映画『ルックバック』を観ました。とても良い映画でした。その良さを言語にするのは難しいのですが、感想をここに記します。
原作は、アニメ化もされた『チェンソーマン』でお馴染みの藤本タツキの読み切り作品です。
『ルックバック』は、漫画を通じて結ばれた2人の少女(藤野と京本)の成長と友情、そして創作活動の喜びと苦悩を描いた作品です。藤野は周囲に褒められ育ち、自我がパンパンに肥大した性格として描かれ、京本は引きこもりで精神的に藤野に依存した自己肯定感の低い性格として描かれています。
小学4年生の藤野は、学級新聞で漫画を描き、周囲からの称賛を浴びていました。しかし、同学年で不登校の京本の絵の才能に触れ、自分の絵が「普通」であることに気づき、京本に負けまいと絵を描く練習を一心に始めます。しかし、京本ほど絵が上手くなれないことから、藤野は漫画を描くことを止めます。しかし、小学校卒業の日に京本から藤野の熱心なファンであることを告げられ、二人は一緒に漫画を描くことになりました。高校を卒業するころには、二人はプロの漫画家としてデビューするまでに成長しますが、二人の道は分かれます。藤野はプロの漫画家になり、京本は絵の勉強のため美大に行きます。ある日、京本は悲劇に見舞われ、藤野は苦悩しながらも前に進むことを決意します。
この中で、私が好きな点を挙げます。
- 藤野が帰り道を歩くシーン:京本にファンだと告げられた藤野が、帰り道を歩いている時に、思わず気持ちのままに動くシーンは素敵です。躍動感があり藤野の気持ちがより視覚的に伝わってきました。
- 京本が美大に行きたいと藤野に告げるシーン:映画の前半では、不登校であった京本は、精神的に藤野に依存しているように描かれていましたが、藤野に引きずられて漫画を描くことよりも、美大に行って絵を勉強したいという自分の意志を優先させるシーンでは、京本が精神的に独立していった成長が伝わってきました。逆に、藤野が京本に依存していたことを描いたシーンでもあります。
- 京本の丹前に”藤野歩"と書かれていたシーン:藤野のペンネームは”藤野キョウ”です。二人で漫画を描いていた高校時代、藤野は自分が漫画を描き、京本は背景を描くアシスタントであるかのように振舞っています。しかし、ペンネームに京本の”京”を入れていることが、このシーンで分かります。
まとめ
映画『ルックバック』を観た感想を書きました。英語の Look Backの意味は”振り返る”であることと、Backの意味は"背中"であることを念頭に見ると、映画の中の「おー 京本も私の背中みて成長するんだなー」というセリフ遊びも楽しめます。さらに言えば、京本は藤野の背中を見て漫画を描き、そんな青春時代を藤野は振り返る、ということでしょう。
漫画は静止画の連続で物語を語り、読者の想像力を刺激します。一方、アニメーションは動きと音を加えることで、よりダイナミックな視覚効果を与えます。この映画では、漫画が持つ独特の表現力と、アニメーションが生み出すリズム感と動きの美しさが、互いに補完しあいながら物語を紡ぎ出しています。特に上述の藤野が帰り道を歩くシーンは、間の撮り方や躍動感は、アニメならではの表現です。
補足:制作メンバーが凄い
後で調べたら、制作メンバーも凄い人たちです。
2021年に「少年ジャンプ+」にて公開されると、著名なクリエイター陣をはじめとした数多くの漫画ファンの間で話題を呼び、「このマンガがすごい!2022」オトコ編第1位にも輝いた本作。原作者である藤本タツキは、小学館漫画賞などを受賞し、TVアニメの盛り上がりや、映画化の発表も記憶に新しい「チェンソーマン」や「ファイアパンチ」などの代表作を持ち、世界中から支持を集める作家の一人である。
主人公の藤野役を演じるのは、ドラマ「不適切にもほどがある!」の純子役で人気を博した、河合優実。その演技力や類い稀な存在感が話題を集めている。もう一人の主人公である京本役は、映画『あつい胸騒ぎ』(23)『カムイのうた』(23)等では主演を務め、その目覚ましい活躍に拍車がかかる、吉田美月喜が担当。
そして、監督・脚本・キャラクターデザインを務めるのは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09)『借りぐらしのアリエッティ』(10)『風立ちぬ』(13)など、数多くの劇場大作に主要スタッフとして携わってきた、押山清高。その才能は、海外でも高く評価され、アヌシー国際アニメーション映画祭2019の日本アニメーション特集で若手クリエイター26人の一人として選出されている。
(映画ホームページより https://lookback-anime.com/)