「知の逆転」(NHK出版新書)は、偉大な功績を残した科学者のインタビューをまとめた本である。
- ジャレッド・ダイアモンド(Jared Diamond)
- ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)
- オリバー・サックス(Oliver Sacks)
- マービン・ミンスキー(Marvin Minsky)
- トム・レイトン(Tom Leighton)
- ジェームズ・ワトソン(James D. Watson)
本書を通じて、一流の科学者の語り口を楽しむことが出来る。
私が、気に入った部分をいくつか記す。
チンパンジーには死の概念というものはありませんから、人生の意味について心配するということもないのですが、人間は死というものを強く認識しているので、いきおい人生の意味について深く考えることになります。
(中略)
「人生の意味」をというものを問うことに、私自身は全く何の意味も見出せません。人生というものは、星谷岩や炭素原子と同じように、ただそこに存在するというだけのことであって、意味というものは持ち合わせていない。
音楽や資格の能力は一般的に右脳で処理されているようですが、二、三歳になる頃に言語の発達すなわち左脳の発達によって、右脳の発達がやや抑止されるようになっているらしい。したがって一旦抑止する側(左脳)にション賞が起こると、抑止されていた側(右脳)が解放されるという見方も出来るかもしれません。
(オリバー・サックス)
つまり、障害がおきて何か(左脳)が衰えることで、別の何か(右脳)が解放されて発達することがあると言っている。
(なぜ2011年3月の東日本大震災のあと、福島原子力発電所にロボットを送り込んで作業をさせることができなかったのか、という質問に対する答えとして)
問題は、研究者が、ロボットに人間の真似をさせることに血道を上げているということ、つまり単に「それらしく見える」岳の表面的な真似をさせることに夢中になっているというところにあります。
(中略)
ですからロボット工学に関しては、30年前にその進歩はほとんど止まってしまって、その後はもっぱらエンターテイメントに走ってしまったように見受けられています。
ホンダをはじめとするいろいろな会社が、見栄えがいいロボットを作ってきたわけですが、そういうのは笑ったり動いたりするだけで、実際には何も出来ない。既に30年を浪費しているにも関わらず、いまだに研究方針に変化の兆しも見えない状態です。
アメリカでは、全ての人には何にでもなれる可能性があって、誰でもリーダーになる素質を持っている、というわけです。(そんなことはないのに)
(中略)
本来、意図は皆それぞれ異なっているのに、同じだと見なさなければ行けなくなってきている。同時にあるものの方が別のものよりも良いという言い方は避けて通るようになってきてもいる。だから、どの花も全て同じように咲くんだという。ごまかしです。
(ジェームズ・ワトソン)
厳しいお言葉です。
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソン,吉成真由美
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/12/06
- メディア: 新書
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