kotaの雑記帳

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小説「イマジン?」(有川浩)の感想(レビュー):想像力を働かせながら、常に動き、声も出す

 有川浩の「イマジン?」は、夢と現実の狭間で葛藤しながらも成長していく主人公・良井の物語です。

 

 主人公の良井良介は、映像制作に情熱を注ぐ27歳のフリーターです。彼は新宿歌舞伎町でキャバクラのチラシを配っていたところ、先輩の佐々賢治に誘われてドラマ撮影現場の制作バイトに参加します。この経験を通じて、良井は自分の夢を追いかける決意を固めます。

 佐々賢治は、良井を映像制作の現場に引き込む重要な人物で、彼の基本的な立ち居振る舞いを教える役割を担います。また、制作会社「殿浦イマジン」の社長である殿浦は、良井に影響を与える別のキーパーソンです。彼は良井に、現場がスムーズに動くように想像することの重要性を教えます。

 その他にも、経理を担当する今川、プロデューサー志望の亘理、そして助監督の幸など、映像制作会社で働く様々な人々が登場し、彼らの人間模様が物語に深みを与えています。これらのキャラクターたちは、映像業界で働くことの楽しさややりがい、そしてそこでの人間関係の大切さを描き出しています。

 

 上京し、映像制作の世界で生きることを夢見るも、現実は厳しく、新宿歌舞伎町でのビラ配りから物語は始まります。しかし、良井の物語は、単なる挫折の物語ではありません。彼は佐々という先輩の紹介で映画製作の現場に足を踏み入れ、そこでの経験を通じて、自分自身の価値と、夢に向かって進む力を見出していきます。

 良井の成長は、映像制作現場のリアルな描写と密接に結びついています。若者が声を出し、積極的に動くことが好感を呼ぶという現場の雰囲気は、日本の職場文化におけるコミュニケーションの重要性を反映しています。良井が社長から受けた「現場がスムーズに動くよう想像しろ」というアドバイスは、単に指示を待つのではなく、自ら考え行動することの大切さを教えています。これは、映像制作に限らず、あらゆる職場で求められる能力であり、読者にとっても大きな示唆を与えるものです。

 一方で、制作現場の雰囲気を重視することに対する違和感は、日本特有の「空気を読む」文化との対比から生じるものかもしれません。この点は、国際的な視野を持ち、異文化間のコミュニケーションの違いに興味を持つ読者にとって、さらなる探求の余地を提供します。良井の物語は、個人の成長だけでなく、文化的な枠組みを超えた普遍的なテーマにも触れており、多くの読者にとって共感を呼ぶでしょう。

「イマジン?」は、夢を追いかける若者のリアリティと理想のバランスを探る作品であり、読後には多くの思索を促します。読者は良井の経験を通じて、自分自身の立ち位置を考え、夢に向かって進むためのヒントを見つけることができるでしょう。そして、映像制作の現場だけでなく、あらゆる職場でのコミュニケーションの重要性を再認識するきっかけにもなります。有川浩は、この作品で、読者に想像力の重要性と、それを現実の行動に変える力を思い出させてくれます。