河合隼雄の「カウンセリングの実際」という本を読んだ。良書だと思う。
私の心に引っかかったのは、以下。
- カウンセリングの目的は、クライアントの症状を治すことではなく、クライアントの可能性の拡大である
- クライアントの可能性の拡大は、傾聴により、クライアントが自身の内面とおかれている環境に向き合うことにより、適応を促することによりなされる。しかし、可能性の拡大は、必ずしも良い結果を生むとは限らない。
- 男性恐怖症の女子学生が、男性恐怖と向き合った結果、ノーマルになるのも可能性の拡大であるし、ボーイフレンドをたくさんつくる浮気な女になるのも可能性の拡大である。
- カウンセリングは、可能性の拡大の結果の良し悪しには関与しない(そもそも善し悪しを他人が決めることはできない)
カウンセリングの本というと、良い人(カウンセラー)が困っている人(クライアント)の心を開かせて善に導くという、教育的・道徳的な入門本が多い中、カウンセリングの目的はクライアントの可能性の拡大で、それが教育的・道徳的に悪い結果になることもある、というのは私にとっては衝撃的であった。
一方、「傾聴」という言葉からはコーチングを想起するが、コーチングとカウンセリングは以下の点において大きく異なる。
- コーチングは、コーチとクライアントが、その目的と成果を共有してそれを実現することを目指すのに対しえ、カウンセリングは(未発見の)クライアントの可能性を追求するものである。(カウンセリングはどういう結果になるのか、カウンセラーも分からない)
このように考えると、コーチングはただ傾聴すれば良いというものではないことが分かる。すなわち、ゴールの確認、進捗の確認、計画の変更というステップが必要であり、この点に関してコーチはクライアントに積極的にかかわっていく必要がある。
カウンセリングの実際―“心理療法”コレクション〈2〉 (岩波現代文庫)
- 作者: 河合隼雄,河合俊雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/07/16
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (9件) を見る