「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(米原万里)は、故郷を離れた少女が集まり育った学園もの、そして少女たちが大人になった後の物語。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。
- 作者: 米原万里
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2004/06/25
- メディア: 文庫
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かつてソビエト連邦ができたころ、ソ連は、周辺の国々を共産主義国家と変え、衛星国とした。西側との緩衝地帯を作るためだ。著者の米原万里は、小学校から中学校までの時期をチェコスロバキアのプラハで過ごした。その時の学友の3人の少女を、大人になって訪ねる物語である。
民族の異なる少女が集まって授業を受ける様子は、背景にある文化の違いや思想の違いに戸惑いながらも少女は明るく友好を深める。仲良くなるにつれ、お互いの鬱屈した部分を見せ合いながら互いを理解していく。
著者は、高校・大学・社会人の時期を日本に戻って過ごす。しかし、プラハの春のような戦火を知るとかつての友を探す旅にでかける。友と再会し、彼女と会話することで、少女時代の鬱屈を改めて理解し、その後の人生を共有する。
本書は、次の3篇からなる(カッコ内は私が追記)。
- リッツァの夢見た青空 (ギリシャから来た少女)
- 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (ルーマニアの高官の娘)
- 白い都のヤスミンカ (ユーゴスラビアの才能豊かな少女)
本書の魅力は、文章がうまいこと。重苦しく・説教臭くならず、軽やかに少女たちの会話を再現していて心地よい。
「マリ、男の良し悪しの見極め方、教えたげる。歯よ、歯。色、つや、並び具合で見分けりゃ間違いないってこと」
おまけ
旅をしながら人と会い、その人の人生を描写する。本書は、そんなスタイルの本である。このスタイルは、「ひとめあなたに」(新井素子)と同じだ。だからどうしたということはないのだが、関係ないと思ったものの共通点をみつけた。それは楽しい。
- 作者: 新井素子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/05/29
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