kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



NECの大型買収がヤバい、デンマークIT大手 KMD買収はどうか?

 NECM&A、買収案件がヤバい。


 NECデンマークIT大手を1360億円で買収というニュースが流れた。これはヤバい。危ない道にNECが進んでいる。

 NECと言えば、どんどん小さくなっている苦しい会社で、これが一発逆転に出た。2001年には売上高が5.4兆円あったが、今では2.6兆円と半減以下になってしまったのがNEC。企業の経営が上手くいかなくなると、普通は不採算事業を切り離して利益を確保する。例えば、Aという事業が売上高1兆円・利益がマイナス200億円、B事業が売上高1兆円・利益がマイナス100億円、C事業が売上高1兆円・利益がプラス200億円だとすると、合計すると、売上高3兆円・利益がマイナス100億円となる。このときA事業を切り離すと売上高2兆円・利益がプラス100億円となり、無事黒字の会社が出来上がる。ここでA事業を切り離すというのは、要するにリストラで人員削減ということだ。ここでB事業の赤字が増えると、さらにB事業を切り離して、売上高1兆円・利益プラス200億円にする。つまり、もう一度リストラをするわけだ。

 NECは2001年から次々に事業を切り離して小さくなっていった会社。

 

 人間じり貧になっていくと一発逆転を狙いたくなるものだ。サラ金などの借金を抱えて生活が苦しくなっていったとき、節約をして地道に借金を返していこうと考える人がいる一方で、競馬などのギャンブルで一攫千金を狙う人もいる。大抵は一発逆転を狙って失敗するものだが。

 M&A(企業買収)というのはギャンブルだ。M&Aの成功率は、日本企業で1~2割(成功率はわずか2割 M&Aは失敗の歴史 :日本経済新聞)。まさにギャンブル。

 ギャンブルと言うのは余裕のある時に行うものだ。競馬もパチンコも、財布に余裕があるときに行うもので、財布が苦しくなってからのギャンブルは身を亡ぼす。M&Aも同じで、一発逆転を狙ったM&Aは身を亡ぼす。

 

 そんな危険なM&Aを、社長が手を出すには理由がある。書籍”ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実”に詳しいが、簡単に言うと、

  • 株主・証券アナリストが、会社の成長をさせるよう社長にプレッシャーを与え続ける。
  • 株価とは、社長にとって勲章である
  • 社長には、成功バイアスがある

 

 株主や証券アナリストは、会社を成長させるよう社長にプレッシャーをかけ続けている。”成長戦略”と言う言葉は、企業の計画に必ず出てくる言葉だけれど、なぜ成長しないといけないの?と疑問に思ったことは無いだろうか。答えは、株主がうるさいからだ。会社が大きくなって株価が上がって株主が儲かるというのが株主の狙いだ。

 GEのCEOのジェフイメルトは有能な経営者だったが、株価が上がらないという理由で解任された。

米国を代表する企業経営者として米国内外で名声を獲得したイメルト氏のCEO在任は16年。ウェルチ氏の20年間に近づいていたが、市場の圧力が続投を阻んだ。

 

イメルト氏にとって、株価は常に泣きどころだった。ウェルチ氏が20年間で株価を30倍にしたのに対し、イメルト時代のGE株価は就任前の水準をなかなか上回らない。

 

そこにつけこんだのが物言う株主(アクティビスト)として著名なネルソン・ペルツ氏率いるトライアン・ファンド・マネジメントだ。米化学大手デュポンの前CEO、エレン・クルマン氏を退任に追い込んだ強硬派として知られる。トライアンは15年にGE株を取得。当初は友好的な姿勢を示したが株価が低迷してイメルト氏の経営に不満を強めていた。 

GEイメルト氏退任 株価低迷、物言う株主圧力 :日本経済新聞

 

 そのため、株価を上げたというのは社長にとっては勲章のようなものである。上の記事でウエルチが株価を30倍にしたとして讃えられていることから分かるように、株価を上げたという実績が社長にとっては後々まで残る功績となる。

 

 手っ取り早く株価を上げるのはM&Aが唯一の方法だ。コツコツ会社を大きくするよりも、派手で証券アナリスト受けする。株価は将来の期待感で動くため、シナジーがあると曖昧なことを言って期待感を煽っておけば、株価は上がる。でも、M&Aの成功率は1~2割だ。どうしてそんなに成功率が低いかは、冷静に考えれば簡単に分かる。儲かる会社があるなら、みんな欲しがるから買収価格が高くなる。

 普通に考えて欲しい。NECが今度買収する会社にも社長はいる。NECの社長が現在の長より買収した会社をうまく経営ができるかどうかがM&Aが成功するかどうかの要因だ。つまり会社の買収というのは、より優秀な経営者に経営権が移るから成功するわけだ。もっと簡単に言えば、会社を買収するとき、経営者は、あいつ(買収先の会社の経営者)よりも俺の方が優秀だと思っているわけだ。こう思う気持ちを成功バイアスという。要するに勘違いということ。

 

 さて、NECは2001年からどんどん小さくなっていっている経営の下手な会社なわけだが、今回デンマークの会社を買収(M&A)するという飛び道具に手を出した。M&Aは大抵失敗することを考えれば、一発逆転のギャンブル的な悪手だと思う。ギャンブルが成功するかどうかは分からないが、ヤバい感じがする。