地球温暖化が進み、今年の夏も酷暑となり、人参やジャガイモなどの野菜の不作で価格が高騰しました。また、アメリカでは気温45度を超えました。また、海洋マイクロプラスチックも増え、人間はクレジットカード一枚分のプラスチックを食べているとも言われています。
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斎藤幸平氏の著書『人新世の「資本論」』*1は、現代社会が直面している環境問題と経済システムの根本的な矛盾を鋭く指摘しています。本書を読んだ後の感想を述べるとともに、著者が提起する問題点について深く考察してみたいと思います。
まず、人類の経済活動が地球環境に与える影響について、斎藤氏は近代化と経済成長がもたらす豊かさの裏で、環境破壊が進行していると警鐘を鳴らしています。特に、気候変動が進む中で、超富裕層だけが豊かな生活を続けられる一方で、大多数の人々が生活の基盤を失いつつある現実を描写しています。これは、経済成長の果実が一部の人々にしか届かず、多くの人々が環境破壊の代償を支払っていることを示唆しています。
次に、経済成長が環境破壊の原因であるとする見解は、資本主義の無限成長の理念と相まって、資本主義社会の下では環境破壊は止められない、という結論にたどり着きます。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』で述べられているように、資本主義は生産利益を再投資し、さらなる生産増加を目指すシステムです。そのため、資本主義の下では経済成長を止めることはできず、環境破壊も止めることはできません。
また、国連のSDGs(持続可能な開発目標)が経済成長を目指している点についても、斎藤氏は批判的な立場を取っています。SDGsが提唱する持続可能な開発が、実際には環境破壊を防ぐことができないというのは、経済成長と環境保護の間のジレンマを浮き彫りにしています。
さらに、消費側に焦点を当てたエコ活動の失敗についても、斎藤氏は重要な指摘をしています。ロハス(LOHAS:lifestyles of health and sustainability)の流行とその消失は、消費者側の変革だけでは不十分であり、生産側である資本主義のシステムそのものを変えなければ、環境破壊を止めることはできないという現実を示しています。
最後に、斎藤氏は、アメリカのグリーンニューディール政策や日本の環境研究・技術開発の推進戦略が、将来的な技術革新に期待を寄せる楽観主義に基づいていると批判しています。これは、核廃棄物の処理技術が未来に開発されることを前提に原子力発電が進められた歴史と重なります。資本主義に従い、経済成長と地球環境破壊を止めない現状は、環境活動家グレタ・トゥーンベリが指摘する大人たちの無責任さと相まって、問題の本質を突いています。また、技術開発が必ずしも環境問題の解決につながらないことは、「ジェヴォンズのパラドックス」として知られています*2。
『人新世の「資本論」』は、私たちが直面している環境問題と経済システムの矛盾を深く考えさせられる一冊です。資本主義に代わる新たな経済システムの必要性を訴える斎藤氏のメッセージは、今後の社会と環境の持続可能性について、私たち一人一人が真剣に考えるきっかけを与えてくれるでしょう。
まとめ
- 経済成長と地球環境保護は両立しないよって、脱成長を目指すべき。
- 資本主義は無限の経済成長を指向するため、資本主義社会の下では地球環境破壊は防げない。
- 将来、革新的技術が開発されて問題が解決されるという楽観主義は、問題の先送りでしかない。
- 環境破壊を止めるには、消費側ではなく生産側にアプローチすることが必要である。