kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



読書

小説「SOSの猿」(伊坂幸太郎)の感想:非現実なキャラクター孫悟空が現実世界に現る

SOSの猿 (中公文庫) 作者:伊坂幸太郎 中央公論新社 Amazon 伊坂幸太郎の小説「SOSの猿」を読みました。その感想を記します。 他人のSOS(困っている・助けて欲しい)を見過ごせない性格の遠藤二郎は、知り合いのお姉さんに、彼女のひきこもりの息子 眞人の…

『残り全部バケーション』(伊坂幸太郎):辞めたいものは何だろう?

『残り全部バケーション』(伊坂幸太郎)を読みました。 もし、あなたが仕事や学校を辞めて、人生の残り全部がバケーションだったら良いと思いませんか?お金の心配がないとして、ビーチリゾートのホテルに泊まって楽しいことだけして過ごすのは素敵なことか…

小説『旅猫リポート』(有川浩)の感想:失くすことを恐れない猫のお話

有川浩の小説「旅猫リポート」を読みました。これは映画化もされており、そのキャストは福士蒼汰、高畑充希、広瀬アリス、竹内結子と、かなり豪華です。 旅猫リポート (講談社文庫) 作者:有川 浩 講談社 Amazon あなたは、大切なものを失くして喪失感でいっ…

「荒木飛呂彦の漫画術」(荒木飛呂彦)の感想:漫画の新しい楽しみ方も分かる

荒木飛呂彦の漫画術【帯カラーイラスト付】 (集英社新書) 作者:荒木飛呂彦 集英社 Amazon 「ジョジョの奇妙な冒険」の作者 荒木飛呂彦が”王道漫画”の描き方を解説した本です。 この本は、まるでコンサルが書いたように思えるほど、構成が良く練れています。…

『「その気持ちなんて言う?」プロに学ぶ感情の伝え方』の感想:レトリックの作り方

その気持ち、なんて言う?ーープロに学ぶ感情の伝え方 (祥伝社新書 680) 作者:NHK「言葉にできない、そんな夜。」制作班 祥伝社 Amazon 感想文を書くのは難しい。それは、その気持ちを言葉にできないからだと思う。 面白い、感動した、素敵だった等、こんな大…

『言葉の本質』(今井むつみ、秋田喜美)の感想:オノマトペの不思議

言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書) 作者:今井むつみ,秋田喜美 中央公論新社 Amazon 「ガリガリ君」アイスの名前が好きです。「ガリガリ」という音が、アイスの触感を良く表しています。ほかの名前、例えばゴリゴリ君、カチコチ君、ジャ…

『これから「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル)の感想:正しさの根拠は3種類ある

これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 作者:マイケル・サンデル,鬼澤 忍 早川書房 Amazon 「正しさ」の話 日本では、まず「悪」が定義され、それを懲らしめるものとして「正義」が考えられている…

平等って難しい

日本の女性の賃金は男性より25%も低い*1。この男女差は平等なのでしょうか?他にも不平等と言われるものは多数あります。 では、「平等」とは、どこまで平等にできるものなのでしょうね。 『これからの「正義」の話をしよう(マイケル・サンデル)』には、哲…

結果ではなく動機が大切

自由市場が大好きという人たちがいます。成人が自由意思に基づき契約したならば、そこに問題はないと考える人たちです。 例えば、ブラビアアイドルが水着撮影の仕事なんて本当はやりたくなかった、と語った時に、嫌なら契約しなければ良いという声がネットに…

正義って難しい

ヒーロー、正義の味方などと言いますが、「正義」とは何か?と訊かれると、これに答えるのはなかなか難しい。 「正義」、「善」、「悪」などと関連する言葉を挙げていくと、正義の反対語は悪で、悪の反対語は善となり、正義と善の関係が分からなくなります。…

自由って難しい

自由が大切です。自分の行動を自由に決めることは大切だし、他人の自由を邪魔するのは悪と言われます。 でも、「自由」って何?と訊かれれば答えづらいものです。 埼玉県の市民プールでグラビアアイドルの水着撮影会が中止にさせられたことがあり、女子を水…

「国語ゼミ」(佐藤優)を読んだ感想:自分の言葉で要約しよう

佐藤優さんの「国語ゼミ」を読みました。これは、国語力を伸ばすための本です。ここで、国語力とは、(1)論理的思考力、(2)表現力、(3)批判力、(4)判断力を含みます。 国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義 (NHK出版新書) 作者:佐藤 優 NHK出版 Amazon 頭の…

「あの家に暮らす四人の女」(三浦しおん)の感想:独身女同士の距離感

日本では、結婚した人の90%が恋愛結婚ですが、30代女性の約30%が独身、40代で約25%が独身です (男女共同参画白書令和4年版より)。また、独身女性の結婚したくない・してもしなくてもどっちでもいいという割合が年代とともに上がっています。つまり、恋愛戦…

桜のレトリック

名著と呼ばれる本はたくさんありどれを一番ということはできないけれども、『レトリック感覚 (講談社学術文庫)』は間違いなく名著の一つに挙がるだろう。この中で、有限の言葉で無限の事象を表現することはできず、私たちの感じたことをできるだけありのまま…

あらすじを書くのは難しすぎる

僕の書くあらすじは面白くない 本を読みその感想文や書評を書く際に、あらすじを書いてしまうことが私にはあります。その書いた文章を読み返すと、絶望的に面白くない。 例えば、コミック ワンピースのあらすじを書くと、「少年ルフィーは海賊であり、海賊王…

小説「PK」(伊坂幸太郎):文の構造が素晴らしい、パラレルワールドを絶妙に描く

最後に謎解きがされてすっきりする小説と、謎が残されモヤモヤする小説があります。このモヤモヤはフラストレーションであるとともに、想像し答えを創造する余白です。 PK 新装版 (講談社文庫) 作者:伊坂幸太郎 講談社 Amazon 伊坂幸太郎の小説「PK」は、…

表面に留まる強さをもつ

受け手に対しても読み手に対しても、従って、まず要求されるのは表面に留まる強さです。作品の表面を理解することなしに意味や内容で即席に理解したようなふりをすることを拒否する強さです。 (「小説のストラテジー (ちくま文庫)より) これは、初めて読ん…

感想文と書評の類似点と違いから、万能テンプレートを作った

読んだ本や映画についてブログを書いていると、これは書評を書いているのだろうか?それとも感想だろうか?迷う時があります。書評と感想文の違いを整理をするために言語化しておきます。 細かいことはともかく作文の書き方を知りたいという人は、最後の「作…

いつも「時間がない」あなたに:忙しさはミスを呼ぶ、想像以上にひどいミスを

いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (早川書房) 作者:センディル ムッライナタン,エルダー シャフィール 早川書房 Amazon この本は、時間管理の本ではなく、認知能力や心理学的な影響について深く掘り下げた本です。時間やお金に関する悩みを抱…

別冊NHK100分de名著 ナショナリズム:ヤマザキマリの解説する「方舟さくら丸」

ナショナリズムを知りたくて本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナリズム」を読んだ。 別冊NHK100分de名著 ナショナリズム 作者:大澤 真幸,島田 雅彦,中島 岳志,ヤマザキ マリ NHK出版 Amazon サッカーワールドカップが4年に一度開催される度に、にわかサッ…

「反応しない練習」、それは速い思考にSTOPをかけること

名著を2つ挙げよと言われたら、これを選ぶ。 「ファースト&スロー あなたの意志はどのように決まるか?」(ダニエル・カーネマン) 「反応しない練習」(草薙龍瞬) 分野の異なる本だが、いかのYoutube動画を見て、つながった。 【速い思考と遅い思考、ダ…

別冊NHK100分de名著 ナショナリズム:中島岳志の解説する「昭和維新試論」

NHKのTV番組「100分de名著」が凄い。名著と呼ばれる有名な本をその道の専門家が一般向けに解説してくれる。私は、新しい分野の知識を得ようとするときは大抵「100分 de 名著」から始める。 ナショナリズムを知りたくて本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナ…

別冊NHK100分de名著 ナショナリズム:島田雅彦の解説する「君主論」

NHKのTV番組「100分de名著」が凄い。名著と呼ばれる有名な本をその道の専門家が一般向けに解説してくれる。私は、新しい分野の知識を得ようとするときは大抵「100分 de 名著」から始める。 ナショナリズムを知りたくて本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナ…

別冊NHK100分de名著 ナショナリズム:大澤真幸の解説する「想像の共同体」

サッカーワールドカップの度ににわかサッカーファンが現れ、日本チーム 侍ジャパンのプレー一つ一つに一喜一憂するのは何故だろう?プレーしている選手と会ったことすらないのに、「感動をありがとう」などと言う。素晴らしいプレーに感動しているのではない…

『別冊NHK 100分de名著 特別授業「ロウソクの科学」』の感想、常識の前提を理解すること

皆さんが「常識から外れたことを考えなさい」と言われたら、まずはその常識を理解することです。常識を理解して、その常識が成り立つ条件を把握すれば、常識外のことが見えてくるかもしれません。 『別冊NHK100分de名著 読書の学校 吉野彰 特別授業…

とびきり愉快なイギリス史:中でもヘンリー八世は愉快なヤツだった

もし会社が無かったらどうなるんだろう?もし国というものが無かったら世界はどうなのだろう?もし離婚が禁止されていたら、 歴史は面白い。有って当たり前のものが無い社会のことが分かる。無かったものが初めて出来たときの様子が分かる。何故できたのか?…

「読む力」(佐々木俊尚)の感想レビュー:情報が溢れる時代だからこそ、正しく読む力があなたを賢くする

君たちったら何でもかんでも 分類 区別 ジャンル分けしたがる ヒトはなぜか分類したがる習性があるとかないとか この世の中2種類の人間がいるとか言う君たちが標的 持ってるヤツと持ってないヤツとか ちゃんとやるヤツとヤッてないヤツとか (Habit SEKAI NO …

小説「木暮荘物語」(三浦しをん)の感想(レビュー):濃い文章で描く少し不思議な男と女のお話

三浦しをんの小説「木暮荘物語」は、東京の小田急線世田谷代田駅から徒歩5分の古びたぼろアパートを舞台にした短編集です。収められている7編の短編は、独立したお話ですがゆるく関連しています。こういう形式の短編集は、有川浩の「阪急電車」と同じ。 設…

『人は聞き方が9割』(永松茂久)の感想(レビュー):コミュニケーションを目指さないことが肝心

『人は聞き方が9割』(永松茂久)を読んだ。熟読した。面白かった。 人は聞き方が9割 作者:永松 茂久 すばる舎 Amazon この本は大切なことを3つ書いています。 コミュニケーションとは何か? 人は話したい生き物である 全ての人が求めているのは安心感であ…

小説「陽気なギャングの日常と襲撃」:伏線回収だけではない作品

この「陽気なギャングの日常と襲撃」は、伊坂幸太郎の「陽気なギャングが地球を回す」の続編です。地球を回すの方が面白かったので、日常と襲撃の方も読んでみました。 最初の印象は、前作と随分感じが違うぞ、ということでした。4人のギャングが入れ代わり…