「百年予測」は、百年後の世界を予測しようと試みた本である。
そもそも、百年後を予測することは可能なのだろうか? 著者は、地政学を元にこの予測が可能だと言う。もちろん、細部を予測することはできない。しかしながら、大きな部分に関しては予測可能だと言う。
例えば、少子化について。日本でも、結婚の晩婚化などの影響で一人の女性が生涯に産む子供の数は、減ってきている。wikipedia:合計特殊出生率によると、2014年では1.42人、下のグラフのように右肩下がりに減ってきている。
(wikipedia:合計特殊出生率より)
なぜ、子供を産む数が減っているのだろうか?日本政府は「安心して子どもを産み育てることができる社会をつくる」ことを目指しているようだ。これを見ると、「安心して子どもを産み育てることが」できないから、子供を産む数が減ってきているように思える。しかし、真因はこれではない。真因は、子供を持つ利点が無くなってきたからだ。
産業が未発達で、農業や工場労働が中心であった時代は、子供は幼いころから働きに出ることが可能であった。それゆえ、子供を持つことは収入を増やすことであった。ところが、産業が発達し、頭脳労働が中心の社会になると、働くためには長期間の高度な教育を必要とする。そのため、子供を育てるには、高額の教育費を長期に負担することが親に要求される。こうなると、子供を持つことは、経済の負担となる。
少子化の原因が、子供を持つことのメリットの喪失であるため、少子化の流れを変えることはできない。少子化により、労働人口が減る。この減った労働力を補うため、人工知能などの技術が発展することになろう。人工知能が人間の代わりに頭脳労働の一部を行うのだ。すると、人間の行う仕事は一層高度なものとなり、この担い手を育てるには一層長い教育を必要とする。
このように、少子化が人工知能などの技術を進化させ、その技術進歩が少子化を促す。このポジティブループを止めるのは、容易なことではない。
実際、世界各国で少子化の流れが見て取れる。世界の人口の伸びはもはや鈍化している。
世界を予測する大きなファクタは、少子化以外には、軍事力がある。これについては、本書を実際に読んでほしい。
この本で、大切な点は2点ある。
一つ目は、地政学という日本ではメジャーではない考え方を使って、世界の政治家は今後の大きな流れを予測しているという点。予測が当たるのではなく、言ったことが世界を動かし予測を当てる、そういう力が世界にはあるということ。
二つ目は、
それが世界にとってどのような意味を持つかは想像力と信じる気持ちさえあれば予測することができた。
とあるように、腑に落ちないアイデアであっても、”信じる気持ち”をいったんもって先を想像する。これが、将来予測には大事なマインドセットだということ。
百年後の世界がどうなっているか。はっきり言って、自分には何の関係もない。その頃には自分は死んでいる。そのため、本書を読んでも得られる利益はそれほど多くないだろう。それでも、百年後の世界を予測するための手法を知っておくことは、大人の教養として大切だろう。
- 作者: ジョージ・フリードマン,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/06/06
- メディア: 文庫
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