「ヤバい経済学」は、思い込みを見破る本である。実際、”経済”の話は出てこない。経済学者というのは、統計(つまり、ビッグデータ解析)により真実を見つけ出す。本書は、真実だと思われていたことが統計により間違いと分かった事柄を紹介している。
紹介してる事例を簡単に記すと、
これらの中で、子育てに関する章が面白い。簡単に紹介する。
ここ数十年、さまざまな子育て専門家が山ほど湧いて出た。なんとなく彼らの言う通りやってみようかと思っただけでも一苦労だ。
(中略)
たとえば、母乳で育てないと元気で賢い子供にはならない。赤ん坊はいつも仰向けに寝かせておかなければいけない。
(中略)
赤ん坊には早いうちから夜一人で寝られるようしつけるのがとても大事だと強調している。そうしないと睡眠不足で『子供の中枢神経の発達に悪い影響があり』、学習障害につながると述べている。一方、『一緒に寝る』派は、一人で寝かせると赤ん坊の心理に悪い影響があるので、『家族のベッド』で一緒に寝るのが正しいという。
つまり、子供の育て方には、いろんな意見があり、そしてさらに新しい意見が出てくる。それらはお互いに矛盾していることも多々ある、ということだ。
では、どの子育て方法が正しいのだろうか? いやそもそも子育ての方法は子供の将来に影響を与えるのだろうか?この点について、著者は統計的な調査を行った。著者が立てた問いはずばり以下である。
熱心な親が子供のためにしてやれることはどれほどあるんだろうか。
初めの調査は、「良い学校に子供を通わせると、子供の将来は明るいものになるだろうか?」に関するものである*1。シカゴの学校で調べた結果、良い学校に行った子供と、そうでない学校に行った子供の間に、学力に差はなかった。ただし、良い学校に行こうとした家庭の子供と、そうでない家庭の子供の間には、学力の差が出た。つまり、良い学校に行かせたいと思うような家庭の子供は最初から学習意欲が高く、そんな子供はどこの学校に行っても勉強するということである。
次の調査。学校に本がたくさんある家の子供は、そうでない家の子供より勉強の成績が良いことが、分かった。ただし、子供によく本を読んでやっても試験の成績には関係無い。関係あるのは、親の教育水準である。つまり、親の教育水準が高いと、子供の成績も良い。言い換えれば、親が子供ににしてやれることはほとんど無い、大切なのは親が何をしてやるかではなく、親がどんな人なのかである。
つまり、親御さんが子育ての本を手にする頃にはもう全然手遅れになっている。大事なことはずっと前に決まってしまっている。(あなたがどんな人で、どんな人と結婚して、どんな人生を歩んできたか、そういうことだ)でも、あなたが親として何をするかはあんまり大事じゃない(大事なのは、あなたがどんな人かなのだ)
幼少教育が大切だという通年にはひどく反するが、これが事実らしい。
本書は、こういった思い込みをひっくり返す調査結果を簡易な表現で紹介している。
- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: 単行本
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*1:日本でも特に東京圏の親御さんは子供にお受験させて良い学校に入れることに熱心なようだが、、、