kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



別冊NHK100分de名著 ナショナリズム:島田雅彦の解説する「君主論」

 NHKのTV番組「100分de名著」が凄い。名著と呼ばれる有名な本をその道の専門家が一般向けに解説してくれる。私は、新しい分野の知識を得ようとするときは大抵「100分 de 名著」から始める。

 ナショナリズムを知りたくて本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナリズム」を読んだ。

 

 サッカーワールドカップが4年に一度開催される度に、にわかサッカーファンが現れ異常な盛り上がりを見せるのはナショナリズムのせいだ。そのサッカー選手とは会ったこともなければ、サッカー自体に興味もなかった人が熱狂する様子は実に不思議だ。また、国の領土が侵害されたとき、深い怒りを覚えるのもナショナリズムのせいだ。自分の生活にはほぼ関係のない土地が侵害されたからと言ってどうだというのだろう?

 そんな不思議なナショナリズムを解説しているのが、本書「別冊NHK 100分 de 名著 ナショナリズム」である。この本で紹介されている名著4冊の中で、ここでは「君主論」について記す。他の本に関しては、別記事【別冊NHK100分de名著 ナショナリズム - kotaの雑記帳 (hatenablog.com)】を参照して欲しい。

 マキャベリ「君主論」を解説するのは、島田雅彦。小説家であり法政大学国際文学部教授である彼は、「君主論」を斜めに読む(書かれていることから、その意図を類推する)というスタンスでこれを解説する。

 「君主論」は有名なので説明は不要かもしれないが、念のために簡単に説明しておく。執筆されたのは1532年、1789年のフランス革命を機に国民国家が始まる前の絶対王政の時代。そんな時代に、君主のあるべき姿を、抽象的ではなく具体的に記した実用書として「君主論」は書かれた。そして、キリスト教的な道徳から切り離して政治力学を述べた点が新しかった。

 

 島田雅彦の解説で面白かった部分をいくつか紹介する。

 

 われわれ人間の自由意思は奪われてはならないもので、かりに運命が人間活動の半分を、思いのままに裁定しえたとしても、少なくともあとの半分か、半分近くは、運命がわれわれの支配にまかせてくれているとみるのが本当だと、私は考えている。

自分のコントロールできる部分に意識を集中するのは、ビジネススキルの基本だが、これと同じことをマキャベリは言っている点が面白い。

 

士気の高い軍隊ほど、手強く恐ろしいものはありません。士気を高めるために最も重要なものは、愛郷心ではないでしょうか。

強い軍隊をもつにはナショナリズムが必要だと言っている一方で、国家や組織に忠誠を誓い、不正に加担することに警鐘を鳴らしている。「自発的隷属」と言う言葉を使い、国家権力に盲従することをいさめている。

 

ナショナリズムもまた多様であるべきだと思います。なぜ自国を愛するのかという理由は多様であってしかるべきでしょう。

この本で一番感銘を受けた部分がここだ。ナショナリズムに多様性が必要だともあり得るとも私は思ったことが無かった。”多様なナショナリズム”とはどういうものなのか、まだ私にはうまく想像できないが良い考えるポイントだ。

 

まとめ

 国を強くするにはナショナリズムが必要だが、国民一人一人が権力者に隷属してはいけない。つまり、よく考えろと、島田雅彦は言っている。考えた先に、”多様なナショナリズム”がある。