植物は根が大事、根のためには土が大事、という訳で園芸をしていると土壌改良への興味が湧いてきます。
最近YouTubeでコーヒー粕で堆肥を作る動画を見ました。捨てるものを再利用して植物が良く育つなら自分でも試してみたくなりましたが、園芸業界では誤ったノウハウやコツといったデマ情報が多いため、まずは論文を調べてみました。
関連論文として以下がみつかりました。
- コーヒー粕の作物生育阻害因子に関する研究 (竹本 稔、藤原 俊六郎(神奈川県農業総合研究所))
- コーヒー粕の施用が作物生育と土壌理化学性に及ぼす影響 (若澤秀幸、高橋和彦、・望月一男(静岡県農業試験場 ))
- 農作物成長促進、雑草防除および土壌改良用のコーヒーかす施用の圃場評価(山根浩二、河野充晃、渡邊芳倫、飯嶋盛雄(近畿大学農学部)、福永泰司、岩井和也、関根理恵(UCC上島珈琲株式会社))
これらを読んだ結論を最初に述べます。
植物の生長促進にコーヒー粕の使用が良いと言っている論文は、ありませんでした。コーヒー粕が微生物に分解されにくいことが要因です。
以降、各論文を読んで面白かった点をメモしておきます。
- 1番目の論文:これが最も面白く内容が濃かったです。
- 9週間かけてコーヒー粕を発酵させて堆肥を作成し、実験を行った。堆肥化することによって植物の生育抑制が軽減された。
- コーヒー粕を酸など各種溶媒*1で処理しても、生育の改善は見られませんでした。
- コーヒー粕の施用によって、土壌中の窒素成分の吸収を主体とした、植物が生育抑制が生じる。
- 生育抑制の傾向は、植物の種により大きく異なる。
- 2番目の論文:土の物理性改善について触れている点が面白い。
- コーヒー粕を施用して4ヶ月後に土の粒形を測ったら、コーヒー粕を多く撒くほど、土が団粒化されていた(土粒系0.5mm以上を団粒として測定)
- 3番目の論文:UCC珈琲の論文
- 堆肥化していないコーヒー粕を撒くと、植物の生育が抑制されるが、1作目より2作目の方が抑制度合いが低い。
(図6と図7で縦軸が異なることに注意してください。図7のヒマワリを見るとコーヒー粕を入れた方が収量が多い(約0.6kg/m^2)ように思えますが、図6のヒマワリと比べるとコーヒー粕を入れない場合(1年目)の収量(約2.2kg/m^2)の1/3以下である。
まとめ
コーヒー粕を使って植物をより良く育てるのは難しそうです。逆に、雑草抑制にコーヒー粕は使えると思います。
補足
堆肥を作ることは本来難しい作業であることが、以下の動画を見て分かりました。腐敗と発酵の違いを思い出せば、その難しさに思い至ります。
*1:水洗処理、アルカリ処理、クロロホルム-メタノール処理