kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



別冊NHK100分de名著 ナショナリズム:ヤマザキマリの解説する「方舟さくら丸」

 ナショナリズムを知りたくて本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナリズム」を読んだ。

 

 サッカーワールドカップが4年に一度開催される度に、にわかサッカーファンが現れ異常な盛り上がりを見せるのはナショナリズムのせいだ。そのサッカー選手とは会ったこともなければ、サッカー自体に興味もなかった人が熱狂する様子は実に不思議だ。

 そんな不思議なナショナリズムを解説しているのが、本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナリズム」である。この本で紹介されている名著4冊の中で、ここでは「昭和維新試論」について記す。他の本に関しては、別記事【別冊NHK100分de名著 ナショナリズム - kotaの雑記帳 (hatenablog.com)】を参照して欲しい。

 

 阿部公房の小説「方舟さくら丸」を解説するのはヤマザキマリ、彼女は海外生活の長いエッセイスト・漫画家。彼女は、ナショナリズムとは選別と排除のメカニズムを有すると主張する。

 

 ナショナリズムとは自分たちのルールに従う物だけを選別しようとして、自分たちだけのことを考える利己的な集団だと主張します。

 つまり ナショナリズム とは、 世界 全体 が 危機 に 陥っ ても、「 自国 だけは 頑張っ て 生き残ろ う」 という 姿勢 の こと で あり、 世界 全体 を 救う つもり など ない。

 

 一方で、集まった「私たち」の内部にも軋轢が生じる。その軋轢を生まないためには、果てしない寛大さが各々に求められる。現実に、そのような寛大さを持つ人は稀だから、内部の軋轢は必至であろう。

自給自足 で 互いに 侵害 し 合わ ない。 その 考え方 は ある 意味 で 理想的 だ とも 思う。 (中略) しかし 人間 という のは どんなに 自立 し た 意識 を もっ て いよ う と、 集まれ ば そこ には 何 がしかの 軋轢 が 生まれ、 関係 が 破綻 する こと も ある。 (中略) 相違 する 考え方 を する 者 たち と 一緒 に 群れ を 構成 し つづけ て いく ため には、 果てしない 寛大 さが 求め られる の です。

 

 「私たち」の内部では、集団圧力により価値観の共有が強制され、思考停止が求められる。

そこ で

は 価値観 の 共有 が 強制 さ れる ため に、 自分 が 船 の 舵 を 取る こと は でき ず、 また 舵 を 取れる よう な 知性 も 能力 も むしろ 推奨 さ れ ませ ん

 

 つまりは、ナショナリズムとは、ルールに従う者たちを選別しそれ以外を排除して集団を形成し、その内部では価値観の共有と思考停止が求められる。しかし、内部の軋轢も生じる、世界だと主張している。

 

 ナショナリズムとは関係ないが、とても重要なことを指摘している。

《もぐら》 の よう な 人 は 承認 欲求 が 強く、 自分 を 否定 する もの を 排除 すれ ば 自分 の 世界 が 成り立つ と 考え がち です。

 人は、自分を否定するものを排除したがるものである。しかしながら、それを排除したからと言って人生うまくいくものでもない。また、自分を否定するものが存在したとしても人生はうまくいったりもする。つまり、「自分を否定する者」の影響は大きくない。それなのにそれを排除しようと思う人の心はなんと愚かなことか。

 この心の反応は無自覚で自動的に行われる。だからこそ、この反応に気づいて自覚的に止めることが大切だ。