NHKのTV番組「視点・論点」で、「管理職の”罰ゲーム化”解決は」というテーマで放送がありました。「視点・論点」は、一流の専門家がトピックについての意見を10分間に凝縮して話す、非常にタイムパフォーマンスの良い番組です。
今回のスピーカーは、パーソル総合研究所の小林祐児さんでした。以下にその内容をまとめます。
管理職の”罰ゲーム化”とは?
課長や部長といった管理職の業務量が非常に多くなってきていますが、給与はそれに見合うほど高くなっていません。業務量が増加している原因は以下の通りです。
- ハラスメント(パワハラ、セクハラ)への厳しい社会的視線: 部下への指導が難しくなり、管理職はより慎重に行動せざるを得なくなっています。例えば、ちょっとした注意でもハラスメントと捉えられる可能性があり、管理職は常に法的リスクを意識しながら業務を行う必要があります。
- 働き方改革による労務時間管理の厳格化: 残業時間の制限や年休取得の義務化など、労働時間管理が厳しくなったことで、部下に仕事を任せきることが難しくなっています。そのため、管理職自身が多くの業務をこなす「プレイングマネージャー」化が進んでいます。
問題点は何か?
これらの状況による問題点は二つあります。
- 次世代のリーダーが育たない: 有望な若手は管理職を希望せず、他社へ転職する割合が増えています。また、現在の管理職者が部下の育成に割く時間が減り、次世代の管理職の質が低下しています。
- 管理職の健康問題:日本では管理職の死亡率が他の職種よりも高いという、世界でも珍しい現象が見られます。
何故、管理職が"罰ゲーム化"しているのか?
外部要因(マクロトレンド)としては以下の点が挙げられます
- 少子高齢化による人手不足
- グローバル化への対応により業務内容が高度化
- 短期的業績を求められる傾向が増え、迅速な意思決定と行動が必要
- 組織のフラット化による管理職の減少と部下の増加
- コーポレートガバナンス強化によるハラスメント対策による業務増加
- ダイバーシティへの配慮が必要になり、業務増加
また、内部要因としては、これら外部要因で増えた業務を、管理職が行うべき仕事とする企業が多いことが挙げられます。
この二つの要因により、管理職の業務量が増えています。
問題解決の糸口
以下の3つのアプローチが提案されています
- ワークシェアリングアプローチ:部下に仕事を委譲したり、外部の専門企業に業務をアウトソーシングすることで、管理職の負担を軽減することができます。
- ネットワークアプローチ:の管理職や経営者と積極的にコミュニケーションを取ることで、新たな視点を得たり、情報交換を行うことができます。メンター制度を活用し、経験豊富な先輩管理職からアドバイスを受けることも有効です。
- フォロワーシップアプローチ:部下の能力開発に力を入れることで、部下の成長を促します。教育制度を充実させ、部下が自ら考え、行動できるよう支援することが重要です。
まとめ
グローバル化による競争激化、短期業績の追求、組織のフラット化による部下の増加などにより、管理職の業務が激増しています。忙しい管理職は、マネージメント手法をマクロマネージメントではなくマイクロマネージメントに変化させることが知られており、これにより部下が育たず長期的に更に忙しくなります。
部下を育てることができれば、仕事と権限を委譲することで、管理者の業務量は減ります。本来管理者は、自分の思うあるべき姿に組織を導くことができるやりがいのある仕事です。この本来業務に注力するには、マネージメントスキルを磨くことが欠かせません。
(冒頭の画像はAI(Microsoft Designer)にて生成)