オイルマネーが世界を駆け巡り、パレスチナは相変わらず不安定で、アラブの春以来エジプトやシリアも不安定になっている。これらは、どれもイスラム社会のことなのだけど、どうもイスラムのことはよく分からない。そこで、「高校生からわかるイスラム世界」(池上彰著)を読んでみた。さすが、池上さん、かなりすっきりわかった。
まずは、イスラム教徒は何かが分かりやすく説明されている。イスラム教は、ユダヤ教とキリスト教と兄弟なのだ。簡単にまとめると以下のようになる。
信じているもの | |
---|---|
ユダヤ教 | 旧約聖書 |
キリスト教 | 旧約聖書、新約聖書 |
イスラム教 | 旧約聖書、新約聖書、コーラン |
ここに民族が関わってくるので、イスラムの問題はややこしいという構図になっている。簡単にまとめると、以下のようになる。
ユダヤ教 | 主にユダヤ人 |
---|---|
キリスト教 | 多様 |
イスラム教 | 主にアラブ人 |
さて、パレスチナ問題というのは、ユダヤ人とアラブ人がパレスチナという土地を巡って争っている問題だ。これに宗教が絡まって面倒になっている。パレスチナの中にあるエルサレムという場所が、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教のそれぞれにとって聖地(どの宗教も旧約聖書を信じていることがポイント)であるので、各宗派ともエルサレムの取り合いにおいて妥協しないのだ。
ここで注意が必要なのは、宗教が異なるからユダヤ人とアラブ人が争っているわけではないということだ。最初は土地の争いだったのが、宗教の違いの争いも加わったということだ。なぜ、宗教の違いが争いに加わるかと言えば、争っている各グループのリーダーは、各々のグループメンバを戦わせるために宗教を利用するからだ。お国のために戦ってくれというより、整地を守るために戦えという方が、人民が一生懸命戦うのだ。こうして、問題が面倒になって行った。
次に、タリバンの話。昔、ソ連が不凍港を求めてアフガニスタンに侵攻しました(これにより、アメリカと日本がモスクワオリンピックをボイコットすることになった。)。当時ソ連と敵対していたアメリカはパキスタンを経由してアフガニスタンのイスラムゲリラを支援した。ソ連が撤退した後、このイスラムゲリラたちが複数の軍閥に分かれて互いに戦ったためアフガニスタンの治安が悪くなった。これらの軍閥を一掃したのがタリバンだった。タリバンは、アフガニスタンの学生がパキスタンの神学校でイスラム教の教えを叩き込まれた人たちが中心となっており、パキスタンの支援を受けていたため強かった。さて、世間のニュースで問題として取り上げられたのは、このタリバンがオサマ・ビン・ラディンをかくまっていたためでした。何故かくまったかと言えば、さきのソ連がアフガニスタンを侵攻した際に、オサマ・ビン・ラディンは祖国のサウジアラビアからアフガニスタンに渡ってきてソ連と戦ったため、アフガニスタンは彼に恩があったためである。
まとめ
この本を読むと、イスラムを巡る問題の構図がよく分かる。イスラム教が悪いというよりは、政治に宗教が利用されて宗教対立が起こり、問題が深刻化していった様子が非常にわかりやすく述べられている。さすがは池上さんである。
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: ホーム社
- 発売日: 2010/09/24
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