kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



資本主義は終わっている

 「知の逆転」でノーム・チョムスキーが市場原理に基づいた資本主義について述べている。資本主義は終わっていると。
 かつて、需給状況による価格決定に基づく取引はうまく機能した。しかし、その取引規模が大きくなることによって、システムコストが無視できなくなってきている。例えば、うなぎの価格は、売り手と買い手の需給関係で決まっている。一方、科学技術の進歩により安くうなぎを捕獲することが可能となり、うなぎの取引量は増えた結果、うなぎが絶滅しそうになっている。うなぎの売買というシステムを維持するためには、うなぎを保護するというシステムコストを払う必要がある。
 素朴な資本主義では、この取引システムのコストは考慮されていない。このコストを取引に含ませるには、政府の規制が必要である、というのがチョムスキーの主張である。

 たとえばあなたが私に車を売るとします。市場システムではあなたと私の双方にとって納得のいくような取引をするわけです。その際他の人に撮ってどれだけコストがかかるか(損害があるか)ということは計算に入らない。しかし実際には他の人にもコストがかかってくるわけです。
 あなたが売った車によって交通渋滞が起こったり、大気汚染が起こったり、原油価格が上がったりすれば、それは全て他の人にとってのコストになります。一人分はそれほどではないにしても、人口全体で考えると大変なコストになる。これは「外部性」(この場合は「負の外部性」)とよばれるもので、普通は注意を払っていない要素です。

 
 システムコストは商品・サービス毎に異なる。そのため、政府の規制は商品・サービス毎に必要であり、適切な規制を決めることは難しい。また、そのシステムが複数の国にまたがっている場合は、規制も関係各国で行う必要が有る。これは、国際協調を要するため、規制の実施には時間がかかる。
 資本主義を支えるのは政府の規制であり、その規制は複雑で時間のかかる作業であることを思えば、少し暗い気持ちになる。

知の逆転 (NHK出版新書)

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