増田弘の「なぜ世界で紛争が無くならないのか」を読んだ。世界紛争の真因を示した本である。本を通じてのメッセージは、紛争はよく民族の違いや宗教の違いが原因として語られることが多いが、そうではなく、「まず紛争がそこにあり、その紛争の口実として宗教や民族が口実として使われいてる」、というのものである。
例えば、イラク攻撃におけるアメリカvsイラクの紛争を見ると、アメリカ兵の戦死者は実はアメリカ軍がイラクを制圧した後の方が制圧中よりも多い。この背景には、イラク暫定政府が行政サービスの手助けに宗教グループの力を使った。その結果、ある宗派は暫定政府に力を貸し、他の宗派は暫定政府は政府に反対するという宗教紛争の形となった。一旦宗教紛争の形ができあがると、戦う理由として宗教が使われる。例えば、スンニー派対シーア派という構図である。
アフリカの紛争について考えてみると、アフリカ紛争は国と国の争いでなく国内の内戦が多い。ルワンダの内戦を例にとると、ヨーロッパは1880年代にアフリカを植民地として支配した。その中でベルギーはルワンダを統治する際、ツチ族を使った間接統治をおこなった。これが原因でツチ族とフツ族の紛争が起こった。
この本からの気づきは、世の中には説明しやすさが真実に勝る場合が多い、ということだ。紛争の場合、仲間を集めるには宗教や民族の違いを理由にして説明するのが分かりやすい。ビジネスの場合にも、資金を集める際に本当の理由でなく、分かりやすい説明を行うのと同じである。
- 作者: 増田弘
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/06/19
- メディア: 新書
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