kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



”ありのまま”の自分に気づく

最初に、『「絶対に落ち込まない」その理由は?明石家さんまの悩みが吹っ飛ぶ名言21選』(Spotlight) より引用します。

俺は、絶対落ち込まないのよ。落ち込む人っていうのは、自分のこと過大評価しすぎやねん。過大評価しているからうまくいかなくて落ち込むのよ。人間なんて、今日できたこと・やったことがすべてやねん

本書を読んで思い浮かんだのは、上の明石屋さんまさんの言葉でした。
 人というのは、自分が一番大切である。それでいて、自分で自分を正当化できない。この矛盾を抱える存在である。このように著者は言う。この矛盾から人はありのままに生きることができず、苦しみ(辛いだけでなく不満足を含む大きなネガティブな感情)を感じる。
 自分のことが大切だから、自分を過大評価する。自分だけで自分のことを正当化できないから、他人と比べて自分の方が上だとか考えて自分ができると思いたがる。うまくいかないと、自分の評価を下げないといけなくなって落ち込む。
 著者は、この心の動きを丁寧に解説している。本書は4章構成である、第一章「承認について」で、SNSをはじめとして「自分」、「自分」という機会が多い。それは何故か。自分で自分を正当化できないので、他人に「いいね」と言ってもらおうとする。
 次の章の「孤独について」では、寂しいというのは一人でいることが原因ではなくて、他人に承認されないことが原因である。話の通じない人といると、一人でいるより寂しい気持ちになる。それは承認がもらえないせいだ。
 さらに「渇愛について」で、人は自分の価値観を通して世界を見ている。例えば、

「ねぇねぇ、かわいい服があるけど、これどう?」という際に、その服に対して「可愛い」という属性がくっついているかのように、そのときは半ば思っているでしょう。
 けれども、その「可愛い」というのは、その服に、服そのものに宿っている属性なのではなくて、(略)

 自分がすごく気に食わない別れ方をした相手に対して、男女の中であれ、喧嘩別れした友人であれ、「あなたなんか他の誰ともうまくいくはずがない」という「捨て台詞」を吐いたりしたときはありませんか?
(中略)
単に自分にとって「あなたが好ましくない」だけじゃなくて、「あなたのように好ましくない、と私にとって見える人は、他のすべての人も好ましくない、と思うべきだし、そうするに違いない」とばかりに、自分の考えがすべての人に当てはまるかのように考えてしまったりしているんですね。

 このように自分の色眼鏡で実世界を歪めて見ている。でも、実世界はその見方とは関係なく動いて、そのズレに苦しむを感じる。
 最後の「ありのまま」では、他者への依存を減らして楽に生きるための練習方法を記している。苦しみや、悲しみに 気づき、その感情をただ抱きしめる。正当化するわけでもなく、大丈夫と強がるわけでもなく、ただ抱きしめる。こうして、実世界と認識の差を縮めることを、著者は勧めている。

感想

 仏教思想に従って承認を求めることのつらさを分析し、それが渇愛とよぶ自己愛に根差していることを、本書では述べている。
 読み手に取ってその考え方が腑に落ちるには、多くの事例を知ることが大切だろう。本書はそのための事例も多く含んでいる。
 気持ちが辛くなったときに、繰り返し読みたい本である。そうして繰り返し読むことで「ありのまま」とは何か心に染み入らせていく本である。