kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



『「言葉にできる」は武器になる』(梅田悟司):思考を磨き言葉の解像度を上げろ。簡単にはできない、だからこそあなたの武器になる。

「言葉にできる」は武器になる。

「言葉にできる」は武器になる。

 

 

 「言葉は思考の上澄みに過ぎない」これが言葉に対する著者の態度だ。

 この本から学ぶのは、こんな著者の態度である。

 

 流行の言い回しで流行のトピックを語る、そんな人たちは多い。ウケることが目的の人たちだ。また、正論を語る人たちも多い。誰にでも正論は言える、そこに話し手の思考は無い。そんな言葉では人は動かない。自分の思考を磨いた末に出る言葉によって、人は動く。

 

 簡単に手に入るものに価値はない。思考の解像度を上げ表現を磨くことは簡単ではない。実践・繰り返し・継続が必要となる。続けるには努力がいる。だからこそ「言葉にできる」は武器になる。

 この本には、あなたが実践・繰り返し・継続するための”熱”がある。コピーライターである著者が磨き上げた思考と言葉があなたの背中を押す。この本には、思考と言葉を磨くテクニックも書いてあるが、文章から垣間見える「言葉は思考の上澄みに過ぎない」という態度が本書のポイントだ。

 

 あなたは何がしたいのか?あなたは何が言いたいのか?言葉にする前にじっくり考える必要がある。では考えるとは何だろう?それは自分の内なる言葉を聴く作業である。それは禅や武道に似ている。意識を相手に向けるのではなく自分に向けるのだ。

 

 

 著者の梅田悟司は、コピーライター。「バイトするならタウンワーク」、「世界は誰かの仕事でできている」など有名コピーを世に出した。「言葉は思考の上澄みに過ぎない」という彼が、その考える技術と表現する技術を本書で公開している。

 

考える技術

 著者の考える技術は、まず考えを広く発散させる。

 その発散のさせ方にコピーライターならではの工夫がある。 まずは、考えを付箋紙に書きだして似たもの同志グルーピングする。これは KJ 法など良くある手法だ。面白いのは、 これを広がり軸と深まりの軸で 2 次元に並べていくことだ。

 そしてこれらを三つの問い「それで?」・「なぜ?」・「本当 に?」を繰り返して広げていく。「それで?」という問いで思考を先に進め、「なぜ?」で深め、「本当に?」で戻す。

 さらに列挙したアイデアを「逆に」と考えていく。逆とは否定だけではない。

いくつもの逆がある。

  • 否定としての逆:できる⇔できない、賛成⇔反対
  • 意味としての逆:希望⇔不安、本音⇔建て前、過去⇔未来
  • 人称としての逆:私⇔相手、一人⇔大人数

 

 次に「あの人ならどう考える」と他人の視点を借りて考える。自分の壁(常識、専門性、苦手、仕事モード)を超えるため、「あの人ならどう考えるだろうか?」と視点を借りて、検討を進める。

自分の可能性を狭めているのは、いつだって自分である。

 

表現する技術

 表現する技術も、コピーライターならではのものがある。

 中でも、動詞にこだわれ、という主張は面白い。動詞にこだわるのは、文章に躍動感や息遣いが加わるからだ。例えば、「私はこの道を全速力で走った」とするよりも、「私はこの道をかっ飛ばした」とすると短い文章で躍動間を伝えることができる。

 また、「○○って、△△だ」で新しい意味を作る、というのもコピーライターならでは。「仕事って、遊びだ」、「欲張りって、長所だ」、とすることで遊び・長所の意味が通常のものとは変わる。こうやって新しい意味を作ってでも、自分の考えにしっくりする言葉を探していく。

 

まとめ

「バイトするならタウンワーク」、「世界は誰かの仕事でできている」などを世に出した有名コピーライター梅田悟司さんの考える技術&表現する技術の本だ。随所にコピーライターらしい工夫がある。

 「言葉は思考の上澄みに過ぎない」考え抜くことで伝わる言葉が生まれる。本書のポイントは、こんな著者の態度である。「文章を書くことは考えることである」、こんなことを著者に言えば笑われそうだ。まず考え、それから文章にするのである。

 あなたが、思考の解像度を上げ表現を磨くことは簡単ではない。実践・繰り返し・継続が必要となる。続けるには努力がいる。だからこそ「言葉にできる」は武器になる。この本には、あなたが実践・繰り返し・継続するための”熱”がある。

 

 

付録

考える技術と、表現する技術について、メモを記す。

考える技術 

 7ステップで考え抜く。

  1. 頭にあることを書き出す。
     考えているつもりでも実は思い出しているだけということが多い。まずは、頭にあることをすべて書き出す。付箋紙やA4の紙を使って書き出す。
    とにかく書き出す。
    頭が空になると、考える余裕が生まれる。 
  2. 「T字型思考法」で閑雅を進める<連想と深化>
     「それで?」「なぜ?」「本当に?」を繰り返して思考を広げる。
     「それで?」の問いは、それで結局何がしたいのか、それで結局どんな効果があるのか、それで結局何が言いたいのか等を自分に問うことになる。
     「なぜ?」の問いを繰り返すことで、より抽象度の高い本質的な内容に考えを進めることになる。
     「本当に?」の問いは、建前で考えていないか、それは自分の本音なのか、を問うことになる。
  3. 同じ仲間を分類する<グルーピング>
     付箋紙をグルーピングしたら、それを横のライン(方向性の幅)と縦のライン(深さの幅)の二次元に並べる。
     そして、グルーピングした塊に名前を付ける。ネーミングを付けることでグループの区別がはっきりする。そのため次のように軸を意識してネーミングするのがコツ。
    - 時間軸:過去・現在・未来
    - 人称軸:自分のこと・相手のこと
    - 事実軸:本当のことか・思い込みか
    - 願望軸:やりたいことなのか・やるべきことなのか
    - 感情軸:希望なのか・不安なのか
  4. 足りない箇所に気づき、埋める<視点の拡張>
     グループの名前を見ながら他の視点がないか考え、広げる。
     まずは横のラインに集中して広げ、次に縦のラインに沿って広げていく、この順番が大事。
    横のラインと縦のラインを増やし、頭の中の解像度を高める。
  5. 時間をおいて、きちんと寝かせる<客観性の確保>
     考え続けると思考の幅が狭くなるので、数日時間を置く。
  6. 真逆を考える<逆転の発想>
    自分の常識は、先入観であると心得る。
     自分の常識・先入観から抜け出すために敢えて真逆を考える。真逆は一つだけではない、様々な真逆を考える。
    - 否定としての真逆:できる⇔できない、やりたい⇔やりたくない、好き⇔無関心⇔きらい
    - 意味としての真逆:やりたい⇔やるべき、希望⇔不安、本音⇔建前、仕事⇔遊び⇔家庭、過去⇔現在⇔未来
    - 人称としての真逆:私⇔あいて、知ってる人⇔知らない人
  7. 違う人の視点から考える<複眼思考>
    あの人だったらどう考えるだろうか?と思考する。
     人は常に自分という壁にとらわれている。常識の壁、仕事モードの壁、専門性の壁、時間の壁、前例の壁、苦手意識の壁。これらを取り払うため、あの人だったらどう思うか?同僚だったら?家族だったら?と他人の視点を借りて考える。

    自分の可能性を
    狭めているのは、
    いつだって
    自分である。

     

言葉にする技術

(1)日本語の型を知る
  1. たとえる<比喩・擬人>
    分かりやすい言葉でイメージを共有する
  2. 繰り返す<反復>
    大事なことだから、繰り返す。
     同じ言葉を繰り返す「もう一歩。いかなる時も自分は思う。もう一歩。今が一番大事な時だ。もう一歩。」(武者小路実篤
     同じ意味の言葉を繰り返す「努力だ。勉強だ。それが天才だ。」(野口英世
     繰り返しを短い文章に落とし込む「好きなことをしているときの君が好き」
  3. ギャップを作る<対句>
    強い言葉はギャップから生まれる。
     「負けるが勝ち」「大きな目標があるのに、小さなことにこだわるのは愚かです。」(ヘレンケラー)など
     自分の言いたいことの逆を前半に組み込むのがコツ。「あなたに頼みたい」→「あなた以外には任せられない」
  4. 言い切る<断定>
    「思う」とか弱い言葉を語尾に付けない。
  5. 感じる言葉を使う<呼びかけ><誇張・擬態>
    よびかけ:「少年よ、大志を抱け」
    誇張・擬態:「固く握りしめた拳とは、手をつなげない」(マハトマガンジー
(2)言葉のプロが実践する、もう一歩先へ
  1. たった一人に伝わればいい<ターゲティング>
     みんなに伝えようとしない、具体的なたった一人を思い浮かべてその人に向かって言葉を選ぶ。
     テクニックとして文章の前に「あなたに伝えたいことがある」を付けて、考える。
    誰一人として平均的な人などいない。
    顔を思い浮かべ反応を予測する。
  2. 常套句を排除する<自分の言葉を豊かにする>
    常套句があなたらしさを奪っている。
    「大変ご無沙汰しております。」など常套句は使わない。具体的に言いたいことを書く。
  3. 一文字でも減らす<先鋭化>
     まず第一に削っていくものは、繰り返し出てくる言葉である。例えば「それは」「その」といった指示語、「そして」「しかし」などの接続し、「私は」といった主語である。
     文字を減らすことで文章全体にキレやリズムが生まれ、読みやすくなる。さらに、言いたいことが際立つ。
     次に行うのは、同じ意味の文章が続く個所を違う言い回しに書き換えていくことだ。英語でいうパラフレーズ類語辞典を活用して違う言い回しを探す。
  4. きちんと書いて口に出す<リズムの重要性>
  5. 動詞にこだわる<文章に躍動感を持たせる>
     文章に躍動感を持たせる際に、修飾子よりも動詞を工夫する方がよい。コンパクトでキレのある文章に仕上がる場合が多い。たとえば、「私はこの道を全力で走った」(元の文)を、「私はこの道をがむしゃらに走った」(修飾子の工夫)とするよりも、「私はこの道をかっ飛ばした」(動詞の工夫)とするのがよい。
  6. 新しい文脈を作る<意味の発明>
     人は言葉で考え、言葉で発信し、言葉で理解しあう。しっくりする言葉がないときは、新しく作る。「生徒って、先生だ。」「仕事って、遊びだ」「言葉って、武器だ」のように、「○○って△△だ」という型で新しい意味を作る。
  7. 似て非なる言葉を区別する<意味の解像度を上げる>
    純化することで失われるものがある。
     知識と知恵、問題と課題、意味と意義など。似た言葉の意味の違いを意識し、自分の感性を磨く。