kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



ガラパゴス化が誤解され始めている

ガラパゴス化に対する誤解

ガラケー(ガラパゴス携帯)という言葉を、ネットでも見かけるようになってきた。しかし、そもそも「ガラパゴス化」という言葉の意味が正しく理解されていないように思える。そこで、「ガラパゴス化」の真の意味をまとめてみたいと思う。


そもそもガラパゴス化とは?

ガラパゴス諸島では、その海に囲まれ他と断絶した環境ゆえ、ゾウガメのように独自の進化をした生物がすんでいる。このことから、日本国内でしか売れない製品を作っている日本の製造業を揶揄して「ガラパゴス化」という言葉がもともとは使われた。「ガラパゴス化」して何が悪い?と皆さんは思うかもしれない。「ガラパゴス化」が問題になる背景には、日本市場の相対的縮小がある。詳しく見てみよう。

ガラパゴス化の問題

これまで日本のGDPは、長らく米国に次ぐ世界第2位であったが、今年中国に抜かれて第3位に落ちた。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=131716
このように中国を初めとするインドやアフリカのような新興国が現在猛烈に経済成長しています。新興国を、日本の製造業の競争相手としてではなく売り込む先(つまり市場)として見てみると、新興国では富裕層だけではなく中間層の人数も伸びてきておりその市場規模は日本企業がメインターゲットとすべき規模になっています。

具体的に見てみましょう。「ガラパゴス化」という言葉が最初に使われた携帯電話の市場規模を調べると、世界の携帯電話出荷台数は11億3000万台*1で、これに対して日本の携帯電話出荷台数は3444万台*2です。日本の市場規模は世界のわずか3%です。日本の携帯電話メーカがこの小さな日本市場向けに製品を作っても儲からないのは当然です。それなのに、日本の携帯電話の方式は世界の主流の方式と異なるため、日本向けに開発した携帯電話は世界に向けて売ることが出来ないのです。

このように、日本市場の規模が相対的に小さくなっているのに、日本の製造業が世界で製品を売れていないことが問題の本質なのです。そしてその原因が、日本向け製品と世界向け製品とで仕様が異なるところにあります。

ガラパゴス化に対するよくある誤解

一番よくみかけるのは、「ガラパゴス化」して何が悪い?と開き直るパターンですね。現状肯定型とも言えると思います。日本政府の赤字国債の額は世界的に見ても膨大な額が積みあがっていて、税収を増やすか、行政サービスを減らすかのどちらかしかなく、年金問題や医療費問題を見ても行政サービスを減らすことはまず出来ないでしょう。だから、日本の製造業は拡大する世界市場を狙う必要があるのです。

次によく見かけるのが、日本の得意な高品質な製品を追求すればよいというパターンです。例えば、以下。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100810-00000001-president-bus_all

 一つは、「ガラパゴスの輸出」である。ガラパゴスゾウガメは、自分では他の陸地に行けないから、自分で種を広げる手段をもたなかった。しかし、日本企業の得意製品は、他の土地へと広がる手段を多様にもっている。しかも、決して他の島々では「未来永劫も自然環境の違いゆえに」生きていけない生物種ではない。たしかに今はまだ需要が顕在化している量は大きくないが、将来の新興国市場の需要の先駆けの側面をもった「種」が案外ありそうだ。もしそうなら、将来をにらんだ、そして将来の種の多少の変種の登場をにらんだ、ガラパゴスの輸出があってもいいはずである。そして、「先駆け的地位」をさらに強化するために、これからもガラパゴス的特異進化を、し続けることが選択肢の一つなのである。ガラパゴスで何が悪い、と開き直るようなものである。

(中略)

 私は、「そうした需要がありそうだ」という言葉を使っている。その種の需要が巨大にある、あるいは新興国市場の大半がそういう需要になる、とは言っていない。そこにポイントがある。日本の産業が新興国市場の需要の大半を取る必要など、もとより存在しないし、実現可能でもない。日本列島で働く人々の雇用が守られ、生活が発展していくために必要な量だけ、そうした需要が世界のあちこちに(新興国だけでなくても)あればいいのである。

(中略)

 時計という産業を考えてみるといい。時計の電子化を世界に先駆けて行ったのは日本の企業である。その結果、スイスの時計産業は窮地に追い込まれた。しかし、スイスはガラパゴスで何が悪い、と開き直ったようにも見える。時計をさらに特異に進化させて、工芸品として位置づけられるものをかなりの規模で作り始めた。「時間の計測機械」と位置づけなかったのである。その結果、世界の時計市場の中の高級なセグメントはスイスの独壇場なのである。まさに、ガラパゴスの輸出である。そして、単純な電子化をして工業製品としての時計を大量に作った日本の企業は、東アジアでの時計生産に追いつかれて、窮地に追い込まれているのである。

特定の企業が高品質を武器に世界市場に出ることは正しいのですが、一部の企業をどうするかがではなく、日本の大部分の企業をどうするかが、「ガラパゴス化」問題の本質です。ですから、マスマーケットを狙わざるを得ないのです。日本市場の大きさは、世界のわずか3%程しかないのですから。

まとめ

ガラパゴス化」問題は、新興国を中心とする世界市場の拡大とそれに伴う日本市場の相対的縮小に本質がある。日本政府の赤字国債が膨大な額に積みあがり、また高齢化により年金財源が不足するなか、日本の経済成長が必要とされている。このためには、世界のマスマーケットを狙った物づくりが必要であるが、言葉の問題(英語)や人件費の問題のため、それが出来ていない。