kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



小説「SOSの猿」(伊坂幸太郎)の感想:非現実なキャラクター孫悟空が現実世界に現る

 

 伊坂幸太郎の小説「SOSの猿」を読みました。その感想を記します。

 

 他人のSOS(困っている・助けて欲しい)を見過ごせない性格の遠藤二郎は、知り合いのお姉さんに、彼女のひきこもりの息子 眞人の相談を持ちかけられます。次郎が眞人を訪問すると孫悟空が現れて語り始める、というお話です。

 

 この小説はSFでもファンタジーでもなく、現実世界に起こった出来事を描いたもので、そこに非現実のキャラクター孫悟空が現れるます。一見、破綻しそうな設定を、破綻させずに描き切っているのは見事です。現実と非現実が混ざり合い、本当に孫悟空が現れたのかと思わせつつも、最後には現実世界の出来事として説明されます。

 

 お話は、遠藤二郎が語る「私の話」と孫悟空が語る「猿の話」が独立して同時並行に進むのですが、それが最後には一つに融合することは読んでいるときから予想ができます。その融合のさせ方が見事で、伊坂幸太郎はすごい小説家だと感じます。

 

 この小説の主人公 遠藤二郎は、他人のSOSを見過ごせない性格で、つい他人と関わってしまうもののそれを解決できずに悔いを感じる普通の人間として描かれているところが好きです。SOSに敏感だけど何もできないというのは、なかなか切ないものがあります。

 またしても私はSOSの信号を受け取りながらも何もできず、その場を立ち去ることになる。