを知っていますか (新潮文庫)