細田守監督の映画「竜とそばかすの姫」を観ました。
とても良かった。
細田守と言えば、
- 時をかける少女
- サマーウォーズ
- おおかみこどもの雨と雪
- バケモノの子
- 未来のミライ
これらを監督した人。私は全て観ました。未来のミライは置いておいて、すべて好きな映画です。
「竜とそばかすの姫」は、他の映画と同じく、観終わった後に暖かい気持ちになれます。また、ストーリの結末を知った後でも、何度も見直すことのできる映画。これは、例えば、サマーウォーズの大人数でご飯を食べるシーン、おおかみこどもの雨と雪で花が一生懸命子供たちを愛するシーン、バケモノの子で久太と熊徹が互いに競うシーンのような気持ちに刺さるお気に入りのシーンがあるため。
「竜とそばかすの姫」では、クジラがゆったりと飛ぶシーンが美しい。そばかすの姫がその上で歌うシーンは、とても心地よい。
バーチャルな世界で知り合った友達が、リアルで困っている。そのとき、自分は何ができるか?これがこの映画の一つのテーマであるように思う。
50億アカウントのインターネット空間<U>。「ようこそ<U>の世界へ」「<U>はもうひとりの「自分」になれる世界」「<U>でならもう一度やり直せる」「さあ、世界を変えよう」と、<U>は皆を誘う。
この中で「さあ、世界を変えよう」というフレーズに違和感を持って私は映画を観ていた。
<U>は"You"に由来するのは間違いない。もう一人の「自分」はバーチャル空間<U>に存在して現実の自分は変わらない。そして<U>の中でどれほど偉大な存在になったとしても、現実の誰かを変えることはできない。世界を変えるためにはどうすれば良いのだろう?(ネタバレになるのでこの答えは書かないでおきます。映画を観て答えを見つけてください)
さて、<U>の中の主人公の名はBell。このことから、美女と野獣との関係を想像せずにはいられません。美女と野獣でヒロインの名前もベルですから。そして、竜のお城のシーンは、美女と野獣のそれに似ています。Bellは野獣を救うのでしょうか?
また、<U>の中のもう一人の自分(アバター)Asは、オズの魔法使いに由来しそうです。オズの魔法使いと言えば、ドロシー旅をしながらカカシ・ブリキの木こり・ライオンと出会う話で、ドロシーと触れ合うことで頭の悪いカカシは知恵を手に入れ、心の無いブリキの木こりが愛する心を手に入れ、臆病なライオンが勇気を手に入れます。
この映画でも同様に、竜とそばかすの姫は夫々自分に欠けている物を手に入れます。
Bellが歌う「歌よ、導いて」は、今まで足を踏み入れたことの無い世界に自分を連れて行って欲しいという意味で、新しい世界に飛び込むことで欠けている物をBellは手に入れる。
さて、竜のセリフ「オマエは誰だ?」、Bellのセリフ「あなたは誰?」。このセリフがバーチャル空間<U>で交わされるのですが、現実世界の情報を使わずに自分が何者かを相手に示すのは難しい。バーチャル空間での活動によって自分が何者かを示すことはできますが、それはバーチャル空間の中だけでの「自分」であって、本当の「自分」を表してはいないのでしょう。
そして竜は言います「オレを見るな」と。本当の「自分」を知られたくないと。
まとめ
細田守監督の「竜とそばかすの姫」を観ました。
とても良かった。(大絶賛です)
最後に暖かい気持ちになる映画であることも好きだし、美しいシーンがたくさんある点も素晴らしい。何度も観返すことのできる映画です。
また、背景にあるメッセージを想像するヒントも多く、それを考えるのも楽しい。