「人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか」という本は、人間は間違うようにできているのだと解らせてくれる。他人をわざと間違わせるように操作することについて書いた本が「影響力の武器」である。人間の心理に興味のある人は、この2冊を合わせて読むことを勧める。
ランダムな散らばりの誤認識
人は「偏りの錯誤」に陥りやすく、この錯誤にもとづく間違った信念は「波に乗る」ことだけに留まらない。例えば、ウォール街の株式市場での株価の変動にはある種のパターンがあって、変動の予測が可能であると信じられている。株価がランダムに変化しているとしても、株価の動きはランダムには見えないからである。そこで、過去の株価の変動から将来の株価を予想できるようなある種の法則が隠されていて、巧妙な投資をすれば利益が上げられるように思われることになる。
人は、ランダムなパターンからその背後になにがしかの規則があるように錯覚するものである。一度そのような錯覚に陥ると、その錯覚に基づく信念(例えば、あるパターンの株価の動きの後には株が上がるといった考え)に合致する事実のみを重視する。
この研究は、ギャンブラーが儲からない賭けをなぜ辞めようとしないのかという疑問から出発した。
(中略)
興味深いことに、ギャンブラーは自分が賭けに勝った時と負けた時の個人的な記憶を、極めて巧妙に改変していることが分かったのである。
(中略)
賭けに負けた場合には、それがなければ結果は違ったものになったであろう変則的な「偶然の」要因についてのコメントなど、結果を「覆すような」コメントが多くなされる傾向があった。
ギャンブラーは、自分が賭けに勝つ手腕があるといったん信じると、賭けに勝った時はそれを「当然の結果」と記憶し、負けた時はそれを「たまたま(偶然)の結果」と記憶する。このような記憶操作により、ギャンブラーの信念(自分は賭けに勝つ手腕がある)はどんどん強化される。
このように誤信は人間の有する根本的な以下の気質に起因している。
人々は常に、ものごとの白黒がはっきりしていることを好み、考えを過度に単純化しようとし、自分の信念に過剰な自信を持ちたがるものである。また、人は自分の周囲で起こる全てのことがらが制御可能なものであると考えがちである。同様に、まったくのランダムなデータの中に一定の構造や関連性を見つける傾向も、人間の認知機構に深く組み込まれたものであり、到底解消される見込みはない。起こらなかったことよりも起こった事ばかりに注意が向いてしまう傾向や、比較対照すべき別の状況を考慮せずに現在の状況で起こった事だけから結論を引き出してしまう傾向も、同様に、人々の心に深くしみ込んでいるもののようである。
非常に面白い本だったので、マインドマップに内容をまとめてみた。
人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)
- 作者: トーマスギロビッチ,Thomas Gilovich,守一雄,守秀子
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 1993/06/01
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- 作者: ロバート・B・チャルディーニ,社会行動研究会
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