リコーのデジカメCX1を愛用している。2009年9月にその後継機種CX2が発売されたというのに、kakaku.comによるとCX1とCX2のどちらを選ぶか迷う人が多いという。CX1の方がCX2よりも安いということもあるが、CX2で高ズームのためにレンズを暗くしたことがユーザを迷わせているのだろう。進化の速いデジタル機器で新機種と旧機種でユーザが迷うというのは珍しい。
http://kakaku.com/trendnews/daily/articles/0909/112.html
そもそもメーカというのは、新製品を定期的に市場に投入し、旧製品を陳腐化させることにより価格の維持や後発メーカーの振り落としをしていくものである(いわゆる計画的陳腐化)。CX2での出来事はリコーが計画的な陳腐化に失敗していることを示す。これは利益率確保という点でまずいことである。また、リコー社内の開発部門においてもその存在価値を問われることになりかねない(製造は中国or台湾メーカーに委託しているため、旧機種を製造し続けるには社内のリソースは不要である)。
リコーがCX1の計画的陳腐化に何故失敗しているかというと、原因は2つ考えられる。
- リコーが、デジカメの開発戦略において画素競争をしない*1。そのため、新機種の性能向上がユーザに分かりづらい(実は画素数を増やしてもユーザメリットはもはやないのであるが、ユーザには分かりやすい)。
- ファームウェアのバージョンアップにより、旧機種でも進化をユーザに提供する。このため、ユーザは安心して旧機種を購入できる*2
- 旧機種であれ、リコーのカメラは所有者を満足させる品質がある。
要するに無駄なスペック競争をやめて、カメラに必要な(数値スペックでは表せない)性能を向上させたため、旧機種が新機種と比べ競争力を持ってしまった。さらに、デジカメは数値スペックでは比較できない領域にあることを、リコーはユーザに教えてしまった。
今後、リコーはユーザメリットを与える機能とは何かを試行錯誤する必要がある*3。ユーザに新しい価値の軸を教えたリコーはパンドラの箱を開けたのかもしれない。製品企画が一層難しくなるに違いない。
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