kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



本『世界史劇場 オスマン帝国の滅亡と翻弄されるイスラーム世界』(神野正史著)の感想:補足が多くてとても面白い

 『世界史劇場 オスマン帝国の滅亡と翻弄されるイスラーム世界』(神野正史著)を読みました。補足が多く、それがとても面白かったので、その感想を記します。

(Microsoft Designer にて生成)

 神野正史氏の『世界史劇場』シリーズは、歴史の教科書がしばしば見過ごす背景や影響を掘り下げることで、読者に歴史に対する面白さを分からせてくれます。このシリーズは、単なる事実の羅列ではなく、歴史的な出来事が現代社会に与えた影響や、それらがどのようにして今日の我々の価値観や世界観を形成しているかを探求します。

 今回読んだのは、『世界史劇場 オスマン帝国の滅亡と翻弄されるイスラーム世界』では、ヨーロッパ列強による植民地主義と人種差別の歴史が分かります。例えば、イギリスにひどい目に遭わされたインドについて以下のように述べています。

 まだインドに「ムガール帝国」が健在だったころは、イギリスの横暴に何度も何度も犯行したものです。

 ところが、ことごとく虐殺され、ねじ伏せられ、鎮圧されて、その際にイギリスは「お前たちが我々に勝てないのは、お前たちが劣等民族だからだ!」「お前たち劣等民族がどうあがこうが、我々イギリス人には勝てないのだ」と説伏したため、それはインド人の子心の奥底に深く刻まれていきます。

  どうあがこうが俺たちではイギリス人には勝てないのか……。

(p161)

 

歴史を紐解くと、白人が「有色人種(ノンホワイト)」のことなど自分たちと、”対等”だなどとは思っていない」という本心が随所に現れてきます。

 例えば、彼らが「人間」といったとき、そこには有色人種は含まれていませんし、アジア・アフリカ圏の領土の領有権を現地人のいないところで白人たちだけで勝手にきますし、アジア・アフリカ圏で何か問題が起これば白人はからならず口をはさんでくるくせに、欧州で問題が起きても有色人種には決して口出しさせません。

(p196)

(例えば、1776年のアメリカ独立宣言には「全ての人間は平等に造られている」と唱えられていますが、この「人間」の中に黒人は含まれていませんでした。)

 

これらを背景知識として知っておくと、現代のパレスチナ問題(イスラエルとハマスの戦争)が分かってきます。パレスチナ問題は、イギリスの三枚舌外交が原因と言われており、これは、以下の相矛盾する3つの条約をイギリスが結んだことです。

  • フサイン=マクマホン協定:アラブ人に、オスマントルコとの戦争への協力の見返りにイギリスはアラブ人の独立国家を認める。
  • サイクス=ピコ協定:イギリスは、オスマントルコを滅ぼした後の領土の分割をフランスと約束した。
  • バルフォア宣言:ユダヤ人に国家設立を条件に、戦争資金をイギリスがもらった

つまり、パレスチナという土地を、イギリスとフランスで取得するつもりだったのに、アラブ人とユダヤ人にも与える、と約束したのです。その結果、現在でもパレスチナは誰の土地が分からない状態で紛争地帯となっています。

 

 15世紀から20世紀は、白人が有色人種を劣等種族として植民地化していった時代です。先にも述べたように「お前たちが我々に勝てないのは、お前たちが劣等民族だからだ!」と、説伏されてきた有色人種の人々に画期的な事件が起こります。それが日露戦争における日本の勝利です。有色人種でも白人に勝てる!と抑圧された国々に希望と勇気を与えます。

 

『世界史劇場』シリーズは、歴史を学ぶことの楽しさを再認識させてくれる作品です。歴史が私たちの現在と未来にどのように影響を与えているのかを理解することは、より深く今の社会を理解するための第一歩です。「歴史は繰り返す」と言いますが、私たちは歴史を知ることで、現在を考察し、未来を予測するための知識と洞察を得ることができるでしょう。