有川ひろの短編集「物語の種」を読みました。これは、新型コロナ禍中において外出が制限された時期における有川ひろの企画で、読者が物語の種になりそうだと思ったものを投稿し、それに基づいた小説を有川ひろが書いたものです。
10篇の短編からなり、全て面白いですが、その中で以下の作品が特に好きです。
- SNSの猫
- Mr.ブルー
- 恥ずかしくて見れない
SNSの猫
SNSで目にした保護猫に心を奪われた主人公。その猫の可愛らしい姿に癒され、日々SNSで猫の様子を追いかけていました。ある日、その猫を巡る、思わぬ事件が起こります。
面白かったのは以下の点です。
- 猫との絆: SNSを通じてしか知らないはずの猫に、深い愛情を抱く主人公の姿が描かれています。
- SNSと現実: SNSを通じて生まれる繋がりや、現実とのギャップについて考えさせられます。
- 現実と仮想世界の境界線: SNSを通じて知り合った猫との関係は、現実世界の人間関係とは異なる側面があることを示唆しています。この点を考えることにより新たな視点が得られます。つまり、人間vs動物と現実vs仮想世界の4通りの組み合わせについて、考えさせれられる作品です。
Mr.ブルー
家電メーカーの新製品のモニター要員として多忙な日々を送る主人公。彼女は、厳しい上司とWeb会議をしているとき、カメラに映る上司の背後に宝塚のスターのポスターを見つけます。彼女自身は宝塚のコアなファンだったが、上司はそれを上回るファンだった。宝塚を通して、主人公は上司の意外な一面を知るのであった。
面白かったのは以下の点です。
- 宝塚ファンの濃厚さ:宝塚ファンならではの俗語や、劇団員に対する強い愛情が描かれており、それは私の周囲の実際の宝塚ファンのものと同じであること。
- 新しい価値観: 「Mr. ブルー」との出会いは、主人公に新しい価値観をもたらし、彼女の仕事に対する姿勢を変えていきます。
- 趣味と仕事を分けることの大切さ:趣味の時間と仕事の時間を分けることで、人間関係も趣味と仕事で変わること。
恥ずかしくて見れない
Mr.ブルーの派生物語。Mr.ブルーの主人公と同じ職場で働く後輩の男子が主人公。主人公は、先輩に宝塚観劇を繰り返し誘われる中で、恋心を抱く。
面白かったのは以下の点です。
- 初々しい恋愛模様: 初めての恋に戸惑いながらも、必死に気持ちを伝えようとする主人公の姿が可愛らしく描かれています。
- 男性から見た宝塚の魅力:女性ファンの多い宝塚ですが、男性にもその魅力が伝わる様子をコミカルに描かれています。
- 夢の国と現実の混同:宝塚はいわば夢の国、それに対する憧れや愛情は、現実世界の憧れと愛情と、混同しがちです(この点は、アニメオタクと似ています)。
まとめ
有川ひろの短編集「物語の種」を読みました。
日常の出来事を題材にした、ほっこりとした短編集です。特に宝塚歌劇の要素も含まれており、宝塚ファンの方にはたまらない作品となっています。
(冒頭の画像はAI(Microsoft Designer) で生成 ∙ 2024年9月19日 午後8:01)